京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二
□「ANGELUS - ァンジェラス - 」(さる作)
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こんなツマらない事ってマジで有りやがるのかと、切れた唇から流れ出た血を震える手で拭い取る。今・・俺の置かれた状況は最悪で、味方は頼りにならない科学者ばかり。目の前の敵はどいつもこいつもやたらと身体がデカい頭の悪そうな連中で、大方俺達が運んでいた研究データを狙った奴等が雇ったんだろう・・・ククク・・・自分の手を汚さずに美味しい所だけ頂こうとする辺り気が合いそうだが、やり方が不味かったな・・押し込んだは良いが、研究所の奴等の反応が意外に素早くて逃げ場を失っちまった。焦る奴等はお決まりのコースに突入・・・人質取って立て籠もりってね・・ククク、洒落にならないのは素早く反応してセキュリティを作動させた奴を射殺した事・・・おまけに其を止めようとした俺を身動き出来くなる程殴り回しやがった。場所も悪かった・・・此の研究所はケロン軍の施設の中でも最南端の場所に存在し、背後は断崖絶壁・・遥か下に湖が有るが飛び込むには浅過ぎるだろう。飛行ユニットで行った所で、お互いの味方が区別付かずに撃ち落とす・・・実際・・救助に来た何人かのケロン軍人が撃ち落とされて、海ならぬ湖の藻屑となったのを見た。万事休すの此の場面に、更に追い討ちが掛かる。
『囲まれてるぜ。どうする?』
『あいつ等と連絡は取れたか!?』
『駄目だ!妨害電波が出ているらしい!?』
苛付きもピークに達し様としている奴等は、案の定俺達を怒りの捌け口に選びやがった。
『何だぁ・・?其の眼はぁ!?大体貴様等が余計な事さえしなければ、こんな面倒な事にならなかったんだよ!!』
・・・本気でそんな事考えてるなんて、マジで馬鹿だね。机や椅子を蹴飛ばしたりしてる奴等を見て、つい何時もの調子で笑っちまった。廻りの研究員達が慌てて俺を隠すが、あっさりばれちまった。
『貴様・・何笑ってんだぁ?』
そいつは倒れ込んでいる俺の横に立ち、睨み付けながら人の肩を踏み付けやがった。痛む身体に鞭打って、答えを待っている馬鹿に嫌味たっぷりに言ってやった。
『ククク・・あんた等・・本気でそんな事・・考えてたのかと思・・うと・・おかしくて・・・よ。悪いとは思ったが・・・つい笑っち・・まったぜぇ・・・。』
『何だとぉ・・!?』
怒りに声が震え出した・・・ヤバイと思いつつも止められない。
『馬鹿だって言ってんだよ!?・・・ッ痛ぅ・・お前等みたいなのが宇宙有数の軍事力を誇るケロン軍施設に、入り込めただけでもラッキーなんだよ・・・・さっさと投降して洗いざらい吐いちまった方が良いんじゃねぇ・・・・ッ!!』
そいつは痛みを堪え、捲し立てる俺の腹を思い切り蹴り上げた。抉れる様な痛みに息が出来ない・・血反吐を吐き、身体を丸め痛みに耐える俺にそいつは銃を突き付けて来やがった。流石の俺もヤバイと思った時、傍に居た研究員が叫んだ。
『クルル曹長!?』
すると急にそいつの態度が変わった。
『・・・!?クルル曹長だぁ・・・?へぇ・・アンタがかの有名なクルル曹長殿か!?ハハハ・・・こりゃあ良い!!本当にお前さんが言う通り俺達はラッキーだぜ!』
とうとうおかしくなっちまったのかと思う俺の腕をいきなり掴むと、ズルズルと窓辺に引き摺って行った。掴まれた腕も痛むが、身体中がそれ以上に痛み思わず呻き声を上げた。そいつは自分が狙撃されない様に俺を盾にしながら外へ向かって信号弾を打ち上げた。そして再び建物の奥へと戻り、俺を床に叩き付けやがった。
『・・・ぐぁ・・!?』
短い声を上げた俺は床でのたうち回り、痛みに耐えるしか無かった。そんな俺を奴等は楽しげに見詰め、こう言い放った。
『俺達への依頼は2つ・・・1つは開発中の兵器に関するデータを奪う事。もう1つは・・・』
俺の顔を掴み自分の方に引き寄せる・・。
『お前さんの確保さ・・・。データを奪っても同じ様な物を作られちゃ堪んないからな・・・そうならない様に開発者自体を誘拐しろだと。最悪、あんたの脳ミソだけでも持って来いとさ・・・楽しいだろ?』
嫌味な位楽しげに笑うそいつの顔に、俺は思い切り唾を吐き掛けてやった。
『・・・あぁ・・・楽しいか・・もな・・だが・・其れもあんた等が・・無事に帰れたらって話だ・・けどな・・・クク・・』
そいつの顔に怒りが満ちて来るのが分かる・・あぁ・・損な性分だぜぇ・・・こんなになっても皮肉を言っちまうなんてさ・・・本当に俺って嫌な奴だよ・・。
『・・けっ!其の強がりが何時まで続くか見物だぜ。』
床の上に放り投げられた俺に、研究員が駆け寄る。いい加減・・動くのも億劫になって来た・・。