京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二
□「Romance-現代騎士物語w-」(さる作)
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見慣れた街並の見慣れた公園の中、見慣れない女の子が頬を染めながら何かを言っている・・。俺は何時もの調子で答える。
『ん〜・・気持ちは嬉しいんだけど、君の事良く知らないし・・ゴメンね?』
俯いていた顔を上げ、涙を堪えている・・
『・・他に好きな人がいるんですか・・?・・私じゃ駄目なんですか!?』
食い下がる様に・・けれど真剣に問う彼女の言葉に一瞬、答えが詰まる。
『・・ゴメンね。』
泣きながら走り去る背中を見送りながら、彼女の残した質問の意味を・・答えを考えていた。
『好きな人・・か。』
好きな人はいる・・けれど叶わない恋である事もはっきりしている・・。“ふぅ・・”と、溜息を付いて歩き出す。黄昏時の空は何処か淋しそうで、名残惜しそうに沈む夕日の色が全てをその色に染めて行く・・。俺と同じ様に家路を急ぐ鳥の群れの中、不自然な動きをするソーサーを見つけた。あれはクルル達が使っているソーサーだ・・アンチバリアをしているのだろうが、不思議な事に俺には見えてしまうこの物体はゆっくりと・・何かを捜す様に飛んでいる。俺はクルルが来たのかと思い声を掛けた。
『おーい、散歩かぁい?』
其の声に反応し、こちらに向かって来る其れは何時もの黄色い姿では無く・・黄金色の空に華を添える様な赤い・・・俺の胸がドキリと音を立てた。それはクルルの仲間で、その想い人のギロロだった。ギロロは辺りを警戒しながらゆっくりと降りて来ると躊躇しながらも俺に話し掛けて来た。
『・・よぉ、今帰りか?』
何故か落ち着きが無いギロロは俯き加減でそう言った。夏美ちゃんの件絡みからずっと嫌われていると思っていた俺は正直戸惑った・・けれど、嬉しくも感じていた。
『うん、そうだよ?ギロロこそ俺に話し掛けるなんて珍しいじゃない・・如何かしたの?』
・・上手く笑えてるだろうか・・何時もの俺を装っているだろうか・・そんな事を考えてしまうのはギロロに対してだけだった。他の人間やクルル達には浮かばない感情が俺を支配し始める。
『え!? いや・・その・・・実は・・・・頼み事が・・有るんだが・・夏美やケロロ達には内緒で!』
緊張気味に・・顔を少し赤らめながらそう言う君。触れたい気持ちを抑えてからかう様に答える。
『内緒かぁ・・何か疚しい事?』
『んな・・・そんなんじゃない!・・探し物を頼みたいだけだ!?』
感情豊かで反応が可愛いギロロ・・何時からこんなに想う様になったのか・・。
『探し物ぉ?何?俺でよければ相談に乗るけど?』
『本当か!?』
『うん、態々訪ねて来てくれたんだし・・あ、でもあんまり難しい事は勘弁してよ?』
其の時の君の嬉しそうな顔・・俺を魅了するには充分な笑顔に釣られ俺も笑顔になる。道の真ん中でアンチバリアを構えた宇宙人と会話は見た目に問題があると考えた僕らは、街が一望出来る丘の上へと移動した。ソーサーで行けばあっと言う間に行ける距離を、ギロロは俺の歩く速度に合わせてゆっくりと進んでいた。何時もの道の何時もの空が物凄く綺麗に見えた。言葉少なに歩く俺達・・時々・・ギロロの方から話す世間話に相槌を打つ程度だった。ギロロは気まずくて言葉が出ない様子だが、俺は緊張して言葉が浮かばなかった・・。今までに何人かの女の子や、ラジオ関係で知り合った女の人と付き合った事も有るがこんな気持ちにはなった事が無かった。こんな・・歩いているだけで胸が一杯になってしまう様な・・・甘酸っぱい感覚・・。時折、心配そうに覗き込む君と眼が合う。嫌われない様に微笑む俺に戸惑い、照れてるのか眼を逸らす仕草に幸せを感じる。そんな感覚を味わいながら15分程歩き、目的地に着いた俺達は話を始めた。
『それでぇ・・?頼み事って?』
ソーサーから降りて、俺の横に立つギロロは赤い顔を更に赤くして・・話を始めた。
『う・・・その・・実は・・だな。お前にある曲を探して貰いたいんだ・・その・・夏美が何時も聴いているラジオ番組の後にだな・・流れていた曲が気に入ってな・・調べ様にも俺は地球の音楽家なんぞ知らんし、夏美には頼めん。冬樹はオカルトには詳しいんだが・・・それで・・お前ならと・・考えてな。』
『夏美ちゃんが聴いてるラジオって・・・“623の俺ラジオ”の事?ギロロも聴いてるの?』
どきり・・胸が高鳴る。ギロロの事だ・・きっと夏美ちゃんの興味の有る事は何でも知りたくて聴き始めたんだろう・・・理由は如何有れ嬉しい。
『!? いや・・其の・・聴いてると言うか・・あの、たまたまだ!たまたま!?・・其れよりもやって貰えるのか、貰えんのか・・はっきりしてくれ。』