京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯二十二


□「ココロォドル -Original Version- 」(さる作)
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此処は才能を持つ子供達が集まるワイミーズ・ハウス・・・今日も新しい才能を見出だす為のテストが行われていた。設備の整えられた音楽室の中、集められた子供達・・ある者は楽しげに・・又ある者は敵意をむき出しにテストを待っていた。そんな騒めく教室内が一瞬にして緊張感が走る・・・此のハウスの厳格なる指導者、ロジャーが室内に入って来たからだった。そして厳かにテストは始まり天使の歌声が響く筈だった・・・―――。


『・・・ハイ・・結構・・・中々良い歌い方だねリンダ。君は絵も上手いが歌の方も伸びるかも知れないな。』


『有難う御座います、ロジャー。』

『それと・・・マット・・?君は真面目にやっておるのかね?・・・・・・そうか・・・・まぁ・・・・君はエンジニアの方が合うだろうな。さて・・・最後は・・・メロと二ア・・・其処に立ち給え。』

ほんの少しうんざりした表情のロジャーは、二人を呼び自分の座っているピアノの横に立たせた。何かが起こるかも知れないと予想はしていても、此処で“はい、終わり!!”と言う訳にもいかない・・・半ば諦めた様な表情が又哀愁を誘う。

『よっしゃあ!?・・・ぜってぇお前には負けないからな二ア!!』

意気込み過ぎて声が裏返ってしまったメロに、止せば良いのに二アが突っ込みを入れる。

『今からそんな事では無理じゃないですか?メロ・・』

『何だと!!後で謝っても許さねえかんな!!』

『何故私が謝るんですか?』

・・・・あぁ・・・もう始まったのかとウンザリするロジャー・・・そう、この2人ときたら寄ると触ると必ずこうなる。何度注意しようと、罰則を与えようと全く無しのつぶて・・・暖簾に腕押し・・・なまじ頭が良い2人なので此方も反論されない様にしなければならない・・・ワタリことキルシュが此処でLと過ごした時はどうやっていたのか聞きたい位だとロジャーは考えた。

『こらこら、2人ともいい加減にしないか!!取り敢えずテストを済ませて、其れから言い合いなさい。』

『・・・そうだな、見てろよ二ア!?俺様の美声に聞き惚れな!!』

自信満々にニアを指差しながら言うメロを、ロジャーは困り顔で見ていた。しかしやる気になってくれたので取り敢えず気を取り直してピアノを弾き始めた。此の侭何事も無く終われば良いと思いながら、メロの方に眼をやり歌い始めを促す。メロもその合図に答え歌い始める・・・中々良い調子だ。一小節歌い終わり、ハーモニー部分に差し掛かる・・・如何か何事も起こりません様にと祈りの様な願いを掛け、二アの方に目配せする。二アは淡々と歌い始めた・・・まぁ・・こんな物だろうと胸を撫で下ろす。意外に上手く行っている2人のハーモニーに安心するも、終わった後の事を考えると頭が痛む・・・しかし物事に終りが来るのは当然の事・・・最後の音を奏でながら自分への為の終焉の音だなとロジャーは考えた。鍵盤を見ながら小さく溜息を付き、2人の方に顔を上げる。自信満々に顔を輝かせながら採点を待つメロと、やはり淡々と佇む二アがロジャーの言葉を待っていた。

『あ・・・あ〜・・メロ?』

『おう!』

『君は良い声をしていると思う・・・が、』

『当然だろ?俺だぜ、で、二アと俺・・・どっちが優秀だった?』

あぁ・・・如何してこう・・・何でも勝負事に持って行こうとするのか・・・。

『いや、その前に批評を言わせてくれ・・・その、出来ればもう少しパートナーとの協力性を出した方が良いんじゃないのか?何故ハーモニーの部分に来るとがなるんだね?』

『こんな奴と協力なんか出来るかよ!?』

おいおい・・それじゃあコーラスにならないだろうがと突っ込みを入れたかったがロジャーは気を取り直した。

『・・・それと二ア、もう少し声を大きく出せないかね?』

『こんなテストは私には無意味ですから・・・』

だからそうかも知れないけど、此処にいるのはお前等だけじゃないから・・と再び突っ込みたいのを耐える。

『へ、声を大きくなんて無理に決まってんだろ。大体無意味なんじゃなくて、“私には無理”の間違いなんじゃねぇの?下手なの隠してるんだよ。』

メロのせせら笑いに、二アが突っかかる。

『聞き捨てなりませんね・・・何時私が無理だと言いましたか?大体メロだってただ怒鳴っているだけで、メロディラインなど無視じゃありませんか。そう言うのを“棚に上げる”と言うんですよ。』

『何だとぉ・・・』

『何です・・』

如何してこうなってしまうのかと、呆然と2人のやり取りを見詰めるロジャー・・・2人は睨み合ったまま動かない。廻りも何時もの事だと行く末を見守るだけだった。
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