京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯二十二


□「I MIGHT LIE - A.T. - 」(さる作)
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眠らない街・・・東京。あらゆる夢と絶望が混在する灯りの消えない街・・・その街に暮らす1人の少女と3人の青年・・・共通する事は命に関わる事を望んでしている事・・・そんな彼等に降り注ごうとする暗闇に誰一人気付く者は無かった―――。

『うわぁ〜・・遅くなっちゃったぁ・・』

夜も更けた午後23時・・・直は急ぎ足で自宅に向かっていた。何時もの様に“ゲーム”に勝ち残り、帰宅する途中だった。何時もの様に何も変わり無い自宅への道のりに、何時もと様子の違う光景が直の目の前に現れ始めた。

『あれ・・・?如何したのかなぁ・・?』

そう呟く直の視線の先・・・外灯の下で1人の老人が蹲っていた。苦しげに胸を押さえる其の老人は、直が近付いているのも気付かない様だった。普通ならば少しは警戒心を持ちながら近付いて行くであろうこの御時世に、直はそんな物を持つ考えすら無いままに老人に近付いて行った。苦しげに震える背中に手を伸ばしながら、驚かさない様にと声を掛ける・・・。

『・・・お爺さん・・・大丈夫・・?』

直の其の優しげな言葉に、老人は何も答え様としない・・・余程苦しくて答えられないのかと考えた直は、背中をゆっくりと摩り出す。

『苦しいの?お医者様、呼びましょうか?』

其の呼び掛けに老人は、項垂れていた顔を上げゆっくりと直の方に振り向き始めた。少し安心した様子の直は、振り向いた老人の顔を見て驚愕する。

『大丈夫です・・か・・・――――!?』

振り向いた老人の顔・・・其れは“マッドピエロ”の仮面を被っていたからだ。驚いている直に“マッドピエロ”は何かを吹き付けた。避け様としバランスを崩した直は、其の侭尻餅をついてしまう。恐怖で声も出ない直にゆっくりと立ち上がった“マッドピエロ”が呟いた。

『さぁ・・・ゲームを始めよう・・・。』

直は其の声に弾かれた様に、逃げ出そうとするが身体が上手く動かない・・徐々に迫り来る“マッドピエロ”の手に落ちる瞬間、心でこう叫んでいた。

《アキヤマさん―――助けて―――!?》

そして意識は黒く塗り潰されて行った・・・。


同日24時・・・夜神月は自宅へと急いでいた。捜査本部内で“キラ”捜査についてLと論議を繰り広げ、こんな時間まで話し込んでしまったのだ。父や松田達は2人の白熱振りに押され早々に帰宅していた為、1人きりの帰宅となった・・当初Lがワタリに送る様に言っていたが、言い負かされた悔しさから其れを断り本部を後にした夜神月は深夜の街をタクシーを探しながら歩いていた。暗いオフィス街を急ぎ足で歩く物の、タクシーが来る気配は全くと言って良い程無かった。

『くそ、早く帰らないと母さんが心配するじゃないか!?』

そんな事を呟きながら、ビルを出る時に自宅に電話を入れた時の母の剣幕を思い出していた。普段は穏やかな母も流石にこんな時間まで話し込んでいた事を怒っている様だった。何時までも子供じゃないのに・・と思いながらも、直ぐに帰るからと返事をしてしまう自分がいた。

『なぁ、ライトぉ・・送って貰った方が良かったんじゃねぇか?』

黒い翼を翻しながら、死神・リュ―クが話し掛けて来た。名を書き込むだけで死が訪れるデスノート・・其の所有者にだけ見える死神・・其れがリュ―クだ。

『煩いな・・・僕は送って貰いたく無かったんだ!其れから街中で僕に話し掛けるなって言ってるだろう?』

『おお怖・・新世界の神“キラ”様は死神も怒鳴り付ける怖い神様だな?』

からかう様にそう言いながら笑うリュ―クに苛付きながらも、歩き続ける夜神月こそがLが追い求める“キラ”其の者だった・・――Lとの頭脳戦を繰り広げながらも互いに惹かれ合う関係・・だが、譲れない物もあるとライトは考えていた。“キラ”を・・自分を否定する言葉は例えLだとしても許せない。いや・・Lだからこそ許せないと思った。

『お・・ライト!あれタクシーじゃねぇのか?』

リュ―クが前方の灯りを指差しながらそう言った。其の指差す方に眼をやると、確かに其れはタクシーの灯りだった。

『偉いぞ、リューク!帰ったら林檎をあげるよ。』

そんなライトの言葉に立ち止まり、不満そうな声でリュ―クは呟いた。

『・・・俺は犬かよ・・・本当か、ライト?』

タクシーを止め様と歩道の端に駆け寄るライトに、少し嬉しそうな声でリュークは話し掛けるが答えは返っては来なかった。唯口に指を当て“しゃべるな!”と合図された。
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