<;丶`Д´>紐育 につく 通り 入口以前


□「Pacific Ocean Blue」(さる作)
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抜ける様な蒼い大空、太陽光で色の変わる碧の海・・・照り付ける太陽とは裏腹に、爽やかに吹く海風がベランダに佇む僕の頬をかすめて部屋の中へ吹き抜ける。
日常から抜け出し何時もとは違う世界を見詰める時・・僕は改めて感じる。
世界には秩序を守る神が必要だと言う事を・・・・。

『竜崎、早く来てみろよ。眺めが良いぞ。』

僕は振り向き未だにベッドから出て来ない竜崎に声を掛けた。人の形に盛り上がったシーツは初めは動こうとしなかったが、少しの間を置いてモソモソと動き出す。

『・・・折角沖縄まで来たのに、ずっとそうしてるつもりなのか?良い天気だし、散歩に行かないか?』

もう一度話し掛け、ベランダの手摺りに寄り掛かる・・・そう・・・此処は沖縄だ。何故こんな所にまで来たのか・・・理由は竜崎の何時もの気紛れが発端だった。

『・・・退屈ですねぇ・・・』

愛用のPCを目の前に、頬杖をついた竜崎がそう呟いた。

『何だよ・・急に如何したんだ?』

事件ファイルを片手に持ったままの僕は、怪訝そうな声で思わずそう問い掛けていた。それは廻りに居た松田さん達も同じで、皆動かしていた手を止めて竜崎の答えを待っている。

『何って・・・言った通りですよ?捜査も行き詰まってますし、気晴らしにでも行きたいなと思いまして・・・行きたくないですか?』

あっさりとそう言ってのける竜崎の言葉に更に険しい表情になる僕・・それとは裏腹に嬉しそうに松田さんが、目を輝かせながら答えた。

『良いですね、行きたいですよね!・・蒼い大空・・綺麗な海・・おいしい食べ物・・最高ですよね!?』

『松田・・・』

相沢さんが呆れた様な声でそう呟いた・・・気持ちは直ぐに理解出来た。

“何を馬鹿な事を言ってるんだ!竜崎の気紛れ言葉を真に受けるな!?”

言わなくても理解出来る位に露骨に顔に出しているのに、それを全く気にしない松田さんは更に言葉を続ける。

『梅雨明けはあっちが先ですし、行くとしたら今ぐらいが混まなくていいんじゃないですか?ねぇ、局長!?』

『うん?あ、あぁ・・そうだな。』

・・・人の良い父さんが松田さんの勢いに負けて、つい間抜けな答えをしてしまう。疲れているせいもあるのかも知れないな・・・父さんは誰よりも熱心に取り組んでいるしな・・・。松田さんのあまりにも極端な喜び様に、言い出した竜崎も困惑気味だ・・・もしかして・・・言ってみたかっただけなのか?一瞬・・沈黙が辺りを包んだ。

『宜しいのではありませんか?』

気まずい雰囲気の室内に、ワタリのそんな声が響いた。驚いて振り向いた視線の先には、紅茶の入ったポットと竜崎愛用のティーカップ……それと竜崎の好きなお菓子を黒いトレーに乗せ佇むワタリの姿があった。驚く僕達を余所にワタリは優雅に歩いて行き、お茶を竜崎の座るソファの前に静かに置いた。

『どうぞ・・・本日は“プリンス・オブ・ウェールズ”でございます。』

意外な事に言い出しっぺの竜崎ですら、ワタリの発言に驚いているらしく言葉がでないらしい。若干怯えている様に見えるのは気のせいだろうか・・・?

『先程の竜崎の発言ですが、もしも行かれるのでしたら皆様の分も手配致しますが・・・如何されますか?』

『うわぁ・・本当ですかぁ!行く、行く、行きます・・・行かせて頂きます!?楽しみですねぇ、局長!!』

はしゃぐ松田さんをしり目に、父さんは慌ててワタリに問い返した。

『し、しかし・・・我々は今大事な局面に来ていて・・・ここで捜査を中断するなど・・・・』

『ご意見は御尤もで御座います・・・しかし、お聞きの通り竜崎の要望ですので行かれるのが宜しいかと。』

・・・・何だか様子が・・・何時ものワタリの物言いじゃないな・・・もしかして・・・怒ってるのか・・・?僕のそんな疑問に答える様に、ワタリは言葉を続けた。

『ここ最近の停滞続きで竜崎も何時もの様に捜査に集中出来ないようですし、ここで気分転換をして頂くのが得策です。貴方方が行ってらっしゃる間は私が雑務整理をしておきますから、お帰りになり次第捜査を再開されれば宜しいでしょう?そうですね・・・竜崎・・・?』

こころなしか声がワントーン低いワタリの声に、怒られて尻尾の垂れた犬の様な表情の竜崎が上目遣いでワタリを見詰め答えた。

『・・・はい・・そう・ですね・・じゃ・・・・直ぐに支度しましょう・・・。』

あれ?もしかして竜崎・・・・本気で行く気は無かったのか・・?
ただ単に退屈凌ぎに言ってみただけの言葉が、ワタリには真面目にやる気が失せた様に聞こえた?(←まぁ、半分はやる気は無くなってたかも知れないけど)・・・墓穴を掘った訳だ・・・僕達も巻き込む位巨大な墓穴を・・・―――。

『直ぐに航空機とホテルの手配を致します。階下にてお待ち下さい・・・準備が整い次第空港までお送り致します。』

ニッコリと微笑み行動を起こすワタリとは裏腹に、暗い表情の竜崎は大きく溜息をつくと其の侭項垂れてしまった。気の毒な感じもしたが、実の所僕は嬉しかった。
何故って?・・こんな男ばかりのビルに24時間詰めっぱなしじゃ誰だってそう感じるだろう?それじゃなくても手錠に繋がれたりしていたんだし、旅行なんて出来る訳が無いと思っていたから・・・竜崎には悪いけど、楽しませてもらうさ。

『なぁなぁ、ライト・・・沖縄って何だ?食えるのか?』

・・・・こういう事を聞いて来る死神のオマケ付だけどね・・・。そんな感じでバタバタと準備が進められ、納得しきれない父さんと竜崎・・はしゃぎ過ぎの松田さんと相沢さん・・僕と僕の説明に何処からか麦わら帽子を手に入れてきたリュ―ク(←勿論取り上げた)と言う変り種のメンバーは全て準備を整えたワタリに送られて羽田へと到着した。

『旅行なんて久し振りですねぇ、沖縄は天気如何なんですかね〜局長?』

『あ?あぁ・・・晴天だそうだ。・・・しかし本当に良いんだろうか・・・?』

『ん、もう〜〜局長、ワタリさんが行って来て良いって言ってくれたんですから楽しまないと!?』

満面の笑みを湛えながら松田さんがそう言う・・・嬉しいのは分かるがもう少し静かに出来ないんだろうか・・・?廻りが見るじゃないか!?ただでさえアロハシャツなんか着てきて目立つのに・・・!!相沢さんは相沢さんで、行く前からお土産は何にしようかってカタログやガイドブックから目を放さないし・・・子供がいるから仕方が無いのか?
そして肝心の竜崎は・・・・・。

『竜崎・・・』

『何ですか?ライト君。』

『此処まで来て言うのも何なんだが・・・その座り方は無いんじゃないのか?』

・・・そう・・・相変わらずあの座り方で搭乗ゲートのベンチに座る竜崎は、ある意味松田より目立っていた。

『何故ですか?私はこの座り方じゃないと・・・』

何時もの回答が返ってきそうになったのを、僕は溜息交じりの言葉で止めた。

『はぁ・・・分かってるよ!思考力が低下するんだろう?・・・でも今は休暇に行くんだから、別にこだわらなくても良いんじゃないのか!?』

『そんな事を言うなんて・・・・貴方・・やはりキラなんですね?』

『何でそうなるんだ!』

思わず出た大声に、僕の方に注目が集まる。僕は立ち上がりかけて中腰になった姿勢を戻し、軽く咳払いをすると頭に手をやりながら目を閉じた。

“・・・落ち着け・・・落ち着くんだ・・・こいつは自ら墓穴を掘った愚か者なんだ・・・・その腹いせに僕をからかっているに違い無い・・・此処は冷静に対処して、軽くあしらうんだ・・・。”

そう考える事で落ち着きを取り戻した僕は、満面の笑顔を浮かべながら竜崎に話しかけた。

『大きい声を出してご免・・・僕も少しカリカリしてるし、この休暇をくれたワタリさんに感謝しなくちゃね?』

最高の笑顔と最高の決めポーズでそう言う僕を見て、感動と反省をするべき竜崎・・・・は、何時の間にか搭乗開始したゲートに移動し僕に向かって手を振っていた。

『ライト君〜〜置いて行きますよ〜〜?』

『人の話を聞け――――!?』

意気揚々と松田さんと肩を並べて機内へと消えて行く竜崎の背中に向かい僕はそう叫んだ。
早まるな・・・・早まるんじゃないぞ、僕!だからノートをしまうんだ!?
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