kira事件、特別捜査本部・二千五◯二号室


□「雨の風景」(さる作)
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ビリジアングリーンに染まった木々に囲まれ佇む竜崎・・降り頻る雨に濡れたその姿は艶かしく、泣いているかのようにも見える表情に僕は切なくなる・・最近良く見る夢の中の風景・・。この夢を見た後目覚めると隣で安らかな寝息を立て眠っている筈の竜崎の姿は無く僕は1人でいる。薄暗い部屋は静まり返り、薄く開けられたカーテンからは未だ明け切らぬ朝の光が差し込み別れの時を告げる。・・何度こうして肌を重ね快感を貪り・・愛を交わしたか分からない・・最初はお互いがお互いを監視する為に・・そして虜にし優位になる為に始めた行為だった筈なのに、こんなにも深く・・こんなにも近い存在になろうとは誰が想像しただろう?父さんや相沢さん達には言えない関係・・知っているのは恐らくワタリだけだろう。そしてこの関係を良くは思っていない筈だ・・ワタリは僕を敵視し警戒しているし、この微温湯の様な関係に痺れを切らし始めている・・そして・・僕達自身も・・そんな事を考えながら起き上がろうと身体を動かすと、下半身に鈍い痛みを覚える。・・昨夜の事を思い出す・・何度も繰り返しキスをしてお互いの身体を貪る様に弄り合い・・竜崎の指が舌が僕を恍惚の世界へと導くのを全身で感じていた。実際、竜崎はとても上手いと思う・・今まで僕の容姿に惹かれ近付いて来た人間達は男でも女でも自分の快楽を求めるだけだったし、僕自身の快楽だけを見たがる奴も若干居たがあの嘗め回す様な眼で犯される事がとても嫌だった・・僕自身、その人間達を愛していたかと聞かれれば困るが、“性”を探求するには丁度良い存在として好いてはいた・・僕にとって身体を求め合うなんて事はその程度の筈だったのに・・相手が違うと言うだけでこんなにも違う物なんだろうか・・?だるい痛みの伴う身体をもう1度ベッドに横たえ、枕に顔を埋め直すと、柔らかな感触と共に竜崎の香りが鼻を擽る。嫌味の無いしっとりとしたグリーンの香り・・あの夢の中に出て来る木々達はこの香りのせいであんなにも綺麗なビリジアングリーンをしているんだろう。それにしても如何してあんな夢なんか見るんだろう?最近、何かが僕の胸の奥を掻き立てる“早く思い出せ!”と・・その事と何か関係があるんだろうか・・?夢の中の竜崎の髪はしっとりと濡れ、白い肌に艶かしく色を添える。うつむき加減の顔は少し悲しげに僕を見つめ・・その眼は涙に濡れている様にも見えた・・薄紅の唇が何かを囁いたがその声は僕の耳には届かなかった。僕は夢の中の竜崎の姿が余りにも艶やかで狂おしく見える事に危うさを感じた・・こんなにも侵食されている事に・・その姿を想うだけでこんなにも興奮している自分に・・その瞳で・・その指で・・その唇で・・舐られる僕を想像した。ふ・・・と小さく息を洩らし、自分の胸や脈打つモノを弄った。徐々に快感に溺れて行く僕の手の中に有る其れは“早く”と言わんばかりに激しく脈打っている。こんな時・・竜崎ならどうするだろう・・?眼を瞑り、濡れてる部分を指先で焦らす様に動かすと背中にビリビリと電気が流れる様な快感が走る・・荒くなる息遣い・・熱くなり汗ばむ身体・・この時僕は、快楽の虜になりゆっくりと近付いて来る影に気付かなかった。

『・・・何をしてるんです?』

『!?』 

その声に弾かれた様に身体がビクリと大きく震える。眼を開けると目の前に竜崎が僕を見下ろしていた・・夢の中と同じ様に髪が濡れている・・肩に掛かった白いバスローブがその鴉の濡羽色を映えさせ雫が身体を伝う・・驚きと恥ずかしさで声も出ない僕に柔らかく微笑みキスをした。戸惑いながらそのキスを受ける僕の手に竜崎の手が重なる。

『・・いけない人ですね・・そんなに寂しかったんですか・・?でも駄目ですよ・・此処をこうしていいのは私だけなんですから・・』

その言葉に顔が火照る様な感覚を覚える。恥ずかしさなのか、それとも添えられた手が僕の手を包んだまま動き始めたからなのか・・竜崎の顔を見ると潤んだ瞳で僕の息使いが荒くなるのを嬉しそうに見ている。

『・・!?・・んん・・馬鹿・・止せよ・・』

良い様にされる悔しさからこんな言葉が僕の唇から漏れると聞きなれた低音の声が耳元でこう囁く。

『高揚した表情のままそんな事を言われても説得力有りませんよ?』

そうさ・・そんな事は自分でも分かっている・・それなのに唇から出る言葉は何時も正反対の事ばかりだ・・そんな僕を愛おしそうに見つめキスをしてくる竜崎の身体を僕は抱き寄せる。未だしっとりと濡れている身体はシャワーの余韻で熱いのか・・僕としている事で熱いのか・・次第にそんな事も考えられなくなる位の快感が僕の思考を奪って行く・・絡みつく互いの指・・熱い吐息・・貫かれる時の甘い痛み・・・口にしてはいけない言葉・・・沈黙・・・
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