京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「Dramatic RAIN」(さる作)
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夜の街に響き渡る一発の銃声・・・薄暗い路地に倒れ込む一人の男・・・彼は頭から血を流したまま動く事は無かった。高級そうなスーツは彼が流した血に染まり、赤黒く光を放っている。其の傍には銃を持つ一人の少年が立っていた。少年は僅かに震える手を強く握り締めると、雨の降り始めた街に走り出して行った――。

『メロ!こっちだ!?』

路地の出口でバイクにまたがった男がそう叫ぶと、少年は走り寄り後に飛び乗った。黒のヘルメットを手渡し、バイクは雨の中を走り出す。すれ違う車のライトが、二人をより深く危険な世界へと誘って行く・・・。夜の街並みを抜け、人気の無い高架下へと入って行く。二人は止めたバイクから降り、ヘルメットを脱ぎ捨てた。

『・・・上手くいったのか・・?』

マットがメロの肩に触れながら覗き込む様に聞くと、項垂れたまま頷いた・・。マットは安心した様子で溜息を付くと、メロを抱き締めた。メロは一瞬身体を硬直させたが、マットの温もりに眼を閉じ答えた。

『・・俺はお前となら・・何処へでも・・・何でも出来る・・・だから傍に居ろ・・。』

『あぁ・・・俺はお前を裏切らない。何があってもお前と・・・お前の手足になってやるよ・・。』

マットがメロの手から握られたままの銃をゆっくりと外して行く。その様を見ながらメロは呟いた・・・。

『・・・俺は、必ず“L”に・・・二アに勝ってみせる・・!何をしても・・必ず認めさせてやる!?』

其の呟きは何時ものメロらしさは無く、マットの耳には何処か虚ろに響いた・・。犯罪を統べる目的の者が、其の犯罪に手を染める事がどんなに屈辱か分かっている・・・まして高潔なメロは今さっき犯した犯罪の意味を良く理解している筈だ。ワイミーズを出て、自分に連絡を取るまでの数ヶ月間・・どんな思いでストリート・キッズの仲間に入り、マフィアの中枢にまで自分を売ったのか考えるとマットは胸が痛んだ。頭が良く要領も良いメロだが、理屈だけでは生き残れない・・・ある種の残酷さや冷静さ、器用さが無ければボス達の眼には留まらない・・・姿形は女の様なメロがボス達に本気で相手にされる事等、奇跡に近い筈だ。だが、メロは努力した・・持ち前の度胸の良さと、頭の良さを逆に利用したのだ・・元々人を惹き付ける才能はあった。後はボス達の知りたがる情報をハッキングし、流してやるだけ・・・しかも其の情報は“L”の・・今は二アが使用しているルートで調べたFBI情報だ。此れほど確実な物は無い反面、メロは自分の中の葛藤と戦う破目になる・・・。マットはメロを抱き締める腕を強くした。心を引き裂かれる程の痛みに、メロ自身が壊れてしまわない様に・・雨音が二人の耳に心地良く鳴り響く・・・遠くでは車の行交う音と・・サイレンの音が雨音に混じって夜の街に染まって行った。

『・・・メロ・・』

マットはそっと囁き掛けた。少しの間をおいてメロは身体を離し、マットの顔を見た。

『・・大丈夫だ・・・俺はこんな事で如何にもなったりしない。今日の事だって、あいつ等が俺を信用するのに必要な事柄だ・・・。何時か捕まって死刑になる筈の男を俺が先にやっただけの事・・・分かってる・・・けど・・・・』

メロは自分の両手を見ながら泣き叫ぶ様に言った。

『・・・俺と“キラ”の違いは何だ!?・・正しい事をしようとして、自分の前に立ちはだかる“障害”を取り除いてる・・・“殺人”と言う正義の名の下に・・・俺と奴の違いは何だ?目的か?名目か?・・・分からない・・・分からないんだ!』

『メロ・・・!?』

困惑するメロを再びマットは強く抱き締めた。如何したら彼の痛みを和らげる事が出来るのだろうか・・?二アと協力する事を拒み、自分のやり方を貫き通すメロ・・・だが其の裏でどれだけ“L”を求めたか・・俺では無く、尊敬して止まない人を求めたのか・・・今の“L”・・・二アを・・・・。マットはメロの唇を求め、メロも其れに答えた。互いの息が尽きるほどに激しく求め合い、奪い合った。大人びているメロでも、自分がマットの口付けの深く激しい熱に犯されて行くのを感じていた。膝が振るえ立っているのもやっとな自分を悟られたく無くて首に縋り付く手を強くした。そんなメロを愛しく想い、抱き締める腕を強め引き寄せたマットは静かに唇を放し・・潤んだ眼のメロに語り掛けた。

『・・・お前は“キラ”なんかじゃない・・・お前は何時も俺達の前に立ち、引っ張って来ただろう?お前のやっている事は正しいんだ。あいつだってお前の引き立て役として死んだんだから・・・最後に人の役に立って良かったじゃないか・・!?』
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