(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「君 想う」(さる作)
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――――夢に見る 遠い日の記憶 繰り返し想う 君の名前 ―――――



『 だからテメェは駄目ワープって言われんだよ!? 』

そんな怒鳴り声が基地内に響き渡る。

『 んだと!? テメェ・・・殴られてぇのか!? 』

掴みかかり、もみ合いになる2人。
スタースクリームとスカイワープは、今日の作戦が失敗に終わったのはどちらに原因があるのかで言い争っていた。


『 お前が上手くワープしてりゃあ、今頃はサイバトロン共を始末できてたんだ! それしか能がねぇクセに、まともに成功した試しがねぇ!? そんなのが俺の部下だってぇのが我慢ならねぇんだよ!! 』

『 テメエだって無様に追撃されてたじゃねェか!偉そうに物言ってんじゃねぇぞ!? 』

普段は割合と静かなデストロン基地も、この喧嘩で皆が集まり楽しげに行く末を見守っている。
退屈な日常よりも、他人の争う姿を鑑賞するのは楽しいからだ。
ましてその喧嘩をしている奴等がむさくるしい奴等ではなく、見た目も良いジェットロンと来れば尚更だ。

『 おい、止めろって!メガトロン様の所にまで聞こえちまうぞ!? 』

唯一止めようとしているサンダークラッカーも、2人を引き離すのに手一杯だった。

『 終わっちまった事、何時までも言い争っても仕方ねぇだろ!それにスタースクリーム・・・お前、最近おかしいぜ!?つまんねぇ事で怒り出したりよぉ。 』

『 何だと! 』

サンダークラッカーの思わぬ言葉に、スタースクリームが訝しげな声を上げる。
そして同じように、胸の奥が軋んだ。

『 へっ!?こいつはもともとそう言う奴だろうが!?その内俺の事を見限って、戦場のど真ん中に放り出しても不思議じゃねぇよ!?サンダークラッカー、お前も気を付けろよ。こいつは平気で裏切るぜぇ!! 』

怒りに任せてそう言い切るスカイワープの言葉に、スタースクリームは一瞬誰かの姿を思い出し・・・そして直ぐに現実へと戻される。
何時もの反応なら、直ぐに殴るか蹴るかしてくる筈。
そう予想していたスカイワープも、スカイワープを止めていたサンダークラッカーもスタースクリームの反応に驚いていた。

『 なんでぇ・・・その顔・・・。 』

スタースクリームが一瞬だけ見せた、何とも切なげな表情に思わずスカイワープがそう呟いた。
だがそのスカイワープの言葉に反応したスタースクリームは、今度は悔しげな表情で殴りかかろうとする。
これにはスカイワープもサンダークラッカーも戸惑うしかなかった。

『 ちょ・・・・スタースクリーム!止めろって・・・!? 』

それでも2人の間に立ち、止めようとするサンダークラッカー。
スカイワープ自身もスタースクリームの見せた表情に戸惑い、一歩離れた所で様子を見守っている。
そんな光景を皆は眺めているだけで、決して止めようとはしなかった。
だがそんな輩の中を乱暴に掻き分け、その小競り合いに口を挟む者が現れた。

『 おら、お前ら良い加減にしとけ。テメェらも見てねぇで、ちっとは止めろや。』

突然現れたアストロトレインは、まるで子供でも持ち上げるようにスタースクリームとサンダークラッカーを左右の腕に抱きかかえ周囲に睨みを聞かせた。
その突然の出来事に驚き目を丸くするサンダークラッカーとスタースクリームは、次の瞬間には近くにあった荷物の上に投げ出される。

『 うわ・・・! 』

『 !? ・・・・何しやがる!この筋肉馬鹿が!? 』

『 筋肉馬鹿とは随分なご挨拶だなぁ・・スタースクリームよぉ。』

そう言いながらスタースクリームを睨み付けるも、特に手を出す訳ではなくそのままスカイワープの方へと向き直り口調をやや柔らかくして声をかけた。

『 おい、お前も良い加減にしとけ?一応、スタースクリームはお前の上司だろうが。反抗すんなとは言わねぇが、さっきのはお前が言い過ぎだと思うぜ。』

『 だってよぉ・・・。』

『 だっても何もねぇっつーの!それに失敗したには本当の事だろうが!? 』

そう言いながらスカイワープの頭をポンと叩き、困った奴だと言いたげに微笑する。
そのアストロトレインの表情と言葉に、スカイワープも不服そうな顔をしながらも特に反論はしない。

『 おぅ、スタースクリーム!こいつには俺が言い聞かせておくから、お前さんも少し頭冷やしてこいや・・・でないとそこにいる情報参謀の説教喰らう羽目になるぜ? 』

ニヤリと笑いながら人混みの向こうを指差すアストロトレインに、その場の者全てが凍り付きゆっくりと振り向いた。
すると確かにサウンドウェーブの姿が有り、肩にはコンドルか留まっていた。
恐らくは事の顛末を記録していたのだろう・・・サウンドウェーブは驚く周囲の者の中をゆっくりと歩みスタースクリームの元へと向かって行く。
その姿に慌てて道を開ける者、苦々しい表情を浮かべる者と様々だ。
メガトロンの信頼する男として地位を確立しているサウンドウェーブは、スタースクリームにとって油断のならないチクリ屋と言う認識しかない。
その男に今の状況を見られ、記録されていたのなら・・・とスタースクリームは唇を噛んだ。

『 ちっ・・・! 』

『 ・・・偵察デ少シ頭ヲ冷シテコイ 2時間イナイニ メンタルチェックモ スマセルンダ ソウスレバ メガトロン様ニハ 報告シナイデヤル 』

苦々しく睨み付けるスタースクリームに、サウンドウェーブはエフェクトの効いた声でそう告げる。
そして同じようにアストロトレインの後に隠れているスカイワープに声をかけた。

『 スカイワープ 貴様ハ 今日ノ不始末ノ罰ニ 格納庫ノ掃除ヲシロ 俺ガ認メルマデ 飯ハ抜キダ 』

『 えぇ!・・・・マジかよ・・・・!?あんな広ぇ所、1人で出来るかって!! 』

『 反抗ハ 許サレナイ オマエ達モ トットト 部屋へ戻レ! 』 

サウンドウェーブのその一言で、集まっていた野次馬も文句を言いながら去って行く。

『 おら、お前もとっとと行け。』

不満気に佇むスカイワープに、アストロトレインがそう声を掛けた。
すると唇を尖らせたまま腕を組み、さも嫌そうな表情を浮かべ無言で睨み返す。
そんなスカイワープにアストロトレインは目を丸くしながらも、直ぐに笑いかけ頭をグシャグシャと撫でぐり回した。

『 わぁったよ!・・・俺も手伝ってやるから早く行こうぜ? 』

『 いででででで・・・・テメェ、ちったあ力加減てモンを覚えろや!・・・ったく。 』

大きな手を払い除けながら文句を言うスカイワープ・・・しかしその表情は何処か穏やかで嬉しそうだ。
アストロトレインもそれを分かっているのか、普段の厳つい表情は消え口元には笑みさえ浮かんでいる。
どこにでもある、好意を持つ者同士の優しい雰囲気・・・何時もなら勝手にやっていろと憎まれ口を叩き、その場から立ち去るスタースクリームだったが今日はそれが見られない。
ただ悲しげに、何も言わず2人を眺め・・・そして不意に踵を返し空へと舞い上がって行った。
らしくないその行動をサンダークラッカーは不安気に見つめる。
そして思う・・・多分・・・あの事が原因なのだろうと。
最近のスタースクリームの苛立ちも、不安定さにしても思い当たる事がそれしかないからだ。
そっと横を覗き見れば、同じように飛び去る姿を見詰め小さく溜息を付くサウンドウェーブの姿があった。
彼もまた、スタースクリームの変調を危惧し動向を見詰めている1人だ。
けれどそれはあくまでも参謀としての行為で、自分のように心配をしている訳ではないとサンダークラッカーは知っている。
だから思う、サウンドウェーブが行動を起こす前に何時ものスタースクリームに戻るようにと―――。
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