<;丶`Д´>紐育 につく 通り 入口以前


□「GIVE ME UP! - Michael Fortunati - 」(さる作)
1ページ/1ページ

今日も日向家の地下では、ケロロ軍曹率いるケロロ小隊メンバーが元気に会議中・・・の筈なんだけど、何やら室内は険悪ムード満載のご様子・・・・。
ギロロ伍長は相変わらず眉間にしわを寄せてますが、今日はそれに貧乏ゆすりが付いてますね。かなりご機嫌は斜めな様子。
タママ二等兵はと言うと、大好きなお菓子も不味くなるのか、今日はわりと少なめな量をぼそぼそと口に運んでいます。
クルル曹長は・・・・余り変化は見られませんね。常日頃からこんな感じの方ですしね。むしろ寝ている可能性大です。
ドロロ兵長はいるかな?・・・・・あぁ、いましたいました。今日は珍しく参加していますが、予想通り余り気にして貰えない様子・・・半分トラウマの闇に消えかかってますね。

そんなメンバーの様子を見ながらも、ケロロ軍曹は相変わらずのお調子振りを発揮します。

『・・・・つ―――訳でぇ、今回の作戦には体力派のギロロとタママが不可欠なんであります!・・・・って、ちょっと―――!あんた達聞いてんの―――!?』

やかんのお湯が沸いた時の様な音を頭から出しながら、軍曹は皆にそう怒鳴ります。その声にしぶしぶと返事をするのは、軍曹さんLOVEなタママ二等兵です。

『・・・・んん〜〜〜でも軍曹さぁん、この作戦だとぉ僕と伍長さんだけが働く事になりませんかぁ?』

その問い掛けに待ってましたとばかりに、軍曹が目を輝かせながら答えます。

『あいや、タママ二等兵!その辺はご心配めさるなであります!? タママ達はあくまでも誘導組・・・・メインの攻めは残りの3人に任せるでありますよ!! 』

『ほう・・・・聞かせてみろ・・・。』

こめかみを引き攣らせながら、ギロロ伍長は軍曹に話の続きを促します。幼馴染ならではの勘が、何かを伝えたのかも知れません。

『よくぞ聞いてくれました!まず〜〜タママとギロロがこっちの方で我等が宿敵、夏美殿を甘〜〜いお菓子と言葉で誘惑。その時・・冬樹殿には新品のUMA雑誌を与え、気を逸らしておくであります。睡眠薬入りのジュースで夏美殿を眠らせ、ゴリラでも開けられない頑丈な檻にて拘束・・・戦力を奪うのであります!?』

『へぇ〜〜〜えげつねないねぇ〜〜〜ククク〜〜〜。』

『この後、2人は夏美殿が暴れ出さない様に監視・・・ドロロ兵長は、夏美殿を救出するやも知れぬ小雪殿の目を逸らす為に一役かってもらうであります。』

『な・・・!其の様な事拙者がやると思うでござるか?』

真面目で友達想いのドロロ兵長は、強い口調でそう断ります。すると言葉に軍曹の隊長魂が燃え上がりました。

『こぉの馬鹿ちんがぁぁぁぁぁ!?』

いきなり立ち上がると、目にも留まらぬ速さでドロロ兵長に平手を食らわせました。

『あぅぅぅぅぅ・・・・酷いよ、ケロロくぅん・・・・』

予想を超えた軍曹の素早い動きに驚きながら、ドロロ兵長はスローモーションの様に空を舞いそう呟きました。その行動に驚いたのはドロロ兵長だけではありません。クルル曹長やギロロ伍長、タママ二等兵も目を丸くして見守ります。って、見守るだけですか!

『我々が地球に来た目的を、よもや忘れた訳では無いでありましょうな―――――!?』

燃える闘魂並に燃え上がる野望を背に、拳を握り締め熱弁をかます軍曹は更に畳み掛けるように言葉を続けた。

『我輩だって・・・我輩だって、辛いんであります。こんな我輩を受け入れ、家族同然に扱ってくれる夏美殿や冬樹殿を裏切るんでありますからな・・・しかし・・・これは我輩達に課せられた指命、私情を挟む事は出来ないのであります・・・。我輩だけじゃないであります!タママだってギロロだって、多分クルルだって割り切れない想いを胸に任務に当たるんでありますよ!?・・・・それを・・・それをぉ―――!! かぁさん、情けなくて涙が出るわっ!?』

急に女装姿になり涙ながらにドロロ兵長に詰め寄る軍曹の姿に、何故か胸を打たれたギロロ伍長とタママ二等兵は涙を浮かべながら賛同し始めた。

『くぅ・・・・ケロロ、お前そこまで考えていたのか・・・!』

『軍曹さん!・・・僕、感動したですぅ!? 僕はこの任務に命を懸けるですぅ!!』

『ギロロ・・・タママ・・・!我輩、感激であります!?』

よくある青春感動物の如く、キラキラと輝く涙を
宙に舞わせ駆け寄る3人・・・・そこで終われば正に感動物かも知れませんが、そうは問屋がおろし大根。クルル曹長が背後からそっと軍曹に近付きポツリと呟きます。

『・・・で?・・・本音は・・・?』

『本当は皆を使って夏美殿にギャフンと言わせて〜〜、我輩は指揮を執りつつガンプラ三昧ぃ?』

軍曹がそうこぼしたその瞬間、まるで魔法でもかけられたかの様に凍り付く3人・・・・軍曹からは滝の様な汗も流れ始めました。
直ぐに事態を飲み込めないのか、ギロロ伍長がゼンマイ仕掛けの人形の様にぎこちなく動きながら軍曹の顔を覗き込んでいます。それに危機感を感じたのか、軍曹は言葉を濁し始めました。さて・・・逃げ切れる事が出来るのでしょうか!?

『う・・・・あの・・・・えと・・・・今のは言葉のあやで・・・・要するに、皆でやれば怖くないと言うか・・・・ねぇ?クルルゥ〜〜?』

何を思ったのか、窮地に追い込んだクルル曹長に助けを求め始めました。するとクルル曹長は、待ってましたとばかりに嫌な笑いを浮かべながら答えます。

『ん〜〜〜?あぁ・・・そうそう・・・“どうせやるなら楽したいよね〜〜〜”とか言いながら作戦だもんな・・・・ばれた所で何も怖くねぇだろ?・・・ク〜〜〜ククク・・・。』

何とも言えない嫌な空気が流れ、軍曹の汗も更に干乾びるのではないかと思う位流れ出す。背後に流れる太陽の如く熱い空気は、恐らくギロロ伍長から漂う怒りのオーラであろう・・・・。
最早言い訳が通じる段階は遥か遠くに流れ去り、この先に見える自分の運命に軍曹は恐怖した。

『なぁんだぁ〜〜〜も〜〜〜!やっぱり何時もの軍曹さんですよぉ!?』

『そんな事の為に僕、ケロロ君に吹っ飛ばされたの・・・・?酷いよぉ〜〜〜。』

感動した分損した気持ちのタママ二等兵と、下心ありありの作戦を実行する為に軍曹にどつかれたドロロ兵長がこう反論する。すると軍曹は照れ笑いながらこう返します。

『え・・・・へへへぇ〜〜、まぁまぁ・・・ちょっとした思い付きでありますよ〜〜。ガンプラで遊んでて“夏美殿もこんな風に操れたらな〜〜”とか、“こんな風に閉じ込めて、その隙に征服出来ないかな〜〜”とか考えてて〜〜〜。』

『・・・・ほぉ・・・・・そんな良い作戦がどうして貴様が楽する作戦に変わったんだ・・・?』

ギロロ伍長の放出する熱気に火傷しそうだと軍曹は感じ、同時にかなりな身の危険を感じていた。どうにかしてこの怒りを治めなければ、飛び火として夏美からの怒りをも買う事になるかもしれないと思った。

『い・・・?そ・・・それがさぁ〜〜〜』

『・・・ぬぅわんだ!?』

この場はおちゃらけて場を和ませ、空気を軽くしようと言う作戦を取った軍曹だったがそれは虚しい行為だった。もともと気が真面目なギロロ伍長の怒りを増幅するだけ・・・つまり火に油を注ぐ行為になってしまったようだ。もうこうなるとどうにも誤魔化しようが無い・・・・追い詰められた軍曹は、逆切れを起こしながらギロロ伍長に0距離を決めた。

『あぅぅぅぅ・・・・・だ・・・・だってだって!ガンプラを皆に見立てて作戦を詰めてたら、何だかこのまま指示だけでいけそうだと思ったんだもん!? 大体ギロロは武器ばっかり磨いてて、作戦なんかひとっつも立てないんだから我輩の言う通りに行動すれば良いんでありますよぉ!!』

『なんだとぉぉぉ―――――!? だったらもっとましな作戦を立ててみんかぁ――――!!』

『なんですと――――!?』

どちらも引く事無く攻め続ける泥仕合に、自分達の怒りも吸取られたかのようなタママ二等兵とドロロ兵長は呆れてみているしか出来なかった。

『もうどうでも良くなってきたですぅ。』

『・・・拙者も同感でござる・・・。』

『ク〜〜〜ククク〜〜〜』

クルル曹長の笑い声にふと疑問が浮かんだタママ二等兵は、その問いをクルル曹長に投げかけた。

『そう言えば・・・クルル先輩、どうして軍曹さんの企み知ってたんですかぁ?』

『・・・そう言えばそうでござるなぁ。我々が騙されてしまったのに、曹長殿はどうやって見抜いたのでござる?』

その2人の問い掛けに、クルル曹長ははっきりとこう答えた。

『んぁ?だってそん時俺もいたからなぁ。』

『タマ?』

『え・・・?まさか・・・』

『隊長ってばよ〜〜煮詰まってたみてぇだから、ちょいと助言しただけだぜぇ〜〜〜?どうせなら楽しく、楽して侵略ってなぁ・・・まさか本気でやるとは思わなくてよ・・・クク・・・』

クルル曹長のその言葉に、2人は即座に“嘘だ・・”と思ったのは言うまでもない。その様子を又楽しげに薄笑いを浮かべるクルル曹長でありました。

『ええい!貴様本気で侵略する気があるのか!?』

クルル曹長達のやり取りをよそに、怒り収まらぬギロロ伍長が軍曹にそう問い掛けると自信満々に軍曹はこう答えた。

『やる気はあるが、楽はしたい!!』

その余りの言い切り方に血管が切れかかるギロロ伍長は、最後の理性と慈悲でこう聞き返した。

『・・・・・・そんな事が本気で出来ると思ってるのか・・・・?』

すると何の反省も無く、やはり根拠の無い自信に満ちた口調で返答した。

『そんな物は如何にでもなるであります。まったくギロロは心配性でありますなぁ〜〜〜。もっと気楽にいくでありますよ、ゲ〜〜ロゲロゲロゲロ!?』

もはやギロロ火山大噴火も秒読み段階になり、3人が避難し始めた事に気付かずに高笑いする軍曹・・・・彼が心から反省し、侵略を果たす日は本当に来るのでありましょうか・・・?取り敢えず、現在の彼では難しいとしか言えないですね。

『くぉぉぉの・・・・大馬鹿者ぐぁぁぁぁ!』

今出せるあらゆる武器を取り出し、一斉照射をしながらそう叫ぶギロロ伍長・・・・それを目の当たりにし、逃げ惑う軍曹でありました。       《完》

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ