京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「Shadow City」(さる作)
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眼下に広がる夜の街は霧に濡れていた。窓に触れた雨がその姿を雫に変え、流れ落ちて行く。硝子に映る私の頬を泣いているかの様に見せながら・・

『・・竜崎・・もう少し飲むかい?』

不意に貴方が声を掛けてきた事で、それは幻だと分かる。何も言わず貴方の声に振り返ると、優しげな微笑みを浮かべながら佇んでいる・・私の答えを待っているのか、貴方は何も言わなかった。

『そうですね・・では、もう少し頂きましょうか・・』

私はそれだけ言うと、ゆっくりとした足取りで貴方に近付いて行った。微笑みを浮かべたまま視線を落とす貴方の横顔は、絵画の様で見ている者を魅了する・・だが、その微笑みの下に隠された“キラ”と言う冷血な神は私に死の鎌を振り上げ・・その腕に抱かれる事を望んでいる。今・・私の目の前に居る夜神月は、理想を追い手を血で染め上げる“キラ”なのか・・それとも、無力さを呪い力を欲する哀れな少年なのか・・どちらにしても魅了され、抗う事すら出来ないでいる私に貴方を救う事が出来るのだろうか・・?

『・・竜崎?何故そんなに見詰めてるんだ・・?』

『・・今の貴方の横顔がとても綺麗で、つい見惚れてしまいました。』

そう言う私に苦笑して首を振る貴方は、何かを伝えたいのに言いだせない・・そんな風にも見え私を不安にさせる・・。もう何度二人きりの時間を過ごして来ただろうか・・?グラスの中の氷が澄んだ音を立てる。アルコールは別に好きでは無い・・飲まない方が脳や身体には良いに決まっている。酔いは思考を鈍らせ、判断を狂わせる・・しかし・・何故か貴方と情を通わせる様になってからは、時折こうしてグラスを傾ける様になった。理由など・・知りたくない・・知らない方が幸せかもしれない・・だが私の思考は止まる事をせず、ひたすら答えを求め彷徨う・・。

『ほら・・零すなよ・・』

幼さの残るハスキーな声が耳に心地良く響く・・貴方の本当の心が知りたい・・・・。


竜崎が僕と一緒にいる時間は、本当に僅かな物だと思う・・。父さん達と遅くまで捜査に没頭し、空いた時間があればPCの前に座ったまま身動き一つしない。たまにワタリが運んで来た紅茶を一口二口啜り、チョコを齧る位でまともに食事さえしない・・父さんが促すまで休もうともしない彼が、その僅かな時間を僕の為に使うのは何の為なのか・・・誘われるままに部屋に入り、同じ時間を過ごす。誰も知らない二人だけの時間・・惹かれるままに口付けをし、身体を重ね快楽を味わう・・・それは僕自身の保身の為に始めた事だった・・それなのに・・・さっき氷を取りに行き部屋に戻った時、暗い室内の窓辺に佇む竜崎の寂しそうな・・何処か悩む様な背中が愛しくて・・硝子に映った顔がないている様に見えて苦しくなった・・。それなのに何事も無かったかの様に話し掛け、竜崎の反応を確かめる僕は“キラ”なのだと改めて実感する。言葉の端々に探りを入れ、何かを探す・・・“何か”・・なんて分からない。何を言いたいのかさえ分からない・・・もう直ぐ最後を迎えるであろう男に何を伝えれば良い・・?“一緒に・・”言える筈の無い言葉を飲み込む。竜崎が近付いて来る・・・。



息が掛かる位の距離・・見詰め合う瞳・・言えない言葉・・・

『・・如何した・・竜崎・・?』

どんなに求めても・・近付いても・・触れ合おうとも・・・

『竜・・・』

塞ぐ唇・・心・・望み・・・

『・・甘い香りの酒なんだな・・・酔いそうだ・・』

『えぇ・・とても良い香りのお酒です・・貴方と同じ位好きなんですよ・・』

抱きしめる・・酔いしれる・・口付ける・・・

『・・ん・・』

漏れる吐息・・早まる動悸・・揺れる視界・・・

『・・竜崎・・』

甘い吐息・・熱い身体・・染まる肌・・・

『ライト君・・・』

溶ける思考・・逸る衝動・・募る欲望・・・狂おしく・・愛おしく・・果てしなく・・貴方を(お前を)・・求めて・・・・貫く(受け入れる)・・律動・・鼓動・・渇望・・・続く快楽の旋律・・・

『・・あ・・ぁ・・竜ぅ・・』

『・・ライト君・・“L”・・と・・呼んで下さい・・』

『・・エ・・ル・・?』

熱くなる身体・・心・・思考・・・もう貴方(お前)だけしか見えない・・・・・!?

『・・!?・・・エル・・・・・!!』
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