(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「貴方のすべて」(さる作)
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小さな手だけれど、俺の全てを包み許してくれる―――。
その手が俺を支えてくれる。
何時も、どんな時も―――。



『 ロディマスを知らないか? 』

険しい顔をしながらウルトラマグナスがラングにそう問い掛ける。
するとラングは少し驚いた顔をしながらも、浅く溜息を付き首を横に振った。

『 いいえ? そもそも彼が進んで私の所に来ると思いますか? 』

ニッコリと微笑みながらそう言うラングに、ウルトラマグナスは少し間を置きこう答える。

『 ・・・・・・すまなかった。だがもし万が一訪ねてきたなら、直ぐに私の所に来るように言ってくれ。』

『 わかりました・・・万が一、ここに来たならそうお伝えしますね。』

微笑しそう告げるラングに、ウルトラマグナスは頷き部屋を後にした。
その背中を見送り・・入口のドアが閉まったのを確認したラングは、微笑みを浮かべたまま自分の背後にあるデスクを指で啄き音を立てる。
そして静かに・・・・穏やかな声で囁きかけた。

『 ・・・・もう行ってしまいましたよ・・・出てきても大丈夫です。』

その柔らかい声に導かれ、デスクの下からゴソゴソと言う音が鳴りゆっくりとロディマスが顔を出した。

『 マジ・・・? もう大丈夫・・・? 』

恐る恐る声を掛け、見上げる顔はまるで幼い子供のようだ。
その顔をラングは見詰めながらそっと手を差し伸べる。

『 ええ、ウルトラマグナスは行ってしまいましたよ。万が一貴方が訪ねて来たら、直ぐに来るようにとの伝言を残してですが。』

ロディマスはその差し出された手を取り、ゆっくりとデスクの下から這い出ると気まずそうな表情を浮かべた。
彼はウルトラマグナスが本当は、ここに自分がいる事を分かっていたのだと思ったからだ。
ただラングの手前、無理強いをするのを止め待つと遠回しに言っているだと・・・・。

『 さて・・・・今日はどうしてウルトラマグナスから逃げているんです? 』

ロディマスの手を掴んだままそう問い掛けるラングに、ロディマスは少し唇を尖らせながらこう答えた。

『 あ・・・と・・・・ウルトラマグナスに頼まれた仕事・・・ドリフトにやらせたのがバレて・・・・。』

『 叱られたんですか? 』

『 ・・・・・仕事・・・倍にされた・・・ 』

そこまで言うと、ロディマスは黙り込んでしまう。
自分でも格好悪いと思うし、こんな格好悪い姿をラングに見せたくなかったからだ。
しかしラングはそんな顔をするロディマスに怒るでもなく、フワッと笑って見せ軽く手を叩いた。

『 ふふ・・・仕方がない人ですねぇ。取り敢えず・・貴方の覚悟が決まるまで、私とお茶を飲みましょう。』

『 良いのか・・・? 』

『 ええ、勿論、貴方さえ嫌でなければ。』

その言葉を聞いた途端、嬉しそうに笑うロディマス。
その笑顔に思わずラングも微笑んでしまう。
本当に、感情が豊かなのだと感じる。
そしてこの感情の豊かさに惹かれ、その笑顔を常に見つめていたいと思っていた。

『 ラング・・・ラングは俺のこういう所嫌いか・・・? 』

不意にそんな事を口にして、真っ直ぐにラングを見詰めた。
驚き見れば淹れたてのお茶を飲みながら、不安気にしているロディマスにラングは小さく首を振る。

『 いいえ・・まぁ、ウルトラマグナスは困っていると思いますけどね。』

『 だってよぉ・・・・。』

今度は拗ねたように唇を尖らせて俯く。
それが可愛くて仕方がない。
ラングはロディマスの前に立つと、その顔を両手で包み込み額に軽くキスをした。

『 な・・・・ラ、ラング!? 』

驚くロディマスにラングは、言い聞かせるように静かに言葉を紡いだ。

『 ちゃんとやれば出来るのに、やらないから困ってるんですよ。ウルトラマグナスだって、本当は煩く言いたくないと言ってますしね。』

大人しく聞いているロディマスの表情はとても穏やかで、触れている手に頬を摺り寄せる。
伝わる感情が好きに染まる・・・。

『 もし本気で怒っていたら、ウルトラマグナスは口もきいてくれないと思いますよ? 貴方も彼が本気で怒ってると思ってないから、こうやって困らせてるんでしょう・・・? 』

ロディマスは何も言わないけれど、微かに照れ笑いを浮かべた。
そしてそのまま腕を伸ばし、ラングの身体を抱き寄せ・・・ラングもまたロディマスの頭をその腕で包み込む。
愛おしい気持ちが募る。

『 分かってますよ・・・貴方の事はすべて・・・仕事を終わらせたら、もう一度私に会いに来てください。一緒に食事をして、たくさんお話しましょう。』

『 全部お見通しかよ・・・怖いな・・・。』

ラングの胸に甘えながらそう呟くロディマスに、ラングは頭を撫でながら優しく答える。

『 ええ・・・お見通しですよ。貴方が私に会いたくなって、ここに逃げ込んだ事も・・・私が貴方をこうして抱きしめてしまう事も・・・全部です。』

そう口にしながらラングは想う。
ロディマスが何かに疲れてこうして癒しを求めてくるなら、自分は常にそれに応えられるように待っていようと―――。
弱い自分でも出来る、唯一の事を守り抜こうと―――。
この愛しい者のすべてを支えていこうと、強く願い想う。

『 ・・・・終わったら・・・もっと触れても良い・・・? 』

胸元にキスを落としながらそう求めるロディマスに、ラングは微笑し唇に小鳥のようなキスをし応える。

『 良いですよ・・・もっと私に貴方を感じさせてくださいね。』

頬を染め・・嬉しそうに笑うロディマスに、ラングもまた幸せそうに微笑む。
自分の腕の中にある、愛しい者のすべてに想いを馳せながら―――。       《完》

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