(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「無自覚なブラウンシュガ-」(さる作)
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『たまには外で打合せしようぜ!』

ウルトラマグナスの顔を見た瞬間、ロディマスは満面の笑みを浮かべながらそう提案した。
その急な提案を、終わっていない山積みの仕事の向こう側で受け取るマグナス。
当然の事ながら何を言っているのだろうかと言う表情を浮かべる。

『んな顔すんなよ。もうここに何日缶詰になってる思ってんだ? いい加減外の空気が吸いてぇんだよ!?』

テーブルに下でバタバタと足をばたつかせ、突っ伏すロディマスにウルトラマグナスは呆れた声でこう返した。

『・・・・缶詰になった原因は君がサボってばかりいたせいじゃないのか・・・・?』

その言葉にロディマスはすかさず唇を尖らせながら言い返す。

『分かってるよ!・・・分かってっけどさぁ〜〜もういい加減外行きてぇよ・・・。このままいたらやる気も
なくなっちまうしさぁ〜〜・・・良いだろマグナス〜〜〜。』

その時、ちらりと上目遣いでマグナスの顔を覗き見る。
その表情にマグナスが弱いと知っての上だ。
そう言うロディマスの思惑を知っていながらも、ウルトラマグナスは許してしまう。
惚れた弱みとは良く言ったものだ。

『・・・・・いまやっているデータを片付けたら、皆の気分転換も兼ねて街のカフェに連れて行く・・・。』

小さく溜息をつきながらそう言うと、屈託ない笑みを浮かべ嬉しそうに仕事を再開した。
その様子が余りにも子供っぽくて、つい頬が緩んでしまう。
ロディマスと付き合い始めてから、こう言う新しい彼を見付けるのが嬉しいとマグナスは感じていた。
知り合ったばかりの頃は、自意識過剰で破天荒な性格の若者だと煙たがった。
けれど時折見る弱音や迷い・・・考えや想いを知り何時の間にか好意を寄せている自分に気付く。
立場や年齢の差も考えはしたが、常に彼の傍に居たいと願い彼の心を欲した。
そんな自分の変化をロディマスは敏感に察し、自分も同じ想いを持っていたと照れながら口にした時は幸福でどうにかなってしまいそうだった。
手放したくないと言う気持ちが彼の我儘を許し、ロディマスもまた許される事を甘えた笑顔を浮かべ頬を薄らと染める。
ウルトラマグナスはそんなロディマスの表情が好きだった。

そんな事を考えながらも手早く自分の仕事を終え、直ぐに出かけられるようにと準備を整えるウルトラマグナスを
ロディマスは嬉しそうに見詰め何時も以上の速さで仕事を片付けた。

『うぉ――――――!久し振りの外だ―――っ!?』

両腕を高らかに上げながら伸びをするロディマスを、ウルトラマグナスやラチェットは微笑みながら見詰める。

『そんなに忙しかったの?ロディマスは何時もバーにいるから分かんなかったよ。』

ロディマスの横をちょこちょこと歩きながらテイルゲイトが不思議そうにそう問い掛けると、
ロディマスは何ともバツが悪そうな表情を浮かべ頬を掻いた。
結局・・・皆に声を掛けてはみたものの、手が空いているのがラチェットとテイルゲイとしかいなかったのだ。
皆は残念がったが、ウルトラマグナスにとっては嬉しい事だった。

『あ、なぁなぁ!あの店評判のカフェなんだ!?あそこに行ってゆっくりしようぜ!!』

そう言いながらロディマスが指差したのは、若者向けのカフェテリアではなく割とシックな作りのカフェテリアだった。
店内で寛ぐ客も落ち着きのある感じで、賑やかな場所を選ぶロディマスにしては珍しい選択だった。

『あ、僕このお店知ってるよー♪すっごく美味しいエネルゴン・スティックがあるんだよね?』

『お、流石は食いしん坊のティルゲイト!チェックは欠かさないね?』

笑いながらそう言いティルゲイトの頭をグシャグシャと撫で廻すロディマスは、キョトンとするラチェットやウルトラマグナスにも声を掛ける。

『ここんち珈琲とかピザも美味いらしいぜ?2人とも嫌いじゃないだろ?』

笑いながらそう話すロディマスの表情に、ウルトラマグナスとラチェットは顔を見合わせた後微笑し頷いた。
どうやら年上の2人も落ち着ける店を探しておいてくれたらしいからだ。
それは言葉で言わなくても、何とも得意げな表情から読み取れた。

『ほう・・・なかなか良い店じゃないか。これは楽しみだな。』

ウルトラマグナスの背中を叩きながらそう言い、店内へと入るラチェットは嬉しそうに見えた。
4人は店内へ入ると、中央の一番大きなテーブルへと案内された。
楕円形のテーブルも添えられた椅子も、洒落た形をしていてとても座りやすい。
インテリアや音楽等も落ち着いていて、これならば仕事も集中して出来そうだとウルトラマグナスは思った。

『皆、何飲むんだ?』

『んとね、僕アイスココア!それとミックスエネルゴン・スティック!?』

『・・・私はコーヒーを貰おうかな。食事は後で良い。』

『マグナス、マグナスは何にする?』

そう言いながらメニューを差し出すロディマスの顔は本当に嬉しそうで、それを見詰めるウルトラマグナスも思わず緩んでしまう。
ウルトラマグナスの微笑を見て、不思議そうにしながら唇を尖らせるロディマスにウルトラマグナスは笑いながら言葉を掛ける。

『君はそんなに外が恋しかったのか?』

『え!?‖‖』

『いや・・・子供のようにはしゃぐのでな・・・。』

ウルトラマグナスの突然の言葉に、ロディマスの顔は見る間に赤くなっていく。
図星だったのもあるが、それを鈍いと思っていたマグナスに言い当てられたから余計だ。
当然、ムキになって言い返す。

『な・・・・っ!‖‖ そ、そんな事無いかんな!?マグナスが久々に外出したから緊張しないように気ぃ使ってやってるだけだよ!!』

顔を赤くしたまま腕を組み、プイっと他所を向いてしまうロディマス。
それを見ながら微笑み、宥めるようにウルトラマグナスは声を掛けた。

『そうか?それはありがたいな。そうだな・・・私はエスプレッソを貰おうか。君は?どうするんだね?』

優しい声色でそう問い掛けられると、ロディマスは唇を尖らせたままバツが悪そうに答える。

『・・・・俺は・・・・・カフェ・ラテにする。飯は?』

『約束の仕事を片付けたら注文する。残りはこのデータパッド3枚だし直ぐに終わるだろう?』

『・・・・まぁな・・・・。』

未だ頬を染めながらも、そう答えるロディマスにウルトラマグナスはニッコリと微笑んだ。
この2人のやり取りを正面から眺めていたラチェットは、何なんだこのやり取りはと考えていた。
別に2人の仲を知らない訳ではないが、普段どれだけ甘やかしてるのかと思うくらいウルトラマグナスの表情が優しい。
口が達者な筈のロディマスもやけに素直だ。

『ねーねー注文決まったー?さっきから店員さん待ってるんだけど?』

軽く手を振りながらそう問い掛ける。
その横にはラチェットと同じ気持ちなのだろうか、複雑な表情を浮かべた店員が注文を持っていた。

『僕とラチェットのは頼んだから、2人の言えば終わりだよ?あとねピザ少し時間かかるって言うから先に頼んじゃったからね?』

ラチェットと店員の表情を見て、何かを感じ取ったのだろう・・・ウルトラマグナスは咳払いをしながら注文を告げる。

『んんっ・・・・そうか・・・ええと私にエスプレッソ、彼にカフェに・ラテを頼む。』

『・・畏まりました。ピザは焼き上がりしだいお持ち致します。』

『ああ、君・・・もしあればニュースパッドをくれるか?』

『あ、僕も何か雑誌読みたいな――!』

『はい、お飲み物と一緒にお持ち致します。』

そう言いながら一礼しその場を去っていく店員を見送ると、何とも言えない空気が4人を包んだ。

『2人とも普段言い争ってたけど、本当は仲良いんだね――。』

・・・・と思っていたのは3人だけだったようで、テイルゲイトは何も気にしていないようにニコニコと笑いながらそう話掛ける。
鈍いのか・・・天然なのか、何ともテイルゲイトらしいなとラチェットは思った。
しかしそれはそれで助かると考えたラチェットは、そのテイルゲイトの言葉に便乗し言葉を続けた。

『普段の態度は皆を引き締める為でもあるんだろう。しかしそんなに仲が良いとは思わなかったな。』

何事も無かったかのような微笑みを浮かべながらそう言うラチェットに、ウルトラマグナスは苦笑いしデータパッドへと視線を落とした。
ロディマスはそんなやり取りを見ながらテへっと照れ笑いをし同じようにデータパッドへと意識を向ける。
久し振りの外出で気が緩んだにしろ、2人きりでないと言う事を忘れないで欲しいとラチェットは思った。

その後は何事も無く、静かで有意義な時間をそれぞれ過ごす。
時折テイルゲイトがラチェットに話し掛けたり、雑誌の記事について質問したりするぐらいだ。
店内は心地良い音楽が流れ、ロディマスの言う通り珈琲も美味い。
賑やかな船内で誰かしら怪我をしたり、酒を飲んで騒いだりする日々が嘘のようだなと優雅な時間を楽しんだ。
そしてチラッと仕事に没頭するウルトラマグナスとロディマスへと視線を投げる。
今のところは大人しく仕事をしているが、何かのきっかけでさっきのような2人の世界にならないとは限らない。
出来ればそうならないうちに船に戻れれば良いなと思っていた。

『失礼致します。ご注文のピザが焼き上がりました。』

そんな事を考えていた瞬間、良い匂いをともなってピザが運ばれてきた。
ロディマスの言う通り、トロトロのチーズと具材が絡み合い見た目にも美味そうだ。

『わぁ!美味しそうだね 』

一番最初にそう声を上げたのはテイルゲイトだった。
そのテイルゲイトの声で、仕事に集中していた2人が顔を上げる。
そしてピザを見るやいなや、ロディマスはウルトラマグナスへと向き直り顔を見詰めた。
特に何を言う訳でもないのだが、まるでお預けされてる子犬のような目を向けている。
仕事はもう少し残っているぞと言いたくても、それを言い出せるような雰囲気でもない。
困り果て、信じきってる目を裏切れずウルトラマグナスは小さく溜息をついた。

『・・・・冷めないうちに食べよう・・・・。』

『やった!マグナスも食おうぜ!?』

『もし宜しければこちらのお客様用に、こちらの容器をお使い下さいませ。』

店員がそう言いながら差し出してきたのは、テイルゲイトのような口型が固形物を食べる為の小さなミキサーのような物だった。
風味を損なわず温かさもそのままに食べられると評判で、テイルゲイト自身も欲しいと思っている物だった。

『わ―――♪ ありがとう!僕丁度これ欲しいと思ってたから試しに使えるし良かった――!?』

嬉しそうにはしゃぐテイルゲイトから容器を受け取り、内にピザを入れ準備をしてやるラチェットはチラリとロディマスへと視線を流す。
メニューを見ながら何か言っているロディマスの言葉を、ウルトラマグナスはウンウンと頷きながら聞いている。
どうやらいま食べようとしているピザの説明を、等々と語っているらしい。
さては相当調べてきて、その事を自慢気に話しているのだろう。
どんなに好意を持っているにしろあの自慢気な顔を、皆にはおおよそ見せないだろう甘い表情で聞いてるのだから大したものだとラチェットは思った。

『・・・・な、スゲーだろ?な!?』

『そうだな、美味しく食べる事が出来そうだ。』

ラチェットの心2人知らずで、ウルトラマグナスはそう答えながらピザを1枚皿に取りロディマスに渡してやる。
それを受け取り嬉しそうに笑うロディマスは、期待に頬を染め早速熱々のピザを思い切り頬張った。

『・・・熱っ・・・!美味い・・・な!?』

嬉しそうに笑いながら頬張るロディマスを眺めながら、ウルトラマグナスもひとつ皿に取りパクついた。
そしてホォ・・・と思わず声を洩らす。
ロディマスの言う通り、これは中々美味だと感心したからだ。
目の前のラチェットやティルゲイトもにこやかで、満足気な笑みを浮かべている。
今日は仕事も片付いたし、美味い物も食べられ良い一日だとウルトラマグナスは思った。
そうして2枚目に手を伸ばそうとした時・・・ロディマスの異変に気付いた。
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