(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「心の奥底 -2-」(さる作)
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バリケードとスコルポノックが襲われてから数週間が経った―――。

主犯格のジェットロンは行方知れずのまま・・・・他の共犯者達はある者はメガトロンにより処罰され、またある者はボーンクラッシャーや俺のブラックアウトの手により窘められた。
その殆どが機能低下にに陥り、現在もドクターの手を煩わせている・・・・。何れにしろ、どんな形であれ・・・・ただでは済まされなかった。しかしそれは当然の事と言えるだろう。
その行為は和平条約のもと監視下に置かれてしまったディセプティコンの最後の誇りと、それを率いているメガトロンの顔に泥を塗ったようなものだからだ。
表面上は大人しく謹慎処分と言う名目を置き、人間やオプティマス達の眼を誤魔化しその裏では粛清が行なわれる・・・・それは彼等ディセプティコンにとっては当り前の事だった。

『・・・・・うん、随分良くなったな・・・・何処か他に痛む所は無いかね?』

バリケードの身体のあちこちを診ながら、ラチェットが静かな笑みを浮かべながらそう問い掛ける。

『・・・・特に痛む所は無い。もう来なくて良いな?』

触れられるのが嫌なのか・・・それとも借りが出来た事が不愉快なのか、バリケードは眉根を寄せながら上目遣いに睨みそう答える。

『勿論! 君がそう言うなら、私はお役御免だ。だがまだ無理はするなよ?休んだ分、身体の機能が低下している事を忘れてはいかん。』

そのきつい目線を気にする事も無く、ラチェットはやはり静かな佇まいのまま静かにそう言い放った。バリケードよりも遥かに長く生きて来た彼にとって、そんなきつい視線など気に留めるには可愛らしいモノだからだ。そしてそんなラチェットの態度がバリケードは気に入らない。

『言われずとも分かっている!?・・・・世話になったな。』

苛ついた口調でそう言うと、バリケードはサッサと立ち上がり医務室であるラチェットの部屋を早々に出て行った。その様子にラチェットの口角が上がる。

『何とも元気が良いな・・・・あれならば大丈夫だろう。さて・・・・オプティマスに報告をしてこなければな・・・。』

目の前に置かれたカルテを纏めながらそう呟くラチェット・・・・彼はそのカルテを眺めながらある人物について思いを巡らせていた。
それはバリケードのパートナーと思われる、ブラックアウトの事だった。《思われる》と言うのはラチェットが2人の遣り取りや行動を見て《そう感じた》だけであり、本人達から確認を取った訳ではないからだ。
しかしオプティマスを始めとするオートボットの医師であり、良き相談役でもあるラチェットにかかれば大概の事は見抜かれてしまう。事実ラチェットが感じとった事の大半は正しく、その上で自分の立ち位置を見極め相応の行動を決めている。流石は始祖最高議会の使節長であり、アイアンハイドに古狸と言わしめた男だ。
その彼が何故ブラックアウトを気にかけるのか・・・・それは昨日バリケードに検診に来るように話しかけた事から始まった―――。

『バリケード、明日私の部屋へ必ず来なさい。』

オートボットやディセプティコンが大勢集まる共同スペースで、皆の目など全く気にしないラチェットが徐にそう話し掛けた。
無論、周囲で聞いていた者達は下衆の勘繰りをし始める。

《ええええええ!? あいつら何時の間に!?》

《こんな所で言うなんて、あの爺意外に大胆だな。》

あちこちでヒソヒソ話が上がる中、事情を知っているオプティマスやアイアンハイド・・・メガトロンなどは静観を決めていた。昔ながらの付き合いのせいでラチェットの物言いに慣れてしまった2人と、面白い展開を期待するメガトロンを他所にラチェットは返事をしないバリケードに対し念を押す。

『・・・聞こえているのかね?明日私の部屋へ・・・・。』

『止めろ!・・・貴様、何のつもりでそんな言葉を吐いている!?』

ようやく返事をしたバリケードに対し、ラチェットは飄々と答えた。

『何のつもりとはご挨拶だな・・・君が検診をサボったから、医師として直々に言いに来ているんだぞ?』

その言葉に周囲からは安堵の溜息と、つまらなさそうな溜息が入り混じり付かれる。無論その中にはブラックアウトの姿もあった。

『・・・・もう何でもないと言っているのだから、そんな事はしなくて良い!?』

忌々しげに舌打ちをしそう突き放すバリケードに、ラチェットは首を傾げながら呆れたようにこう返した。

『君は何時から医者になったのかね?・・・・君を診ているのは私なんだぞ?そう言う判断は私がするものだ・・・・ブラックアウト、すまないが明日この頑固者を私の所まで届けてくれないかね?』

『・・・・何故俺に言うんだ?』

傍で2人の話を不機嫌そうに聞いていたブラックアウトが、急に話を振られ戸惑いながらそう問うとラチェットはあっさりとこう言い切った。

『この男が素直に言う事を聞くのは、メガトロンと君だけだと思うからだが・・・違うのかね?』

確かにその通りではあるが、その通りですと言おうものならバリケードの機嫌が悪くなる。
そう考えたブラックアウトは、通常通りの答えを口にする事にした。

『・・・・確かに長い付き合いだからな、お前さんが言うよりは聞いてくれると思うが責任は持たねぇぞ。』

『構わんよ。君の主が困らないのであればだが。』

すかさずメガトロンの名を出し、これ以上反論されない様にするラチェットにブラックアウトも顔をつい顔を顰める。
前にも思ったが、喰えない爺だと改めて感じた。

『では、頼んだぞ。』

答えないブラックアウトに、ラチェットは微笑みそう言うとサッサと部屋を後にした。興味心身で聞き耳を立てていた者達も、話が終わった事で興味を無くし再び自分達の好きな様に過ごし始める。
その戻りつつある騒がしさに、バリケードは居心地の悪さを感じたのか乱暴にグラスを置くと同じ様に部屋を後にした。
当然、ブラックアウトが後を追う。

『バリケード!』

足早に進むバリケードの背後から、ブラックアウトが声を掛けながら追い掛けてくる。一旦は立ち止まり振り向いたバリケードだが、直ぐに向きを変え自室へと急ぐ。

『・・・・おい、待てって!』

そんなバリケードを自室の前で捕まえ、腕を掴むブラックアウトは強引に振り向かせ話しかける。

『如何した?何をそんなにムキになってる?』

『・・・・別に・・・・ムキになってなんか無い。あいつが嫌いなだけだ。』

掴まれた腕を見詰めながらそう答えるバリケードに、ブラックアウトは少しばかり困ったような顔をした。恐らく・・・あの医者が言った言葉が気に入らないのだろう。大勢の前で言われた事もだが、自分とメガトロンの言う事にしか素直に従わないと言われた事が1番癇に障ったのだ。ある意味分かりやすくて可愛いが、如何せん意固地な所があるバリケードには逆効果にもなる。
目の前で不機嫌な顔をしたままのバリケードが良い証拠だ。これを宥めるのは、中々難儀な所もある。だが・・・こんな顔を見れるのは、恋人である自分だけの特権だとブラックアウトは思っていた。

『そうか・・・それなら仕方が無い。俺もあの医者は好きじゃないしな。だがお前の傷を治療してくれた恩はある・・・明日の検診には行け。それで異常がなければ、もう必要以上に話さなくて良くなるんだから我慢しろ。』

窘めつつ言い聞かせるが、バリケードは不機嫌そうな表情を浮かべたままだ。これがメガトロンであったなら、直ぐに従い明日とも言わず医務室に押しかけるのだろうに・・・。
このバリケードの行動が自分に甘えているのだと理解出来ても、最近何故かそう考えてしまうようになっている。常に、誰かと、比較して。
これは自分的には悪い方向へと向っているなとブラックアウトは思った。

『・・・・・バリケード・・・・俺の為にも行ってくれ。』

返事をせずに居るバリケードの名を、ブラックアウトは静かに・・・柔らかく呼び頼むように言う。
するとようやく顔を上げ、ブラックアウトと眼を合わせた。

『・・・・分かった。』

心配していると納得したらしいが、不満そうな上目遣いは変わらない。それがブラックアウトの気を引き付ける。
自分の視線がブラックアウトの心をかき乱すのを知ってか知らずか・・・バリケードは再び口を開いた。

『・・・寄っていくか・・・?』

腕を掴んでいた手に自らの手を添え、指を絡めブラックアウトの答えを待つバリケード・・・。
そんなバリケードの誘いを断れる奴がいるのだろうか・・・?とブラックアウトは目を細める。

『・・・そうだな・・・。』

その後の言葉は不要だった―――。
2人は静かにバリケードの部屋へと入り、どちらともなく唇を重ね合う。初めは浅く・・・確かめ合うような軽いキスを繰り返す。
そのうちに熱くなる感情と共に、身体もまた熱を帯びてゆく。絡み合う指が互いの存在を求め、背中へと伸び逃すまいと強く抱き締める。
そんな時・・・ブラックアウトの心に、ふと冷静なもう1人の自分が現れバリケードの仕草や吐息を観察している事に気付く。
それがとても嫌な瞬間だと、ブラックアウトは思っていた。この冷徹な自分が、熱く求める自分と応えてくれるバリケードを見ている。
そしてふとした時に囁くのだ。

―――このまま自分だけのモノにしてしまえ―――と。

この顕になった首筋を・・・艶かしく蠢く舌を・・・このまま永劫に閉じ込めてしまえと口元を不気味に歪ませ囁き続ける。
それをバリケードを愛おしく感じている正気の自分が拒否し、ただひたすらに抵抗を続けるのだ。
まるで悪夢に溺れ、出口を求め彷徨う様に。

『・・・・・如何した・・・?』

ブラックアウトの様子がおかしい事に気づいたバリケードが、膝の上に座りながら不思議そうに顔を覗き込む。
その目はブラックアウトを求め、唇は濡れていた。
それを見たブラックアウトは、愛おしさと共に湧き上がる激情を隠しながらフッ・・と笑う。

『ん・・・エロい顔だなって・・・・。』

『・・・誰がさせてんだよ・・・!?』

返って来た言葉にバリケードは目を丸く、悔しそうに微笑するとその激しい気性のままにブラックアウトを求めた。
その激しさにブラックアウトもまた、激しく求め細くしなやかな身体に自らの痕跡を残してゆく。しかしあくまでも優しく・・・負担をかけないようにゆっくりと解し・・・推し進める。
囁き続ける声を、遠くに聞きながら―――。
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