<;丶`Д´>紐育 につく 通り 入口以前


□「*。 Cinderella Liberty 。*」(月夜野さる著)
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彼女に初めて出会ったのは、とある繁華街の中だった――。

何時もの様に塾へ行き、何時もと同じ道を辿って帰宅する・・・判を押した様に繰り返される僕の日常は、“退屈”と言う言葉がぴったりと当てはまる物だった。何になりたい訳でも、何を目指している訳でもない・・・ただ“皆と同じ事をする安堵感”を味わっていた。はみ出さなければ目立たない、目立たなければ誰にも苛められない・・・平均的な自分・・・。


『今日は少し遅くなっちゃったし、近道して帰るか・・母さん煩いしな・・・』


平均的な僕の母さんは、やけに教育熱心で全てにおいて平均的な僕を心配している。

『あんたみたいな呑気な子、1度置いて行かれたらお終いよ!何でも頑張って、上を目指すのよ!?』


それが母さんの口癖・・・平均より少し秀でた父さんは少し秀でた営業マンで、母さんよりは親身になって僕の事を考えてくれている。


『何かやりたい事が出来たら、それに集中してみろ。スポーツでも何でも・・絵を書くなんてのも良いかもな。』


やりたい事・・・それが分かれば苦労はしないし、勉強なんてしたくない。でもする事が無いから、勉強している僕は小さな路地に入って行った。


薄暗い湿った道を駅に向かい歩いて行く。
車も人も殆ど通らない道を、俯きながらテクテクと歩き続ける。交互に出される足を眺めながら、何となく“おもちゃみたいだな・・”と思っていた――。


『・・うゎ!』


急に差し出された足を避けようと、繰り返していた動きにブレーキを掛けた。しかし、そんなに都合良く止まれる筈など無い・・僕は其の見事に古典的な罠に、いとも容易くかかってしまった・・・。

まるでスライディングする様な豪快な転び方に足をかけた方が驚いていたが、直ぐに気を取り直し古典的な台詞を僕に投げる。


『痛てぇなあ・・・何処見て歩いてんだよ!?足、折れちゃっただろうか・・!!』


服に付いた泥を落としながら、急いで立上がりカバンを抱え込む。廻りを見て逃げ道が探すと3人に囲まれている事に気付く。


『あれ?何こいつ?シカト?・・腹立つ〜。』


言い掛かりだって分かっていても、反論すればしたで更に絡まれる。こんな時でもそんな事を呑気に考えてしまう。黙って言う事を聞いてしまえば怪我もしない・・・男としては最低な、卑屈な対応に我ながら苦笑が出る。


『何こいつ?何ニヤけてる訳?馬鹿にしてる?』


僕の顔を見て1人がそう言った。途端にもう1人が反応する。


『ぅわあ〜傷付いちゃうよなぁ〜そう言う態度。お前さぁ、態度悪いよ?』


一歩下がり頭を軽く下げる・・・僕を取り囲む男達も一歩近付く・・
《あぁ・・そろそろ始まるかな・・?》
そう思い覚悟を決めた時・・・僕の左横からハスキーな女の子の声が聞こえて来た。

『へぇ、随分くだらない事してんじゃなぁい?』


驚き振り向いた僕達の目の前に1人の女の子が立っていた。
肩までの黒髪を指先で弄りながら、口元に微笑を浮かべ真っ直ぐにこちらを見ている彼女はからかう様に言葉を続けた。

『て、言うか・・・多勢に無勢って卑怯じゃない?それにはっきり言って、今時こんな事する人未だいたんだって感じ?』

からかう様に言いながら、僕の傍迄近付いて来た。あまりにも堂々とした態度に男達が絡んで行く。

『彼女、何な訳?こいつの知り合い?』

『つーか、あんまり言いたい事言ってると泣かすよ?』

男の一人が彼女の手を掴み掛けた時、僕は反射的に其の男の手を払い除けていた。驚いた顔の彼女と、怒りに満ちた男の顔が両方目に入って来た。実際自分でもかなり驚いた。適当に流れていれば良いと思って生きて来た自分が、人を庇う様な行為をする事が意外だったからだ。まして女の子を庇うなんて、普段の自分なら絶対にしない事だった。だが案の定男達が声を荒げながら僕に迫って来た。

『何すんだコラァ!女が出て来たからって格好つけてんじゃねぇぞ!?』

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