京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「もぅ1度、キスしたかった」(さる作)
1ページ/1ページ

その時の私の頭に浮かんだ事・・“キラ”にやられた悔しさと・・ワタリの笑顔・・そして貴方への限り無い愛情・・貴方を置いて行く悲しさ・・色々な感情が交差する中、力を振り絞り貴方に触れ様と手を伸ばし貴方を見上げた。

『・・!?』

私の眼に映ったのは獲物を捕獲した事を喜ぶ“キラ”と言う殺戮者の顔だった。私をそんな眼で見ているのは如何してなんですか?そんなに憎かったんですか?あの日の・・2人だけの約束すら・・嘘だったんですか・・・?色々な想いが脳裏に浮かんでは消えて行く・・貴方に触れたいのに力の入らない腕は虚しく宙を漂うだけだった・・ふ・・と、身体の全ての感覚が失われて行く・・私が再び貴方を見つめた時・・其処に存在していたのは勝利に喜ぶ“キラ”では無く、愛する者を失う悲しみに直面し絶望している“夜神月”と言う少年の姿だった・・・。遠くで貴方が叫ぶのが聞こえて来る・・・本当の・・悲哀に満ちた声に胸が痛む・・・。如何して私は彼を置いて逝かねばならないのか・・!?何故、彼は叫んでいるのか・・!?彼の中の“キラ?は宿主である彼の心までも闇に葬り、この世界の全てを掌握するのか・・?孤独で・・・冷たい其の世界に・・・彼の真に欲する物は本当に存在するのだろうか・・・?夜神さんの力強い腕に抱かれ・・貴方から遠ざかって行く私の身体・・・縋る様に出された貴方の指先が私の指先に触れる・・・あぁ・・すみません・・・私は貴方の其の冷えた指先を温めてあげる事はもう出来ません・・・。亡くしてしまう恐怖に震える唇に触れる事も・・・私達の秘密を・・秘め事を知らぬ人々は、彼の嘆きの深さを知る事は無いでしょう・・そして・・私の叫びを聞く事も・・・。この先の彼の行く道は棘よりも鋭い・・魂さえも傷付ける険しいものでしょう・・・其の先にある破滅に彼は気付く事は・・・恐らく“キラ”で在り続けるのであれば無理でしょう。あの子達は必ず“キラ”を追い詰めて行く・・其の身に何が起ころうと・・信念は曲げないでしょう・・寒さに震える私の身体はじきに活動を止め、魂はあの・・白く輝く光へと導かれるのでしょう・・怖くは無い・・虚しくも無い・・唯・・貴方を置いて逝くのが怖い・・忘れられるのが辛い・・貴方に・・・もう触れる事が出来ないのが悲しい・・・せめて・・もう一度だけ・・貴方を抱き締め・・もう一度だけでも・・キスを・・・永遠の愛を誓う・・キスをしたかった・・・・忘れないで下さい・・私が貴方を愛し、本当に救いたいと望んでいた事を・・!?其れは・・今、この時も・・そして魂と成り果てても変わらない事を・・忘れないで・・・・何時か、再び会える其の時まで忘れないで下さい・・・必ず・・迎えに行きます・・必ず・・・・・・・。


そして私の意識は白き世界へと消えて行った―――。
・・・・貴方を残して・・・・ 《完》

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ