京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯二十二


□「今夜はブギ-バック -smooth rap」(さる作)
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眼が眩む程の鮮やかなライト・・・鳴り響くメロウな音楽・・・綺麗に着飾った熱帯魚の様な女の子達・・・心地良い仲間達との会話・・・どれも此れも少し前までは魅惑的で刺激に満ちていたのに、あの日を境に全てが色褪せてしまったかの様になってしまった・・・。あの雨の日、君から貰った答えは俺の心を苛み続けている・・・叶わない辛い想いなのに、忘れる事も断ち切る事も出来ずに唯彷徨う日々・・・其れはギロロ・・・全ては君を想い続ける俺への罰なのだろうか・・?




『さあて・・そろそろ帰るでありますかな。』

珍しく街中のパトロールをしていたケロロは、溜息まじりにそう呟いた。通常パトロールをしているのはギロロだったが、発熱していた為休ませ其の代打をケロロが引き受けたのだった。

『・・むぁったく・・いくら頑丈だからって、長時間雨に濡れたら風邪引くっつーの!あんな奴の事なんか放っとけ〜っつうの・・・!?』

ケロロは不機嫌そうにブツブツと呟いた。ギロロが風邪を引いた原因・・それは真面目なギロロを悩ませるには充分な事柄だった。ましてそこにクルルが絡んで来るとなれば、真剣に悩むのは当たり前だった。其の事を原因である人間に問い質すと言った時でも、そいつを庇うギロロと言い争った位だった。

『何でさ!何で“問い質すな!”なんて言う訳!?ギロロがこんなんなったのアイツのせいなんデショ―!?』

地下基地内の医務室に寝かせられたギロロは、熱に浮かされながらもケロロを説得していた。

『だから・・アイツとは全て話して・・俺の気持ちは・・・ハァ・・・もう伝えた・・だから、暫く放って・・おいてやってくれ・・・・』

潤んだ瞳で、懸命に願うギロロにケロロは苛立ちを感じていた。

『クルル!クルルは如何すんのさ!?まさかギロロと同じな訳?』

ギロロの傍らで額のタオルを取り替えながら、クルルは不機嫌そうに立っていた。ケロロの問い掛けに、浅く溜息を付くと吐き捨てる様にクルルは答えた。

『同じじゃねえょ・・・同じじゃねぇけどセンパイがちゃんとやったって言うんだから仕方無ぇじゃねえかよ・・・』

其の声は怒気を含んでいたが、其の度にクルルの手をギロロがきつく握り締め離そうとしない・・まるで“怒らないでくれ”と言わんばかりの其の行為を、クルルは裏切る事が出来ないのだ。クルルを見詰めていたギロロの黒い瞳が、ケロロを映す・・・。

『・・・ケロロ・・・頼む・・・』

ケロロは大切な幼馴染の願いを断る事が出来ない。

『〜〜・・・分かったでありますよ!?・・・でも、暫くは安静にしてくれなきゃダミダカラネ〜!!』

ケロロの言葉にギロロは安心したかの様に微笑み眼を伏せた。クルルもケロロもそんなギロロを見て安心する。取り敢えず、この問題はギロロが回復するまで保留にしよう・・・2人はそう結論付け夫々日常に戻る事にした。其れが数日前の出来事・・・熱も下がり容態も安定して来た物の、通常の任務をやらせる事をケロロは禁じた。完全に回復するまで任務に戻る事を禁止する命令に、ギロロは反発した物のクルルにも同じ事を言われ仕方なく承諾した。其れだけ心配を掛けた事を理解したからだった。昨日はクルルがパトロールをし、今日はケロロの日だった。

『明日はタママの日でありますし、ガンプラでも作るでありますかな〜。』

そう呟くケロロの目の前に、見慣れた人間が歩くのが目に入った。其れは今回の原因と思われる睦実の姿だった。

『!!・・・あいつ・・・こんな時間に何処へ行くつもりでありますか?』

ギロロをあんな目に合わせておきながら夜遊びに興じている睦実に、新たな怒りが湧くのを感じたケロロは後を付けて行った。後を付けて行くうちに、ケロロは睦実の様子が何時もと違う事に気付いた。確かに掴み所が無く、飄々としている睦実だが今日は其の表情に何時もの余裕は感じなかった。何処か寂しげで、心なしかやつれている様に見える。

『ケロ・・・あいつなりに反省しているでありますかな・・・?って、駄目駄目!?・・・流されないでありますよ!!』

そうは言ってみた物のギロロが気に掛けている以上無碍にも出来ない・・・もしも今何か有ればギロロが全部自分のせいにしてしまう事を知っているからだ。ケロロは溜息を1つ付き声を掛けた。

『睦実殿!?』

急に話し掛けられかなり驚いた睦実は、ビクリと身体を震わせた。其の事がかなり意外だったケロロは訝しげに聞く。

『・・・・我輩、そんなに声大きかったでありますか・・?』

睦実は大きく見開いていた目を伏せ、取り繕う様に作り笑いを浮かべた。
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