(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「好きの意味」(さる作)
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ジャズは皆に好かれている。

オートボットの艦の操縦を任され、オプティマスの右腕・・・副官として信頼もされている。
アイアンハイドやラチェットからも勇気ある戦士として認められ、バンブルビー達若手から尊敬もされている。
まさに完璧なオートボット・・少し背が小さい事を除けば、彼自身も揺るぎ無い立場でありオプティマスに相応しいと自負できると考える。

けれど・・・世の中と言うのはそんなに簡単ではないようで、当のオプティマスときたら温室育ちのせいか恋愛類に関してはかなり鈍かった。
どんなに想いを寄せても、その眼差しに気付かず天使の微笑みを向ける。
・・・まったく罪な人だと思いながらも、その笑顔を守りたいが為に今日も柔らかく微笑みを返すだけだった。

そんな事を長い間続けていたせいか、オプティマスの中のジャズの立ち位置は《信頼すべき良い友人》に固定されてしまった。
戦いに明け暮れたディセプティコンとの友好条約がなされ、険悪と思われたメガトロンとの仲も徐々にではあるが改善されつつある・・・。
その状態になって初めてジャズは焦りを感じた。
それはオプティマスのこんな言葉がきっかけだった。

『 ・・・メガトロンは意外に優しいのだな・・・。』

会議を終え、2人きりの時間・・・。
と言っても会議の内容を皆に伝える為の書類整理の時間だったが、中々2人きりになるチャンスがないジャズにとっては幸せな時間だった。
そんな時・・1番聞きたくない名前が出てくる事に、ジャズは少しばかり不快さを感じた。

『 ・・・そうなんですか? 私は余りそう感じませんけどね。 』

なのでつい返事も刺々しい言葉になってしまう。
そんなジャズの返答に、オプティマスは困った表情を浮かべ忙しなく動かしていた手を止め笑った。

『 ・・・ふふ・・・思った通りの返事だな。 』

そのオプティマスの言葉に、自分の不機嫌さを知られたジャズはバツが悪そうにする。
その表情が普段のジャズからは考えられないくらい子供っぽくて、オプティマスは何だか嬉しくなってしまった。

『 君でもそう言う嫌な顔をするのだな。 』

ニコニコと微笑みながらそう言われると、不機嫌そうにしている事が何だか格好悪くて恥ずかしい。
そう思ったジャズは軽く肩を竦めると、軽く言葉を返した。

『 まぁ・・・たまには。つい最近まで戦ってた奴を、そうやって褒める気持ちにはなれてないですしね。 』

平静を装いつつ、オプティマスの顔を見る。
穏やかな笑みが可愛らしく、何だか嬉しそうに見えた。

『 何故メガトロンが優しいと思えたんです? 』

何だか照れくさくなったジャズが、話を進めようと質問を投げかける。
するとオプティマスが目を細め、更に嬉しそうな表情で話し始めた。

『 いや・・・平和条約を結んだは良いが、人間や彼等との話し合いが中々上手くいかなくてな・・・少し疲れていたんだ。で・・・ここだけの話だが・・・彼等との話し合いの後、つい会議室でうたた寝してしまったのだ・・・。』

『 うたた寝? 貴方が? 』

驚きそう言うジャズに、オプティマスは照れ臭そうに小さく頷いた。
そしてそれを見ながらジャズのその頃を思い出す・・・。

《 ・・・・そう言えば始めの頃、ビーとかサイドスワイプとかが良く小競り合いを起こして・・・俺もアイアンハイドも仲裁に忙しかったな・・・。俺達でさえ疲れ果てて夜は爆睡してたんだから、オプティマスなんかは、その何倍も疲れてたんだな・・・。 》

『 ・・・で、その・・・・うたた寝と言っても数十分くらいだと思うんだが、気が付いたらメガトロンが入口近くに腰掛けていて・・・会議はとっくの昔に終わっているし、特に何かをしていた訳ではないのに何故あんな所にいるのだろうと思いジッと見詰めてしまったのだ。そんな私をメガトロンも見ていたが、何も言わず立ち上がって部屋を出て行ってしまった・・。だからこれは推測でしか無いのだが、彼は私が1人で会議室に置き去るのは危険だと考え居てくれたのではないだろうかと・・・いや、あくまで推測なのだがな。』

そう言うオプティマスの照れたような、何とも言えない甘い微笑みにジャズは焦りを感じた。
恐らく・・・オプティマスが言うように、メガトロンは1人にするのを危惧し残っていたのだろう。
小競り合いが続いている中・・無防備に眠る敵の司令官がいたら、良からぬ事を考える奴がいてもおかしくはない。
では・・・何故、メガトロン自身がそうしなかったのか・・・・。
ジャズはそこに焦りを感じたのだ。
友好関係を築こうと懸命なオプティマス・・・それを間近に見詰め、話をするうちにメガトロンにも変化が起きていたのだろう。
無防備に眠るオプティマスを自分の部下から守るには、未だ2人で話をしていると思わせた方が良い・・・そう考えたのだ。
それはすなわち、メガトロンがオプティマスを憎からず思い始めていると言う事になる。
そしてオプティマスもまた、今迄見えなかったメガトロンの穏やかな姿や強いリーダーシップに惹かれ始めている・・・。
メガトロンは破壊大帝と名乗ってはいるが、実は相当の知識の持ち主でもある。
今迄頼られてばかりいたオプティマスにとって、初めて対等に話し意見を聞ける相手ができたと言う訳だ・・・。
友人としての位置は確立できていても、恋愛に関しての立ち位置はメガトロンと同じ・・・いや下になっているかも知れない。


『 ふん・・・それはあの破壊大帝の行動とは思えない優しさですね。それはまぁ、貴方の頑張りに対しての行動でしょうが。』

オプティマスにそう言う感情を気付かせたくなくて、ジャズはついこんな風に答えてしまう。
だが流石は天然オプティマス・・・そんなジャズの含みにまったく気付かず、素直に言葉そのままの意味で取り嬉しそうに笑った。

『 そうか!・・・ジャズもそう思ってくれるか!? アイアンハイドやラチェットに話したら、何を考えてるのかを分からないから信用するなと言われてしまったから・・・君だけでも彼のそう言う所を認めてくてれとても嬉しく思う。やはり君は最高の友人だ。 』

・・・・焦りが生んだ結末とは言え、相手を優位に立たせた上に自分の立ち位置を強調させてしまった・・・。
それを否定しようにも、あんなに満面の笑みを浮かべられてはそれも出来無い。
惚れた弱みが笑顔を曇らせる事が出来無いと、次の言葉を留まらせてしまうからだ。
それでも悪あがきで、ジャズはこんな言葉をオプティマスに告げてみる。

『 それは当然でしょう。私は貴方の事が好きですからね。』

『 私も君の事が好きだよ・・・。さぁ、話が長くなったな・・・作業も後少しだし、終わったら共に食事でもしよう。 』

『 えぇ、喜んで・・・。』

好きだと言い、好きだと応えて貰えた・・・。
きっとオプティマスの言う好きと、自分の告げた好きの意味は違うだろう。
けれどメガトロンの事を話してくれたオプティマスの表情と、いま向けてくれた表情がまったく同じだと言う事が嬉しかった。
そして恋愛の立ち位置も同じだと感じたジャズは、いまはそれだけで満足しようと考えた。

『 ジャズ・・・ここの部分なんだが・・・。』

『 はい? あぁ、ここですか。これはですね・・・・。』

吐息がかかる程接近し、2人だけの時間を作れる自分の方が有利・・・。
この先どうキチンとオプティマスに恋愛を理解させようか・・・。
日々の楽しみと闘志が沸くジャズだった―――。       《完》

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