(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「1年目のキス」(さる作)
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メガトロンとオプティマスは、夜遅くなっても激務に追われていた―――。

年末と言うのはどこの世界でも忙しいらしく、新しい年に向けての滞在申請や新規のメンバーの登録等に人間もトランスフォーマー達も忙しない。
特に双方の纏め役兼人間との交渉役ともなれば、食事をする時間すら無くなってしまう。
トランスフォーマー達ならば、機能を動かすに充分なエネルゴンが体内にあれば特に問題はないが、レノックスやエプス達はそうはいかない。

『・・・ここまでくれば、後は申請書の最終確認と提出だけだ。ここらで少し休憩しよう。』

だから・・・こんな言葉がレノックスから出ても仕方がない事だ。
初め何を言っているのだろうかと言う表情を浮かべたオプティマスも、レノックス達の疲れきった顔や摂取していた物の少なさに納得する。

『おぉ・・・もうこんな時間なのか。少しどころか気の済むまで休憩をとってくれ。後は我々がやっておく。』

『それは有り難い言葉だが、オプティマス達だって休養は必要だろう?俺達が飯を食う時間だけ待っていてくれ。俺達自身がやらなきゃいけない物もあるしな。何・・・ホンの30分くらいで戻る。』

自分で気付けなかった事を想ってか、オプティマスはレノックスにそう言ったが難無く返されてしまい心底申し訳ない顔をする。
そんなオプティマスだからこそ、自分達は安心して席を外せるのにとレノックスは苦笑いを浮かべた。
次々に席を立ち食事を取りに行く人間達を見送り、残されたメガトロンと2人でまた職務へと戻るオプティマス。
レノックスと言葉を交わしたおかげで緊張感が緩んだのか、不意にメガトロンの事が気になり始めた。
先程までは集中していたせいもあり特に気にならなかったが、今日1日まったく言葉を交わしていない事に改めて気付く。
面倒事の嫌いなメガトロンが、こうやって大人しく作業している事も不思議だとオプティマスは思った。
そして書類に目を通している振りをして、チラリとメガトロンの横顔に覗き見る。
何時になく真剣な表情で書類に目を通し、時折何かを書き込んでいるようだ。
滅多に見れないそんな姿に、オプティマスの気持ちが揺れる。

私はメガトロンのこう言う顔が好きなのだ・・・と。
戦いの中で見せる猛々しい鬼神のような表情とは違う、穏やかで真剣で理知的な表情・・・。
破壊大帝と言われていた男とは思えないなと、オプティマスは思わず微笑した。

『・・・・何故お前は、先程からワシの顔を見ているのだ?』

こちらを垣間見る事もなく、けれど的確に物を言うメガトロンにオプティマスは慌てふためく。

『え?・・・っいや、何でも無い。』

明らかな動揺っ振りに、メガトロンは目を細めオプティマスを見詰めた。
優しくはなったが相変わらずの眼光の強さに、一瞬オプティマスは躊躇し顔を赤らめる。

『何でも無いと言う割には、随分と長くワシを見詰めていたではないか・・・どうした?寂しくなったか?』

まるでからかうようなその口振りに、ムッとした表情を見せるオプティマス。
そんなオプティマスに微笑みかけながら、メガトロンがゆっくりと席を立ち近付いて来る。
そして間近に見詰めながら、オプティマスの答えを求めた


『・・・言わなければ分からんぞ?何を考えている・・・?』

その言葉にオプティマスは記憶を遡る。
あぁ・・・そうだ。あの時もこんな風に強引だったな・・・。

『・・・・お前と初めてキスをしたのは、新しい年を迎えた人間達がする行動がキッカケだったなと・・・思い出していた。』

自分を見詰める紅い眼から、視線を外す事など出来ない。
フンと鼻を鳴らし、オプティマスの鼻先に軽く歯を立てメガトロンは答えた。

『フン・・・そうだったか?・・・ワシはお前が手に入った事に満足しているがな。細かい事は忘れた・・・。』

そう言い、瞼にキスを落とす。

『はは・・・メガトロンらしいな。だがそれで良いのかもしれない。そんなお前だから、私は素直になれる。』

吸い込まれそうな碧い瞳に、メガトロンは吸い寄せられてゆく。

『素直に・・・か?では、お前からワシにキスをくれ。』

メガトロンの思わぬ申し出に、オプティマスの顔が一気に赤く染まる。

『な・・・!?』

何故・・・と問い掛けようとして、オプティマスはメガトロンの指で唇を遮られた。
そしてメガトロンが、ニヤリと笑いながら時計を指し示す。
時刻は既に0時過ぎ・・・新しい年の始まりである。

『去年はワシからだった・・・だから今年はお前からしろ。』

オプティマスの顎に指を添えながら、優しい命令を下すメガトロン。
そしてオプティマスは、その命令を戸惑いながらも実行する。

『お前は狡いな・・・・せめて・・・して欲しいと言え。』

『・・・狡い男が好きなのだろう・・・?』

唇が重なる間際の言葉に、オプティマスの心は答える。
そんな狡くて優しいメガトロンが好きだと―――。
一時の甘い口付けの後・・・照れたように笑いながらオプティマスが言う。

『今年も宜しく・・・メガトロン。』

その嬉しそうな表情に、メガトロンの言葉も甘くなる。

『未来永劫・・・お前といる・・・その為の誓のキスをもう1度俺にくれ・・・。』

この上ない幸せな表情を浮かべ、メガトロンの首に腕を回し先程よりも深いキスをするオプティマス。
そんな2人の甘い時間とムードに、食事を済ませ戻ってきたレノックス達は入室のタイミングを逃し暫し右往左往する事となる。       《完》

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