(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「初めてのチュウ」(さる作)
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『俺お前の事好きなんだけど、試しに付き合ってみない?』

そんな俺の台詞に目を丸くし、真っ赤な顔で頷いてくれたのは2ヶ月前・・・。
長い間《友人》として傍にいた俺の事を、サイドスワイプはそれ以上の想いで見ていたと暫くして聞かされた。
それは嬉しいなと笑えば、それに照れてまた赤くなる。何とも初々しい恋人は、それなりに遊んできた俺にはかなり新鮮だった。
手が触れる・・・慌てる。
視線が合う・・・照ながら嬉しそうに笑う。
話に夢中になり顔が近付いているのに気付く・・・真っ赤になって姿勢を正すetc・・・。

その一挙一動に俺は内心、何だこの可愛い生き物はと悶えにやけてしまう。
しかしその反面……困った事も出始めてきた。

『なぁ・・キスして良いか?』

夜、どちらかの部屋で2人きりで過ごす。
当然こう言う流れになる訳だが、その先がどうにも問題なのだ。

『き、キスか!?・・・あの・・・えと・・・あ、あぁ・・・。』

溶けるんじゃないかと心配になるくらい真っ赤になり、ギュッと目を閉じ緊張した面持ちで真一文字に口を結ぶ。
もう何度もしているにも拘わらず、毎回そんな感じで待ち構えるサイドスワイプ・・・。可愛いし、その緊張を解きながらするのも嫌いではない。
が、そろそろ次の段階に進みたい欲求があるのも確かだ。

そう思いながら軽く音を立てながら、緊張を解きほぐす為のキスを何度もする。
額に・・・瞼に・・・頬に・・・鼻に・・・一呼吸おいて見つめ合い、照れ笑いする唇に。
少しずつではあるが慣れてきたサイドスワイプは、俺に合わせ少しずつ唇を開きおずおずと舌を絡めてくる。
その動きがまたたどたどしくて、俺の頬がまた緩む。そして思う。
良くこんな可愛い生き物が、戦場の中で貞操を守り抜けたもんだと。

『・・・は・・・ディ・・ノ・・・。』

甘い溜息と共に名を呼ばれた俺は、そんな疑問を何とは無しに問い掛けてみた。

『な・・・お前さ、今迄危ない目にあったりしなかったのか?』

『は?危ない目って??』

目を丸くし小首を傾げながらそう聞き返すサイドスワイプに、俺はその素直さに押されながらも言葉を続けた。

『え?・・・いや、だからさ・・・そのお前可愛いし、戦場って言えば飢えた奴ばかりだし・・・大丈夫だったのかな〜〜って・・・。』

俺のその問いに、サイドスワイプは一瞬訳が分からないと言う表情をする。そして少し後、一気に頬を紅潮させ声を荒げた。

『・・・・・っ!?ば、馬鹿か!?んな事ある訳ねぇだろうが!!大体何時も誰かしか一緒にいたし、アイアンハイドが世話焼いてくれてたし・・・何考えてんだよ、このスケベ!』

最後の方は拗ねたような物言いだったが、その答えに俺は何と無く納得した。
つまり・・・こいつは意識してなくても、周囲の誰かしかがこいつの貞操を守る為に常に一緒に行動をしてた。
それはもしかしたら、チーム全員の意思だと言う事も考えられる。
下心があるにしろ無いにしろ、この素直な可愛らしさは戦場には癒しになる。
お互いが抜け駆けしないよう見張りあった結果、アイアンハイドが世話をするようになり手が出せなくなった・・・と考えるのが正しいだろう。

『何って・・・色々だよ。』

鼻を甘噛みしながらそう言う俺に、サイドスワイプは更に顔を赤くする。鈍いながらも、俺の言う事の意味が分かったらしい。
まぁ、話の流れからいくと分からない方がおかしいかもな。

『い、色々って・・・お前・・・俺と・・・その・・・・し・・・たぃ・・のか?』

このまま言わせたら溶けるんじゃないかと心配になるくらい照れているサイドスワイプに、俺は無言のままニヤリと笑い静かに頷いた。

『あ・・・ぁの・・・。』

何と答えれば良いのか、混乱するブレインを総動員させて考えるサイドスワイプ。
もうこのまま押し倒したいと思ったが、今後の事を考え少しずつ進めていこうと俺は考えた。

『そんなに緊張すんなよ。別に・・・直ぐにとは言わねぇから・・・お前がその気になるまで、気を長〜〜〜くして待つからさ。』

『え・・・?』

ちょっと拍子抜けた様なその声に、もしかして期待してんのかと嬉しくなるが気持ちを落ち着けこんな提案をしてみせた。

『・・その代わり、お前からキスしてくれよ。』

『えっ!?』

『何時も俺からばっかりだろ?だからたまには、お前から俺にキスしてくれよ。お預けさせるんだから良いだろ?』

明らかに戸惑っているサイドスワイプの表情を眺めながら、まぁ無理だろうなと俺はタカを括っていた。だからある程度困らせたら、勘弁してまたキスをしようと考えていたのだ。
だがサイドスワイプの口から、ちょっと意外すぎる言葉が返されてくる。

『・・・・・わ・・・分かった・・・やる。』

『へ?』

『だ、だから!俺からお前にキスするって言ってんだよ!?何度も聞き返すな馬鹿!!』

その予想外の答えに、俺の方が戸惑ってしまう。

『え、あ、そ、そうなんだ?んじゃ・・・頼むわ・・・。』

『お、おぅ!』

どうしてこう言う展開になる?と言う疑問を自分に投げ掛けながら、緊張した面持ちでサイドスワイプの行動を待った。
何か・・・生まれて初めてキスするみたいな気持ちになって妙にドキドキする。
そんな俺のドキドキが伝染ったのか、サイドスワイプは唇をキュッと噛み締め頬を赤らめていた。

『何だよ・・・眼・・・閉じろよ・・・。』

俺の両頬に手を添えながら、そう言うサイドスワイプ。その顔が妙に色っぽくて、不謹慎だと思いながら押し倒したくなってしまう。
けれどここで押し倒そうもんなら、思い切り殴られ3日は口を聞いて貰えないだろうと考え何とか踏み止まった。

『お前が近くなったら閉じるよ。』

せめてその艶やかな表情をギリギリまで堪能しようと俺がそう答えると、サイドスワイプは拗ねたように唇を尖らせ上目遣いに俺を睨んだ。

『・・・・じゃ・・・行くぞ・・・。』

『ん。』

何時になく緊張する。たまにはこんな初々しい緊張感を味わうのも良いな。
そんな事を考えながら、俺はサイドスワイプの顔が近くなるのを見詰めていた。
戸惑い気味に視線をずらし、また視線を唇に戻す。
何とも可愛いその仕草に見惚れていた俺は、次にサイドスワイプが起こした行動をまともに受ける羽目になる。

『ん!?』

ギュッと眼を閉じ、そんな風に勢いを付けるサイドスワイプ。
だがその勢いは気合だけではなく、身体にもついてしまい思い切り俺に突っ込む羽目になる。

ガッ〜〜〜〜〜ツ〜〜〜〜〜〜ン!?

『っ!?』

『っ!!』

驚く間も無く一気にサイドスワイプの顔が押し寄せ、そのまま壮絶な唇と唇の激突に互いの眼から星が出る。
あれだけ人の事をドキドキさせといて、こんな衝撃的な手痛いキスを喰らわせるとは・・・流石はサイドスワイプ・・・・・。
余りの痛さに暫し2人で悶絶し、ふと顔を見合わせる。お互いが口に手を当て、涙目になっているのを見ると急に笑いがこみ上げてきた。

『・・・・・・ぷっ!・・・はははははは・・・イテテ・・・・・おま・・・・痛ぇよ・・・。』

『・・・・わ、悪ぃ・・・へへへ・・・痛って〜〜〜・・・。』

『あ〜〜〜やべぇ、目茶苦茶痛ぇ・・・でも、お前らしいわ。』

怒るどころか大笑いする俺に、安心したのかサイドスワイプは俺の唇を撫でながら甘えた表情でこう言った。

『・・・んだよ・・・そんなに笑うなよな。俺なりに真剣だったんだからさ・・・でもゴメンな?・・・・次はもっと上手くやるからさ・・・。』

『ん、期待してるぜ?』

俺もサイドスワイプの唇を撫でながらそう答え、2人でクスリと笑いあった。
こんな激烈なキスは初めてだ、もう絶対に忘れられないなと考える俺の耳元でサイドスワイプが囁く。

『・・・あのさ・・・あんまり待たなくても良い・・・からな・・・。』       《完》

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