kira事件、特別捜査本部・二千五◯一号室


□「OWNER of Lonely Heart」(さる作)
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この世は醜い物ばかり。真実を貫き通そうとすれば悪意が黒く塗りつぶす・・。僕は、どんな事も曲げずに生きてきた。どんな時も、正しい事を正しいと言い続けてきた。時々暴力を振るわれたりもしたけれど、絶対に負けなかった。先生や友達も褒めてくれるのが誇らしくて、母さんも少し困り顔はするけれど優しく手当てしたり頭を撫でてくれた。だから僕は真実を貫き通せる人に、職業に就こうと決めたのに・・・。

暫くして中学に進むと周りの態度がおかしくなり始めた。僕の行動や言動に何も変わりは無いのに、僕を取り巻く人間達はどんどん変わって行った。護ってあげていた子や友人、挙句に母さんまでもが僕を否定し始めたのだ。

「お前に係わると自分も目を付けられるから・・」

「助けてくれなくても良いよ!君のせいで余計馬鹿にされるじゃないか!!」

「・・・思い道理に事が進むなんてあり得ない。だからもう止めなさい。」

・・・・!? 何なんだ! 僕は一度も間違えてないぞ!! 僕の築き上げてきた嘘の無い綺麗な世界が、汚い考えの人間達に踏みにじられて行く。それとも周りの人間が言っている事が正しいのか!?僕のして来た事は無駄だったのか・・・真実は・・・!?

答えは意外に早く訪れた。僕の周りの汚い物が一掃される瞬間がやって来たのだ。人間と言う汚物であるその存在がただの肉塊に変わった時、僕の身体は歓喜に震えた。

“僕は間違っていなかった。神は見ていたのだ。理不尽な事を言う者を排除してくれたのだ。”

そう、確信した。僕のしていた事はやはり正しかったのだ。その日を境に又平穏な日々が訪れ、僕は夢に向かって再び歩み始めた。時々に起こる理不尽な事も積み重ねられて行く知識を駆使し幾らでも対抗出来る様に自分自身にも力をつけて行った。自分の夢の為の予行練習と思えば何の苦も感じなかったし、より良い世界を築き上げる為には必要な事と分かっていたからだ。・・・しかし、長い年月を重ね世の中の仕組みを知れば知るほど世の中が腐っていて、綺麗な人間が苦しむ様に出来ているのが分かって行った・・・孤独だった。正しい事を伝え様とすれば必ず横槍が入る。あんなになりたかった仕事も、今は虚しく感じる・・・心は虚ろで孤独だけが自分を占拠して行くのを感じる。くだらない人間の蔓延る腐った世界・・・息をするのも汚らわしい・・神様、あの時の様に私を救って下さい。いつ届くのか分からない願いを祈り続けた。この孤独な神の御使いを解き放つ輝きを待ち続けた。
長い時を、息を潜めて・・・―。


― そして、それは唐突に現れた ―


“キラ”と名乗る本当の裁きを下す者が、今まで汚い手を使い有罪を無罪にした罪人、証拠が無く逮捕出来ないでいる罪人、自惚れに凝り固まったエリート・・ありとあらゆる場面で、正しい裁きを下し、この世の汚い物から守る“神”が舞い降りたのだ。私は歓喜に身を震わせた。今まで私が有罪と思ってきた物全てが一掃されたのだ・・・やはり“神”は居て耐え忍んでいた哀れな子羊を救いに来てくれたのだ・・・。それからの私は“キラ”関するありとあらゆる記事を読んだ・・・素晴らしいと思った・・何時か御目にかかれる日が来るだろうか、御目にかかれずとも私の存在に気付き、一言お声をかけて下さるだろうか・・・そんな事ばかり考える様になった。まるで恋焦がれる娘の様に一日の大半を“キラ”に思い巡らせた。
どんな存在なのか・・その御心のままに美しい方なのだろうか・・・悪に一人で立ち向かわれる心の強い神々しいその姿を想像するだけで私は、得も知れぬ快感をこの渇き切った身体に感じる事が出来るのです。貴方は私の孤独な心を満たして下さる主。我が“神”よ・・!何時かこの僕の存在に気付き、使命をお与え下さい・・・必ず、貴方の為にお役に立って見せます。・・・愛しています・・・私の“神”・・・私の魂の主・・・“キラ”
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