京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯二十二


□「TRUTH 21century -TSP- 」(さる作)
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生温かい焼け焦げた臭いが漂うジャングル・・戦いに疲れ果てた同胞達は次々と倒れ、其の命を天へと帰す。そんな中で唯一つ確かな事・・・其れは未だ自分が生きて戦っている事―――!?


前線基地を叩かれ・・戻る場所を無くしたガルル率いる3個隊は、ケロン星からの救援を暗いジャングルの中で待ち続けていた。極度の緊張感と短時間の睡眠が戦士達の体力を奪って行く中、ガルルは指定された着陸ポイントへの最短距離を探し地図を眺めていた。自分が戦闘に出ていた時の奇襲によって多数の犠牲と共に基地を失った・・・咥え煙草のまま周囲に目をやれば、長時間の進軍に疲れ果てた同胞が僅かな眠りを求め其の場に蹲り項垂れている。此処5日間の間に取れた睡眠は僅かに4時間・・・いくら選ばれた屈強の戦士でも、集中力は落ち体調を崩したりもする。現にガルル程でなくとも、同等だと言われていた数人の戦死が其の命をこのジャングルの中に散らしていた。

『ガルル中尉・・・少しお休み下さい。』

自分を気遣い、何人かの部下達がそう進言してくる・・・だが、ガルルは其れを拒み続けた。

『貴方のせいではありません・・・如何かその様に全てを背負い込まないで下さい。』

ガルルは煙草に手をやり、其の唇から外すと溜息を付く様に煙を吐き出した。

『・・・・コーヒーを淹れてくれ・・・ストロングでな・・・・』

そう言いながら不敵に微笑むガルルを、部下達は恐れながらも尊敬していた。自分達の為に頑張ってくれているのだと・・・・だが、ガルルの心の中は少し違っていた。確かに部下達が言う様な事も少しは考えている・・・・だが・・本当は・・・・・。

ガルルは部下の淹れたコーヒーを一口啜った・・。
熱いアロマが喉を通り過ぎて行き、全ての感覚に刺激を与えて行くのを心地良く感じる。薄闇が降りて来るジャングルの中に、立ち昇る湯気が其の白き身体をくねらせながら消えて行く・・・

『・・・雨の臭いがするな・・・少尉!?』

『は、はい!?』

『5分後に此処を出る!?全員に耐水の武器を用意させておけ!!』

『了解!?』

ガルルの指示にキビキビと動いてみせる若い少尉・・彼の疲労もピークに達している事だろう。そう思いながら再びコーヒーに口付け様とアルミのカップに目をやると、雨を知らせる模様が琥珀の世界に広がるのが目に入った。ガルルは其れを見て、一言呟くと其れを一気に飲み干した。

『・・・やはり来たか・・・』

アルミのカップを近くの岩の上にそっと置く・・・ガルルは其の中に何かを入れ、部下達に指示を出した。

『総員直ちに此処を出て、南に下がれ!?目指すポイントは此処より4キロ先にある廃村だ!!』

ガルルの厳しい声に、のろのろと動き出す隊員達・・ガルルは先程の少尉を呼び寄せ、耳打ちを始めた。

『・・・良いか・・・此処から先はお前が指揮を取れ・・・目指すポイントは3キロ先の海岸だ・・・其処で母船を待て・・。』

『!?・・・お待ち下さい!?貴方は・・』

ガルルは少尉の言葉を遮った・・・少尉の唇にガルルの熱い指先が触れる。ガルルは獲物を見付けた猛獣の様に瞳をぎらつかせ、微笑みながら少尉に告げた。

『間も無く此処に敵兵が来る・・・其の時間は凡そ5分後・・・お前達が去った後だ。私は此処に残り敵を叩く・・・行け!?』

何処か楽しげに武器を転送し始めるガルルに、少尉が不安そうに尋ねた。

『ガルル中尉・・・・中尉は死にに行かれるのですか!?』

其の言葉にガルルは驚き、そして笑った。

『・・!?・・・・は、はははは・・・・そんな風に見えるのか?お前には・・・?』

少尉はガルルの其の微笑みの意味が分からなかった。しかし、苦笑いを浮かべつつも何処か余裕を見せるガルルに身震いをする。

『〜〜〜・・し、失礼を申し上げました!?・・・ガルル中尉・・・・御武運を・・・!?』

進軍し姿が見えなくなりつつある部隊の背中を見送り、ガルルは其の場に立ち尽くした。ふと・・・目を瞑ると自分の心臓の音が、静かなジャングルの中に広がる様な錯覚に陥る・・・・ドクッ・・ドクッ・・・静かに脈打つ生きている証・・・・。其の音が落ちてくる雨が葉を打つ音と重なり始めた時、其れは始まった・・――――!?

突然樹々の間から銃が乱射され、ガルルの周囲にある岩や樹木を粉々に砕いて行く。其の嵐の中にガルルの身体も存在していた。

『殺ったか!?』

樹々の間から数人の敵兵が、そう言いながら飛び出して来た。しかし・・其の敵兵の目に写っていたガルルの姿は煙の様に消え去り、砕け散った破片が其の場に降り積もっているだけだった――。
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