(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】
□「こっち向いて!」(さる作)
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バンブルビーと言うトランスフォーマーは、実に素直で可愛いと皆は常々思っている―――。
常に気を配り、笑顔を絶やさない。
たまにサムが構ってくれないと拗ねたりはするが、サムが名前を呼べばすぐさま飛んでいき助けたり話を聞いたりする。
昔から疲れている仲間の仕事を率先して変わったり、何と無く愚痴を聞いて欲しい時に傍で聞いてくれたりと優しい。
そんなバンブルビーはオプティマスやアイアンハイドにとっては、可愛い我が子同然であり大切で有能な戦士でもある。
そんな明るくお日様みたいなバンブルビーがここ最近妙に落ち着きが無く、感情の起伏が激しくなって来た事に皆はとても心配をしていた。
何時ものように笑っていたと思えば急に考え込んで持っていたお茶を落としたり、悲しそうな顔をしたかと思えば次の瞬間には怒っているような表情を浮かべたりと忙しい。
そんなバンブルビーの様子に、当然過保護な2人が反応し過剰に心配をしてしまう。
『 どうしたのだバンブルビー・・・何処か調子でも悪いのか? 1度ラチェットに診て貰ったらどうだ? 』
・・・とオプティマスが言えば。
『 何か心配事か? 俺達には言えん事なら、ラチェットかジャズに相談しろ。 1人で抱え込むな。 』
・・・とアイアンハイドが言う。
それを何とも言えない表情で眺めながら、ラチェットとジャズはこんな事を思っていた。
《 ・・・最強のコンビを前に何を言えって言うんだか・・・もしも相手がいる悩みなら下手な事を言えば、2人が何するか分からないから言えないとは考えつかないんだろうなぁ・・・。 》
その考えは当たっているらしく、バンブルビーは懸命に首を振り大丈夫と言う仕草をしてみせる。
それでもオプティマスとアイアンハイドの心配は尽きないが、これだけ素直な性分のバンブルビーが隠し事など出来ないのも重々承知でもあった。
声が出せない分・・・ボディランゲージが豊かなので隠し通せないと言った方が正しいかも知れない。
『 ・・・・分かった。だが、何かあったらキチンと我々に言うのだぞ? 』
引き際と思ったのか・・・オプティマスはそう言うと、アイアンハイドと共に姿勢を正しバンブルビーから離れていった。
それをホッとした表情を浮かべ、安心したかのように肩の力を抜くバンブルビー・・・。
ラチェットとジャズは、やっぱりなと言うように薄笑いを浮かべた。
『 ・・・・あそこまで緊張するなんて・・・・やっぱりあの話題かな? 』
・・・と笑顔のジャズ。
『 そりゃあそうだろう。それ以外に何があると言うのかね? 』
・・・と笑顔で答えるラチェット。
そこへ若手3人が現れ、話に加わり始めた。
『 ジャズ、ラチェット。今そこでオプティマスとアイアンハイドにすれ違ったけど何かあったのか? 』
何とも訝しい表情でそう問い掛けるサイドスワイプに続き、ディーノが言葉を続ける。
『 困ったような顔しながら、ビーがどうとか言ってたが・・・ビーがサムと喧嘩でもして拗ねてるとか? 』
『 ディーノじゃあるまいし、喧嘩したくらいで拗ねたりしないだろ。 』
素早い突っ込みのジョルトが、微笑みながらそう毒を吐いた。
その突っ込みにディーノが苦笑いし、サイドスワイプが肩を叩く。
そんな光景を眺めながら、やはりジャズとラチェットは思う。
この3人は妙に仲が良い。
歳が近いせいもあるだろうが、休みの日でも良く3人で過ごし笑っている。
共通点と言えば、少々好戦的な所ぐらいなのにと感心するくらいだ。
『 なに・・・大した事じゃない。バンブルビーが悩み事があるらしくてな。それをオプティマス達が心配してるだけさ。まぁ・・・本人が大丈夫だって言ってるから、そう深くは聞けなかったけどね。 』
ジャズのその言葉に3人が食い尽く。
『 バンブルビーが悩みだって! あのビーがか!? ・・・・あの2人に言えない事なんて・・・。 』
・・・と真面目に心配するサイドスワイプ。
『 悩みと言えば恋の悩みだろ? ・・・ビーも大人になるのか〜〜。口説き方で悩んでるなら俺に聞けば良いのにな? 』
・・・と不真面目な考えのディーノ。
『 ・・・・・悩み・・・・・。』
・・・と何やら嬉しそうに笑いながら言うジョルト。
ジョルトの反応が少し怖いなと思いながら、ジャズは一応注意をしてみせた。
『 心配するのは良いが、無理に聞き出そうとするなよ? バンブルビーが自分から言うのを待つんだ・・・良いな!? 』
『 分かってますよ。 』
そう言い何か話しながらビーに近付いてゆく3人は、明るく笑いながら声を掛ける。
『 よう!バンブルビー!? 何だ? 何悩んでる? 好きな奴でもできたか?? 』
『 オプティマス達に言えないなら俺達に言え? 少しは気が紛れるだろ? 』
『 そうだね。1人で考えてるよりは良いんじゃないか? 』
3人3様の言葉に目を丸くし顔を真っ赤にして慌てふためくビーの姿に、思わずジャズは頭を抱え呆れかえる。
あの3人は人の話を聞いてるようで聞いてない!人の注意を何だと思ってるんだ!?
『 おい・・・お前達・・・。 』
思わず注意しようとするジャズを、何故かラチェットが止めに入った。
『 良いから・・・お前さんまでそう過保護になるな。 それに悩みの種も分かると思うぞ? 』
何だか意味深な含み笑いを浮かべそう言うラチェットに、ジャズは訝しい表情を浮かべてしまう。
このタヌキ親父は何か知ってるな・・・と思ったが、確かに自分も少し過保護になっている事に気付き少し様子を見る事にした。
バンブルビーは3人に囲まれ戸惑ってはいるものの、何処か嬉しそうに笑顔を浮かべている。
その事から多少遊び慣れたジャズは、バンブルビーの想い人があの中にいる事に気づく。
《 誰だ・・・・? 懐いてるのはサイドスワイプだが、アイツはどちらかと言うと兄貴タイプだしな・・・ジョルトは面倒見は良いが、何考えてるのか分からない所があるし・・・ディーノは来るもの拒まずな所があるからな・・・出来れば避けて欲しいんだが・・・。 》
つい分析する悪い癖が出てしまったが、肝心のバンブルビーは直ぐにボロを出してはくれないようだ。
ふと・・・隣を見れば、腕を組み楽しげに様子を伺うラチェットがいる。
少しこの親父を見習って、見守る事に専念しようとジャズは考えた。
『 ビー・・・お前、本当に好きな奴の事で悩んでるのか? 』
直球な物言いのサイドスワイプが、真剣な面持ちでそう問い掛ける。
すると今迄よりも真っ赤な顔になり、違うと言う動作をしてみせるがそれが通用するような3人ではない。
『 そんなに顔を真っ赤にして違うって言ってもね・・・可愛いなぁ、ビーは・・・。 』
ジョルトが照れるバンブルビーの頭を撫でながらそう言うと、バンブルビーはますます赤くなり俯いてしまう。
そんなバンブルビーを見て、ディーノが膝を付き視線を合わせながらニコリと笑った。
『 そんなに照れる事じゃ無いんだぜ? ビーも少しずつ大人になってくんだから、誰かに恋するなんて当たり前の事なんだからな。なんだったらこの俺が、告白練習の相手になってやるぞ? 』
その時のディーノの表情が妙に悩ましく、見ているこちらが照れくさくなるとジャズは思った。
あんなくさい台詞はディーノだから言えるんだろうなと考えながら、何と無くバンブルビーの反応を見詰める。
元気で明るいバンブルビーの事だから、訝しむか目を丸くしてどうしたら良いのか悩んでいるだろうと・・・。
しかしどうした事か、バンブルビーは視線をディーノに合わせたまま顔を赤く目を潤ませている。
そこで初めてジャズは自分の目を疑った。
まさか、なんてこった!よりによって想い人はディーノなのか!?
しかしディーノ本人は気づいてるのかいないのか、微笑を浮かべたまま答えを待っている。
何時もプレイボーイ的な事を言ってる割には、肝心な部分で鈍いのが焦れったくて仕方が無い。
『 何を馬鹿な事言ってんだよお前は! お前みたいな奴が相手じゃ、ビーが可哀想だろうが。 』
ディーノとバンブルビーの間に入りディーノの頭をコツンと叩きながらそうサイドスワイプが言うと、ディーノは唇を尖らせながらも直ぐに反論しサイドスワイプに笑ってみせる。
『 痛っ・・・!? 何だよ・・そう言うお前は何時になったら愛しい人に告白するんだ? 早くしないとビーに追い抜かれちまうぜ子猫ちゃん? 』
『 な・・・・!? よ、余計なお世話だ!? 』
今度はサイドスワイプの恋ネタか?と思わず食い尽くジャズだが、バンブルビーの様子が急に変わった事にも気付いた。
互いに突き笑い合う2人を見て、ムッとした表情を浮かべモジモジとし始めている。
どうにかしてディーノの気を引きたいらしいが、声を出せないバンブルビーは思うように行動が出来無い。
通信すれば良いものをそれすら思いつかないらしく、みるみる不機嫌になってゆく様が何とも可愛らしくてジャズはこみ上げる笑みを隠さずにはいられない。
同じように困った顔をしながら微笑むジョルトが、見るに見かねてバンブルビーの代わりに2人に声をかけた。
『 おい、お前ら・・・論点がズレてるぞ。 悩んでる本人を置いて、何2人で盛り上がってるんだよ。 』
ジョルトのその言葉にハッとし、何ともバツが悪そうに軽く咳払いをする2人は再びバンブルビーに近付き話し掛ける。