(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「鳴り止まない音」(さる作)
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年末・年の瀬

サイバトロン戦士には全く関係無いように思えるこの言葉・・・。
しかし現実は大いに関わり忙しくなる時であった。

『 アイアンハイド、年内中に次の年の警備計画書に目を通して皆にそれを伝えてくれ。 』

『 了解 』

『 司令官、軍基地からの要請です。来年の活動報告書と説明に基地まで来て欲しいと・・・。 』

『 それはジャズとアラートが向かっている筈だが? 』

『 司令官! 基地上空にデストロン反応です!? 』

『 プロールとバンブルビーで偵察・監視して怪しい動きをするようなら報告の上捕まえるように!! 』

『 ホイールジャック、怪しい薬を皆の飲み物に混ぜるんじゃない!? ここに来て私の仕事を増やす気か!? 』

『 何を言うかラチェット、変な薬ではないぞ? 皆が今の3倍動けるようになる・・・・。 』

『 戻れなくなったら誰がそれの始末をすると思っている・・・? 』

・・・・とまぁやや殺気立った感じであった。
人間との共闘には必要不可欠な事とは言え、サイバトロンには無かった年中行事に些かうんざりしている。
そしてそれは何時も明るいブロードキャストの顔を曇らせていた。

『 ・・・・・ここはもうメンテナンスOKだよ〜〜・・・次は? 』

半分意識が無いような表情でそう言うブロードキャスト。
彼はここ数日基地内のメンテナンスや情報処理や報告書の纏めに追われていた。

『 残りは自室でできる情報処理だけだから、少しゆっくりすると良い。あぁでも、今日中に司令官に報告してくれよ? 』

『 了解・・・・ハウンド・・・・俺っち少し仮眠するから・・・・。 』

立ち上がりヨロヨロと歩きながらそう言うブロードキャストに、ハウンドは頷きながら分かったと答えた。

『 万一を考えて後で起こしに行くからな? 』

『 ・・・んじゃ2時間後にして・・・ 』

そう言い残し部屋を後にする。
ここ数日まともに休んでいない。
良い加減横にならないとショートして倒れるかも・・・。
そんな事を考えながら歩くブロードキャストの耳に、デストロンセンサーの音が届いた。
こんな忙しい日に物好きな奴もいたもんだ、デストロンは暇なのか?そう思った時ふとある音を思い出す。

『 あ・・・・・そう言えば・・・・・暫く聞いてないなぁ・・・・。 』

虚ろな表情に、ふと・・笑みが浮かぶ。
ブロードキャストの思い出した音・・・それはサウンドウェーブ固有の音の事だ。
サウンドシステムは常に音を聞き、その音が何であるかを理解する。
その音で相手の感情や思考を予測する事も可能だ。
サウンドウェーブのブレインスキャンとまではいかないが、同じサウンドシステムのブロードキャストも似たような事が出来た。
それ故に困った事もある。
聞こえてくる音が煩すぎるのだ。
だから任務以外では自室に篭もり、好きな音楽や音を聞いて過ごす。
その中でも1番のお気に入りがサウンドウェーブの音だった。

『 まぁ・・・・こんなに忙しくちゃねぇ・・・会いにも行けないし。 』

苦笑いを浮かべ、自分に言い聞かせるように呟く。
2人が付き合い始めてからだいぶ経つ。
勿論、双方の指令には秘密だ。
オプティマスは兎も角、メガトロンが許さないだろう。
それ故に会っている時は静かで、とても穏やかな心地になれる。
同じようなシステムを持ち、それに耐える者にとってそれはとても重要な事だった。
サウンドウェーブは普段マスクをしている事から、その表情や感情を見る事は誰にも出来無い。
それはあのメガトロンでさえ同じ事で、彼の本当の表情や感情を知る事は無い。
その事が凄く残念に思える反面、自分だけが知っていると言う優越感にも浸れる・・・。
サウンドウェーブの音は、それ程までに静かで心地良かった。

『 どうしてるかねぇ・・・まぁ、やっこさんクールだから俺っちの事なんか考えもしないだろうけど。 』

・・・・自分で口にしといて何だが、物凄く寂しい気持ちに陥る。
早くこの煩わしい行事を終えて、思う存分サウンドウェーブを抱き締めたい・・・そう思った。
サウンドウェーブの甘い吐息を感じ、快楽に酔いしれ悩ましく蠢く様が見たい・・・。
そして何より・・・あの心地良いサウンドウェーブの鼓動を聞きたいと思った。

『 ・・・・・寝よ。 』

溜息を付きながらそう言い、自室のドアを開く。
途端に中にいる誰かに腕を強く引かれた。

『 え? えぇ―――っ!? 』

思い切り油断していたせいか、ブロードキャストは難無く中へと引き摺り込まれベッドへと押し倒される。
中は薄明かりしかなく、誰がいたのか瞬時に把握する事ができない。
慌てふためき起き上がろうとするブロードキャストの唇は、何者かにより塞がれ肩は強く掴まれベッドに押し付けられた。

『 んんっ!? 』

ただでさえ驚いてパニック状態の所に、そんな事をされ更にパニックする。
しかし不思議な事にその行為に嫌な感覚はない。
寧ろ覚えのある感触に、有り得ない考えがふと・・浮かぶ。
まさか・・・そう思いながら左腕を伸ばし背中に手をまわす。
そしてもう一方の腕を腰に絡め、指先でそっとなであげた。

『 ・・・ん!? 』

途端に跳ね上がる身体と声に、ブロードキャストのブレインは熱を上げる。
肩を押さえ付けていた力が緩んだ隙に思い切り引き剥がし、その顔を凝視した。

『 ・・・・はっ・・・・!? さ・・・・サウンドウェーブ!? 』

自分の上に覆い被さり自分を見下ろす侵入者の顔を見た途端、ブロードキャストは何とも言い難い声を出し名を読んだ。
マスクオフはしていたものの、バイザーは降りたままで表情は読み辛い。
けれど少し怒っているような感が見受けられる。

『 ・・・・ふん・・・・相変わらずのざる警備だな。ここに来るまで誰にも見付からなかったぞ? 』

何時もの冷静な物言い・・・・確かに夢でも何でもない、本物のサウンドウェーブだとブロードキャストは思った。

『 あ・・・・そ、それにしたって・・・・もしかしてさっきのデストロンセンサーって・・・!? 』

『 俺がそんなヘマをすると思うか? あれはスタースクリームだ。俺はそれに気を取られているうちにここまで来たんだ。 』

『 へ? す、スタースクリーム?? 』

要するにスタースクリームが囮になった?って事??
そう考えるブロードキャストに、サウンドウェーブはフンと鼻を鳴らし小馬鹿にするような口ぶりでこう言い放った。

『 俺とアイツが協力し合うと思うのか? 奴は勝手に行動し、俺はそれを利用しただけだ。 』

『 え? あ、ブレインスキャン!? 』

次から次へと突拍子がつかない事が起きる。
もしも誰かに見付かったら・・・頭の隅で冷静に考えてもいる。
でも会いたいと願った次の瞬間に、会いたかった者が腕の中に舞い降りてきた。
その喜びの方が、そう言う思考を打ち消してしまう。
ブロードキャストはとびきり嬉しそうに笑い、目の前の憎たらしい表情のサウンドウェーブを抱き締めた。

『 ・・・・・まったく・・・オタクは何時も俺っちの予測を上回ってくれるよね。 』

ブロードキャストのその表情に、サウンドウェーブの気持ちも緩んだのかされるがままに抱き締められている。

『 ふん・・・・貴様程度の未熟なサウンドシステムに、この俺が負けるとでも・・・? 』

そう言いながら耳を胸にあて黙り込んだ。
その行為にブロードキャストは、サウンドウェーブも自分と同じ気持ちだった事を初めて知る。

『 ・・・・もう直ぐ忙しいのも終わるからさぁ・・・・寂しくさせてゴメンね・・・? 』

『 ・・・黙れ・・・。 』

後は互いに無言だった。
言葉はいらなかった。
耳に響く、この音だけがあれば良い・・・。
ブロードキャストはその音と、サウンドウェーブの身体を感じながら何時の間にか眠りについてしまう―――。




『 おい! ブロードキャスト・・・・起きろっ!? 』

心地良い眠りから強制的に引き摺り出したのは、ハウンドのそんな声だった。

『 ん!? あれ? ハウンド?? 』

飛び起き、周囲を見回しながらそう言うブロードキャスト。
それを呆れたように眺めながら、ハウンドは軽く肩を叩き言う。

『 寝惚けてるのか? もう2時間経ったぞ。早く起きて仕事を片付けてくれよ? 』

ついさっきまで・・・そう考えながらも無言で頷き頭を掻くブロードキャストは、満足そうに部屋を出ようとするハウンドを見詰め
思い出したかのように急ぎ声を掛けた。

『 あ・・・・ハウンド! 俺っちが休む前に鳴ってたデストロンセンサーって・・・。』

その声に振り向き、少し考えてからハウンドは答えた。

『 ん? ・・・・あぁ、スタースクリームが周囲をうろついてただけだったよ。特に何事も無かったけど、
スカイファイアーが立ち去るスタースクリーム後を追っていったな。基地が分かるかもしれないって・・・どうかしたのか? 』

不思議そうに問うハウンドに、ブロードキャストは慌てて言葉を濁した。

『 いや、ほら、急襲とかあったらどうしようかなって・・・・お、俺っち呑気に寝てて良いのかな〜〜ってさぁ・・・・
アハハハ・・・・寝ちゃったけど・・・・。 』

『 ? そんな心配しなくとも、俺達が追い払ってやるよ。じゃあな、頼んだぞ! 』

訝しい顔をしながらも、部屋を去るハウンドに笑顔で手を振り見送る。
眠る前にサウンドウェーブが言っていた事と合致する・・・・あれは夢ではなかったのだとブロードキャストは確信した。
自分が眠ってしまった後、サウンドウェーブはどうしたのだろうか?
次に会った時、物凄い嫌味を言われるだろう事は確実だ。
それでも会いに来てくれた事を考えれば、そんな事で気が済むのならいくらでも耐えられる。
サウンドウェーブが顔を埋めた胸もとへと視線を落とせば、微かに残る青のペイントと耳に残る音が頬を緩ませる。
一刻も早く仕事を終え、今度は自分から会いに行き抱き締めようと強く想った。

『 おっしゃ! とっとと片付けちまいますかぁ!? 』

ブロードキャストはそう言うと、自室のPCに向かい驚異的なスピードで仕事を片付け始めるのだった―――。




※ 余談 ※

『 サウンドウェーブぅ!どこ行ってたんだー? 』

何事も無く帰還したサウンドウェーブにランブルが無邪気に聞くと、サウンドウェーブは淡々とした声でこう答えた。

『 連絡ノ1本モ寄コサナイ薄情者ニ、活ヲ入レニ行ッテイタ。 コレデスグニ仕事ヲ終エ、会イニクルダロウ。 』

その答えにランブルとフリンジーは笑顔のまま固まり、一瞬置いてから《 そうなんだ・・ 》と答え浅い溜息を吐いた。
どうしてこうも主導権を取りたがるのだろうか・・・。
素直に会いたくて会いに行ってきたと言えば良いのに・・・・。
そんな2人の考えを見透かしたかのように、サウンドウェーブはこうも付け足した。

『 ツイデニ カメラトマイクモ 取リ付ケテキタ。妙ナ行動ヤ作戦モ監視デキルシナ。 』

《 それマジ、やばくね? 》

そう思いながらも声にはしないランブルとフリンジーであった。       《完》

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