<;丶`Д´>紐育 につく 通り 入口以前


□「 ☆★ Moon and Sun ★☆ 」(さる作)
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『2人ってさぁ、何だか月と太陽みたいでありますなぁ〜。』

不意に言った隊長の言葉に、俺達は驚いて目を丸くした。

『? それはどう言う意味だ?』

何故か訝しげに問い返すセンパイは、眉間にシワを寄せていた。大概ああ言う時は、隊長が良からぬ意味で言っていると考えている筈だ。
隊長自身もセンパイのそれを知っているせいか、露骨にそんな顔しなくても・・・と言う表情を浮かべ言葉を続ける。

『・・・いや・・・別に体色がそうだとか、ギロロが暑苦しいとかクルルが暗いとか言ってないでありますよ?ただ・・・!』

『・・・・ほぉ・・・・そう思っていたのか・・・・。』

隊長の言葉が癇に障ったのか、怒りの表情を浮かべバズーカを隊長の顔面に押し当てながらセンパイがそう言った。

『あわわわ・・・・・いや・・・その・・・まだ続きが・・・・。』

一瞬俺も怒りかけたが、まだ何か言いたそうな隊長が気になり一先ずセンパイの方を止める事にした。ま・・・武士の情けってやつかな・・・。

『まぁまぁ・・・センパイ・・・怒るのも分かるけど、取り敢えず最後まで聞いてやろうぜぇ〜〜?』

『あぁ!? 何故だ!!』

振り返り不機嫌そうにそう言うセンパイは、俺をキッと睨み付ける。そんな顔も良いねぇ・・とか思っている事は言わず、俺はウルウルとした眼で見ている隊長を一瞥しながらこう答えた。

『やるにしても言い訳位は聞いてやろうぜぇ〜〜?俺も協力するからよ・・・。』

『ちょっと―――――っ!?やる気満々な訳―――――!!』

隊長のそんな雄叫びを他所に、俺はセンパイの顔を覗き込み返事を待った。
センパイはそんな俺の顔を見て、何か思案している様子を見せ・・・一瞬後に小さく溜息を付き俯いた。その僅かな動作も俺を惹き付けるには充分過ぎる・・・・。確かに俺とセンパイは月と太陽の様だ。月は太陽に焦がれ、太陽はその存在を月に知らしめる・・・満月期の僅かな時間・・・・朝と夜の境界でしか俺は太陽の姿を見る事が出来ない・・・・。
近くて・・・遠い存在・・・・。

『・・・・分かった・・・・。言っておくがくだらないと判断したら、直ぐにでも撃つからな・・・?』

静かにそう告げるセンパイは、一瞬俺に笑って見せ直ぐに隊長を睨み付けた。本当に、唇を少し上げただけの微笑。それがこんなに嬉しいなんて、昔の俺が見たら砂でも吐きそうな位甘い想いだな。

『まぁったく、物騒な奴であります!』

ブツブツと文句を言いながら、隊長が話の続きをし始めた。
それは俺の・・・そして恐らくはセンパイの予想とはかなり違う話の内容だった。

『んん・・・・ゴホン!・・・・えっと〜〜〜要するに我輩が言いたかったのはぁ、クルルが太陽でギロロが月みたいだって言いたかったの!?』

驚き声も出ない俺達を他所に、更に話を続ける隊長の顔は何故か勝ち誇った様な表情だった。

『ギロロってさ〜〜あ、普段は暑苦しい・・・じゃなくて、何でも一生懸命で人一倍頑張るでしょ?でもその割に目立ちたがらないつうか目立たない、どっちかって言うと縁の下の力持ち的じゃない。それとは逆にクルルって見た目オタク〜〜って感じ?・・・中身も若干・・・相当・・・・と、兎に角そんな感じの割には行動派だよね。体力無いから頭脳労働でだけど、小隊の中で一番存在感あると思う訳・・・良い意味でも悪い意味でもだけど。タママとか我輩もそこそこやってるけどそこまでじゃないしドロロは論外だし・・・・言わば我輩達が地球でギロロが月・・・クルルが太陽・・・・んで、上手くいってる感じがするなぁと・・・・。』

・・・・・俺が?・・・・太陽・・・・??隊長の言ってる意味がいまいち分からない俺は、直ぐに反応を返す事が出来なかった。
だってそうだろ?隊長の言っている言葉は、自分が考えている事とは全く逆の事だったんだから理解出来なくて当然だ。
だけどセンパイは意外に反応が早くて、一呼吸も置かない内に隊長の顔に再び銃を付き付けた。

『・・・・あのっ・・・ギロロさん・・・』

滝の様な汗を流し、手を上げる隊長にセンパイはにこやかにこう告げる。

『そうか。お前は俺達をそう評価したのか。うん・・・・別にそれはそれで良いんじゃないのか?お前の考えだしな・・・・だが・・・・!?』

『ひっ!!』

怒りを露にしながら、センパイは隊長の顔に思い切り銃をめり込ませた。

『自分達は地球だと・・・・・・?未だ侵略も進まず・・・・毎日遊んで暮らす貴様は、気分だけはもう侵略済みな訳か・・・?』

『いやいやいや・・・そそそそそそうじゃなくて〜〜〜〜物の例えでありますよぉ〜〜。』

隊長の慌て振りから想像するに、少しはそう言う気持ちが含まれていたらしい・・・流石は幼馴染み・・・良く分かってるぜ・・・。

『ほう・・・・物の例えか・・・ふん・・・だったらその戯言を実現するべく、さっさと新しい侵略作戦を考えてこんかぁ――――!!』

『あ――――――っ!?』

銃を乱射しながら隊長を追い遣るセンパイ・・・その表情は今は見えない・・・・。
いったいセンパイは如何思っただろうか・・・?
俺は如何感じているんだろうか・・・・?
自分じゃ分からない・・・自分の事を考えるのは苦手だから・・・・・。
毎日を面白おかしく、退屈しない程度に・・・そう思う事は簡単なのにな・・・。そんな風に考え込んでいると、センパイが背中を向けながらではあるが話し掛けて来た。

『クルル・・・今のケロロの言葉なんだが・・・。』

『んあ?あぁ・・・なぁに世迷い事言ってるんだかなぁ〜〜〜?有り得ねぇっつうの・・・ククク〜〜〜。』

俺は直ぐに言葉を返し、センパイの言葉を遮った。
何故かは良く分かっている・・・こんな事だけは直ぐに理解出来る・・・・否定されたくないのだ。事実と違う事だと理解はしていても、センパイからそれを聞きたくないのだ。
そんな気がなくても、自分の存在を否定される様な気になるから・・・・センパイには言って欲しくない。馬鹿な理由だ。
自分のそう言う所が大嫌いだ、こんな俺が太陽である訳無い。くだらない!

『・・・・俺も・・・・そう思うぞ。』

『え・・・?』

タイミングが悪いのはセンパイのせいではないが、今の“そう思う”はどの部分にかかるのか俺は分からなくて妙な声を出してしまった。
センパイはその返事が自分に対して“何を言ってるんだ”的に聞こえたらしく、ムッとした様な顔で俺を睨み付けた。

『だから!俺もお前が太陽の様だと言ったんだ!?何か文句でもあるのか!!』

『にょ?いや・・・無いけど・・・え??』

もう何がなんだか分からない!
何でそんな事をセンパイが言うのかも、何でこんなに胸が痛いのかも、何でセンパイの顔が何時もよりも赤いのかも・・・・。
俺の超間抜けな返事に、センパイは切れそうになったらしい。しかし思い切り目が合った途端に口篭り、照れた様に視線を逸らすとゆっくり話し始めた。

『・・・・その・・・・お前は自分がそう言う存在じゃないと言うかも知れんが、お前は本当に良い意味でも悪い意味でも人を惹き付ける・・・・と思う。俺も・・・・その・・・惹き付けられた1人なんだろうな・・・。危険で・・・近付く事により己の身に危険が及ぶと分かっていても、近付かずにはいられない・・・・虫が灯りに惹かれるのと同じ様に、皆お前に惹かれるんだ・・・俺は・・・ケロロが言った通り、目立つのは好かんし・・・・未だお前に見せていない汚い部分もある・・・・お前と言う太陽に焦がれ、その影に寄り添うには似合いだがな。』

苦笑するセンパイに、俺は否定的な言葉を投げかけた。

『何言ってんだよ、そんな訳ねぇだろ!・・俺が・・・・俺が太陽みたいに・・・冗談も休み休み言えよな!?・・・馬鹿じゃねぇ!!』

そう言って顔を背けた。
顔を見られたくなかった。
泣きそうだったから。

最初・・・・センパイは何も言わなかった。ただ困った様な・・・・戸惑っている様な・・・そんな感じだけは伝わって来た。もしも・・・・もしも俺がセンパイの言う通りだとしたら、俺はただ燃え盛っているだけ・・・近付く奴を総て焼き尽くし、傷付ける。今迄ずっとそうしてきたから―――!?

俺のそんな戸惑いを感じたのか、センパイはゆっくりと俺の横に歩み寄り・・・柔らかく言葉を掛けた来た。

『クルル・・・・?』

その声が嬉しくて又泣きそうになる。こんな風に歩み寄ってくれるのは、誰もいなかったから・・・・。

『・・・・んだよ・・・。』

強がって、そんな返事をしてみる。

『・・・優しいな・・・。』

クスリと笑いながらそう答え、俺の手にそっと手を添えて来る。温かさが伝わる。

『・・・気のせいだろ・・・』

やっぱり強がる俺の顔を見ない様に、背中合わせに寄り添うセンパイ・・・。
何と無く、隊長が言いたかった事が理解出来た気がした。

月と太陽は背中合わせ
見えないけれど、常に共に在る
目の前の闇は深いけれど
背中にある温もりが、その存在が心を支える

月が太陽の闇を照らし
太陽が月の闇を照らす
温もりを残して

優しい温もり・・・時に増す輝き
それは月の満ち欠けに似ている
そんな事を考えた

『・・・格好悪ぃ・・・』

馬鹿だな・・・と笑うセンパイ
また胸が高鳴る
太陽は月に焦がれ続ける―――――。       《完》

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