京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「Over and Over Again」(さる作)
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何度も何度も夢に見る。あの日・・・ケロロに怪我を負わせた日の事を・・。夜中に何度も目が覚めて、闇の中声無き悲鳴を何度も叫ぶ・・。苦しくて苦しくて息も出来ない位になるのに、如何して俺は生きているのか・・・。逃れたくても顔の傷が思い出す事を強要する・・自分で望んだ事なのに・・顔を見るのも夢を見るのも怖くて眠れない日々が続く様になると、気分が妙にハイテンションになり訳も無く騒ぎ立てた。其の度に親父が部屋にやって来ては、俺と喧嘩になる。

『この大馬鹿者が!!こんな事も乗り切れん様では、一人前の戦士になどなれんぞ!?』

『貴様は友人を傷付けた事が無いからそんな事が言えるんだ!?』

『自分の感情のコントロールも出来ん半人前が、私に意見する等10年早いわ!?』

取っ組み合いになる頃、兄ちゃんとお袋がやって来て其れを止め様とする。

『貴方、止めて下さい!?ギロロは未だ気持ちの整理が付かないだけです!?』

『ギロロ、止めないか!?落ち着くんだ!!』

お袋が親父を力の限り押えつける・・兄ちゃんが俺を力を込めて抱き締める・・・涙が止まらない。

『・・・お前の様な奴に怪我をさせられたケロロが可哀想だな。』

そう悪態を付くと、親父は俺の部屋から出て行った。俺は親父の言葉で納まり掛けてた感情が爆発しそうになり、兄ちゃんの腕を振り解こうとする。だけど兄ちゃんの腕は俺をしっかりと包み込み、放そうとはしなかった。

『・・・止めるんだ・・ギロロ・・。良い子だから・・止めてくれ・・これ以上自分を傷付けるな・・。』

普段は厳しい兄ちゃんの・・・滅多に見せない優しさが辛かった・・お袋の疲れた顔が苦しかった・・。俺は泣くしか出来なかった。そんな俺でも訓練の時だけは解放される様な・・そんな気になった。銃を撃つ時の緊張感が堪らなく好きだ・・。意識は其処にだけ有って、他の何者も犯す事が出来ない俺だけの時間・・。ケロロを傷付けた物にのめり込み、全てを預ける奇妙な安堵感・・現実から逃れられるなら何でも縋った。ゼロロも又苦しんでいる様で、あの日を境にアサシンとしての修行に明け暮れていた。何ヶ月も連続で戦場に赴き、成果を挙げて帰って来る・・憔悴しきった身体を引き摺り、再び修行に戻る・・たまに顔を合わせる事も有ったがお互い言葉は少なかった。

『大丈夫か・・ゼロロ?余り無理はするな。』

『うん・・大丈夫だよ。ギロロ君こそ顔色が悪いけどちゃんと眠れてるの?』

『・・いや、眠りが浅くてな・・でも大丈夫だ。訓練に支障は無い。』

『・・・そう。じゃあ、僕訓練が未だ残ってるから行くね・・又ね。』

『ああ・・』

他愛の無い会話・・しかし、時折見せるゼロロの燃える様な眼が俺を苛む。あの時言った言葉が思い出される。

『僕は一生君を許さない。』

許さないでくれ・・・苛んでくれ・・・ケロロに会いたいと願う俺の罪を裁いてくれ・・。新兵になって暫く後に、俺とゼロロはケロロの父親に呼び出された。俺は行く事を躊躇ったが、ゼロロに押し切られケロロが居る施設へと赴いた。兄ちゃんが一緒に行くと言ってくれたがケロロの父親に断られた。ゼロロに手を引かれ施設内へと入ると、大きな扉の前に佇む親父さんの姿が眼に入った。ゼロロはあれから何回か見舞いに来ていたらしく、親父さんとも仲良く話していた。

『やぁ・・良く来てくれたね。ゼロロ・・暇を見ては来てくれて有難う。訓練頑張っているようだね?』

『はい、少しでも強くなりたくて・・ところでおじさん・・今日は何ですか?・・まさか、ケロロ君の具合悪いんですか!?』

其の言葉に息が苦しくなり始める。動悸が激しい・・思わずゼロロの手を握り締める。

『いや、違うんだ。今日、ほんの少しだけ面会が許されたんだ・・で、君達も会いたいかと・・そう思ってね。』

俺は其の時になって初めて親父さんの顔を見た。嬉しそうな・・不安そうな・・そんな顔をしていた。俺もきっと同じ顔をして、彼を見ているのだろう・・親父さんは俺に優しく微笑み掛けて来る。

『本当ですか!?ケロロ君に会えるんですか!!』

『あぁ・・治療用のポッド越しでは有るけれど、此方の声も聞こえる筈だし・・意識も有るそうだから何か反応を見れるかも知れないな。』

ケロロに会える・・?如何しよう・・逃げ出したい・・拒絶されたら・・?移動しようとする二人を他所に、地面に貼り付けられた様になってしまった俺に気付いたゼロロが戻って来て・・俺の手を引きながらこう言った。
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