京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯二十二


□「≫A Bolt From The Blue」(さる作)
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文字の中に隠された秘密・・貴方と私の大切な駆け引き。どんなパズルよりも難解で、どんな罠よりも危険な存在。極上のワインの様に私を酔わせる・・―――。


携帯が鳴る。私は直ぐに出る事をせず、何度か鳴るのを待ち貴方の言葉を探る。

『・・竜崎?僕だ。今からそっちに向かうよ。何か欲しい物は有るかい?』

何時もと変わらぬ声・・しかし何処か他人には聞かせ無いだろう甘い囁きに口元が弛む。

『ライト君が選んで下さった物なら、何でも良いですよ。気を付けて来て下さい。』

一瞬の間の後に、少し照れた様な声で返事を返し電話を切る。たったそれだけの事なのに、何故こんなにも胸が踊るのか・・・!!

『・・分かった。それじゃあ又後で・・』

通話が終わり、私はライト君が来るまでの時間をゆったりと過ごす。何をする訳でも無いが、こうして待っているだけでも楽しい物だ。彼が私の為に何を選び、何を考え、何を想うのか・・・言葉の遊びを繰り返しながら温かいお茶を一口啜る。今日の紅茶はプリンス・オブ・ウェールズ・・・其の名の通り、英国生まれのこの紅茶の香りは高貴で・・・其れでいてすっきりとしている。ライト君に相応しい紅茶だと私は思っている・・・が、其の反面ライト君のもう一つの顔であろう“キラ”についても想いを馳せる。彼は言うならば極上のダージリン・・・香り、味わい全てが極上の位置に在りながら、ほんの少し蒸らすポイントを間違えれば唯の苦いだけの物に変わってしまう・・其の危うさが私を引き寄せ、私の意志も何もかも飲み込もうとしている。ライトと“キラ”・・相反する様でいて何処か重なる2人は、私を引き付け離さない。果たして其れは“恋”と言う駆け引きか・・はたまた“愛”と言うか呪縛なのか・・いずれにせよ2つの文字に隠された“心”に触れているのは確かな事実だ。

『竜崎?居るんだろ?』

ドアを開けると同時に響くライト君の声に胸が踊る。私は返事をせずにソファの上で彼が部屋に来るのを待つ。探す様な・・・ゆっくりとした足取りで私の居る部屋に近付いて来る・・。

『竜崎・・何処だ?』

ドアがゆっくりど開き、覗き込む様に入って来る。

『なんだ、居るなら返事くらいしろよ。ほら・・竜崎の好きなケーキを買って来たよ。其れに合うお茶も見繕って来たから一緒に食べよう。』

流れる様な動作も、歯切れの良い口調も・・・其の全てに罠が仕込まれている。“心”が揺れる、触れたいと感じる、熱い視線を独り占めしたい。

『如何したんだ?何でそんなに見詰めてるんだよ・・何か変だぞ?』

『・・・変とは酷いですねぇ。こんなに愛情を込めて見詰めているのに分かって貰えないなんて、悲しいですよ。』


竜崎が僕を見詰める――。
愛しい物を見る様な・・そんな優しい視線が僕の全てを束縛する。だが僕は知っている。其の眼の中には“キラ”を探す“L”が潜んでいる事を・・・――!癖の有る柔らかい黒髪も、白くしなやかな指も、暗褐色の瞳も全てが僕を引き付け離さない・・――!だからこそ墜ちる訳にはいかない。墜ちてしまえば全ての夢が消えてしまうから・・・僕は想う。僕が魅かれて止まないのは竜崎なのか・・それとも“L”なのか・・竜崎は優しい・・とても寂しがり屋で独占欲が強い。たけど“L”は違う・・・鋭い目線で僕を見詰め、絡めとろうとする。巧みな話術で人を引き付け、縛り付ける・・僕は“L”に恋い焦がれ、竜崎に愛を求める。2つの“心”に引き裂かれそうになる――。

『如何しました?こちらに来て座りませんか?』

形の良い唇が誘う。落ち着いた声の音に酔い痴れる。

『ライト君・・・』

近付いて行くと腕を伸ばし僕の手を取る・・少し冷たい指先に、自分の熱さを知る。

絡み合う指が互いを求め合い、近付く吐息が重なり合う――。早くなる鼓動、熱くなる身体、魅かれ合う心・・2つが重なり合い、1つになる時お互いが真に魅かれている何かを感じ合う。思考する・・・“キラ”は竜崎に魅かれ、“L”はライトに魅かれ、“キラ”は“L”を憎み僕は竜崎を望む・・・――。騙し合い魅かれ合う綱渡りの様な情事を繰り返し、私達は相手を捕縛する為に命懸けの恋をする―――!

『竜崎・・・』

『貴方のキスはバニラの味がしますね。』

『お前は紅茶の香りがするよ・・・。』

『ふふ・・では最高の組み合わせと言う訳ですね。』

『ん・・・そう・・だな・・』

『ライト君・・・全部頂いても良いですか?』

『・・・聞くなよ・・・』

嬉しそうに微笑み、僕の身体にキスの雨を降らせ始める・・そうして又私達の駆け引きは始まる。

其れは永遠の騙し合い・ ・究極の恋。   《完》

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