<;丶`Д´>紐育 につく 通り 入口以前


□「゚・:*☆〓 You're My Only Shinin' Star 〓☆*:*゚」(さる作)
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――――俺は今日と言う日を決して忘れる事は無い――――。



春まだ浅い午後・・・・朝から街を濃い霧が包んでいた。その白く煙る街並みの一角・・・悲しみに満ちた鐘の音が静かな空に響き渡った。

『わああああ・・・・ロマーリオ・・・ロマーリオォォ・・・・』

まだ小さな棺に縋り、主の名を叫ぶ母親らしき女・・・・その嘆く姿に悲しみを募らせる人々・・・・・神父はその嘆きを和らげるべく、清らかなる音色を語る。

『神よ・・・・未だ幼きこの者の御霊が、貴方の元で安らかである様に・・・・また残された者達の悲しみが少しでも癒されます様に、我等道に迷いし子羊達を導き給え・・・・・』

黒く悲しみに染められた衣装に身を包み、輝かしく光る十字架を胸に抱きながら彼は空に向かい印を打った。母親はその行為を涙に濡れながら、ずっと・・・言葉も発せずにただ見ていた。褐色の瞳は常に涙を湛え、まるで悪い夢を見ているかのように蒼褪めた彼女は、父親や老いた母の手によって棺から遠ざけられる。

『・・・・う・・・うぅ・・・・』

最早口を開く者は無く、この霧の様に纏い付く悲しみに誰もが身を任せていた・・・ただ一人を除いて――――!

彼は無言で其処に立っていた。時折濃くなる霧のせいで、葬儀も人の姿すら見えなくなっても・・・彼は眼を逸らさずにジッと見詰め続けていた。
金の髪が霧に濡れ・・・寒さに震えながらも、彼は其処から動こうとはしなかった。やがて時が過ぎ、人々が悲しみを背負ったまま家路に付いた頃・・・・彼はゆっくりと歩き始めた。
綺麗に切り揃えられた芝生が、その歩みに添い微かな音を立てる。まるで早過ぎる死を哀れんでいるかの様な調が、耳に幾つもの罪重ねた彼を責める様に響き渡った。

何時しか彼の姿は小さな墓前の前に立ち、止めど無く降り敷きる雨の雫の中・・・その姿さえ消えそうになっていた。
やがて彼は呟く様に小さく声を発した。

『よぉ・・・お前のおかげであの辺りは俺達が取り仕切れる様になったぜ・・・もう・・・大人達に怯えなくても良くなって、これから色々とやって行ける様になったんだぜ・・・?』

彼のその言葉に応える者は無く、白く滲む十字架がただ存在しているだけだった。廻りに飾られた悲しみの花々は雨に濡れ、徐々に色を失っていくようだった。彼はその花々の中跪くと、小さな花束を添え小さく十字を切った。

『・・・・俺は神なんか信じちゃいないが、今日だけはお前が安らかであるように願う・・・・全ての罪は俺にあると・・・・。』

そこまで呟くと彼は微笑を浮かべ、そのまま街の中へと歩み始めた。その時・・・彼が浮かべた微笑は、まるで今にも砕けてしまいそうなほど透明で悲しげな物だった事は銀の雨だけが見ていた・・・・。
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