kira事件、特別捜査本部・二千五◯一号室


□「十六夜・1」(さる作)
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「女性が食事している姿はとてもエロティックとだと思いませんか?」

突然奴がこう切り出した。・・・いつも唐突に話題を振って来るが、今日の内容は菓子を食いながらする話なのだろうか・・・?答えを待っているのだろう、奴は黙ってこっちを見ている。僕は仕方なく話に乗ることにした。

「それは、欲望の対象として見ているからじゃないのか?僕はそう言う風に見た事も、思った事も無いよ」
「貴方は童貞なんですか?それともゲイ?」

少しの間も置かず、奴がこう切り返してきた。その言葉に思わずティーカップを落としそうになるが、どうにか堪え奴の顔を見た。表情は変わらない・・・何を考えているんだ・・?

「どうしてそう言う考えになるんだ?別に未経験でも無いし、ましてゲイでも無い。ただ、そう見た事が無いと言っただけじゃないか・・・じゃあ、逆に聞くが君はそう思ったり感じたりしているって事なのか?」
・・・奴は一瞬こちらの顔を見つめ、考え込むかの様に下を向き指を噛む。好物のチョコレートを食べずに考え続ける姿は滅多に見られる物じゃないな・・って言うか食べなくても考えられるんじゃないか!まったくコイツは・・・まぁ、答えが出るまでの何分間かは話さなくて済むし待っていてやるか。僕はそう思い一口紅茶を含んだ。暖かい物が喉の奥へと流れていくのを感じ、ほっとする。
ふと思い、窓辺へと近付き眼下に広がる風景に目をやる・・・良い天気だ・・・街を歩く人々も秋の穏やかな一時を感じながら過ごしているのだろうに、何故コイツと二人きりのティータイムを過ごさなければならないのか・・・考える事すら虚しく、ふっとため息をつき思考を止め、街を見続けて奴が話し掛けてくるのを待つ事にした。
・・・誰も何も音を発しない時間がどれ位続いたのだろうか・・・ふと我に還る“まだ考えているのか?こんな事、奴らしくも無いな・・・”そう思い、視線を奴の方に移すと奴はじっとこちらを見つめていたらしく、待ちわびた様に口を開いた。

「貴方は綺麗ですね」

今度はティーカップを落とした。奴はそれを見て立ち上がり“止まれ”と言う仕草をする。

「危ないですから、動かないで下さい。」

そう言って足元の割れたカップを拾い始めた。まるで何に対してのリアクションなのか、事の意味を探ろうとしている様に語り始めた
「貴方が言った事の意味を考えていたんです。人間の三大欲に含まれている性欲、食欲、睡眠欲・・・これらは繋がりが無い様に見えて、実は身体の一番深い所で繋がっているんです。特に食べると言う行為はセックスそのものと考えても良いと思うんです・・・食材をどう言う風に手に入れ、どう料理し、どう食するか・・と考える事と、相手をどう扱い、どう愛するのか、どの様に愛撫し、どう満足感を味わうかと考える事は似ていると・・・だから、そう考えると女性の食事する姿はある意味エロティックだと思うんです。つまりエロチシズムの上での見解ですね。だが、貴方は男女間の認識の上でそう判断しているのかと言う・・では、そう言う意味では自分はどうなのかなと考えていましたら存外に難しくて考えがまとまらなくて困ってしまいました。それで、最初は“解らない”と言うつもりで貴方を見たんです。でも、貴方の横顔を見つめているうちに答えが出たんです。」
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