∬`∀<´∬ 紐育 につく 通り 出口以前


□「We Built This City」(さる作)
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『地球を我がケロン軍の支配下におくであります!?』

ケロン星を出た直後、軍曹さんは飛行艇の中で確かにそう宣言していた。
その時の軍曹さんは凛々しくて、本当に『あの頃の軍曹さん』そのものだった。
僕はそんな軍曹さんが大好きで、憧れで地球に到着するまでの時間できるだけ傍にいた。

屈託無い笑顔が可愛くて、たまに見せる寂しそうな顔が胸を熱くして・・・
僕はできるだけ軍曹さんが笑える様に努力した。
そんな僕を見て笑う軍曹さんはとても嬉しそうで、時折頭を撫でてくれたりしてくれた。

でも・・・どんなに努力してもギロロ先輩やドロロ先輩が来ると僕は蚊帳の外に置かれる。
幼馴染の特権、懐かしい話や僕の知らない話が目の前で繰り広げられる。
僕はジュースを飲みながらそれを聞いているしか出来ない。

クルル先輩の様に飄々と出来れば良いのだけれど、僕はそこまで大人じゃなかった。
子供っぽく独占欲丸出しで、それでいて気持ちが欲しくて伝えてみたり・・・
そんな時間の中で僕は色々知った。

クルル先輩はギロロ先輩が好きで、
ドロロ先輩は軍曹さんの事が好きで、
・・・・軍曹さんもドロロ先輩が好き・・・・・

地球に来る前に一緒に、何度も任務をこなして来た。
色んな戦場を、軍曹さんの指揮で、皆で。
でもそんな時間よりも長く、もっと深く繋がっている軍曹さん達。

僕もクルル先輩も分からない、3人だけの時間が羨ましくて妬ましかった。
だから僕はこの任務が来た時、凄く嬉しかったんだ。
初めての侵略、軍曹さんとの侵略

これで僕も軍曹さんと同じ時間と思い出を共有出来るんだと思っていた。
・・・・・・・なのにその軍曹さんときたら、毎日毎日のんびり過ごしていて侵略なんて何処吹く風
ガンプラ三昧で、なっちーやふっきーと楽しく過ごしている。

ここに留まる原因も2人に見つかったからだって言うのに
侵略者だって言う事も忘れてるのかと思う位、仲良く過ごしている。
まぁ・・僕もももっちと仲良くなったけれど・・・

良いのかな?と思いつつギロロ先輩みたいに煩く言うのも嫌だし
そのギロロ先輩もここの暮らしも悪くないと思っているようだし
クルル先輩はどっちでも良いみたいだし

ドロロ先輩だけは軍曹さんの事しか見ていない。
地球が平和であれば、軍事的では無い『友好的侵略』が出来ると考えているみたい。
もちろんケロン星とは違うこの星に魅入られたのが原因だろうけど・・・

あの人の頭の中は何時も軍曹さんで一杯なんだろうな。
でも、僕も負けてない。
好きな気持ちは負けない。

僕も僕なりの考えで軍曹さんと侵略すると決めてる。
僕達は先攻部隊だけど、考え方を変えれば土台作りに来た作業員。
だったらこんな風にのんびり過ごすのもアリだと思う。

足場をしっかり固めて、何時かこの街に僕達ケロン人のビルを建てるんだ。
今は隠されてる宇宙人街もその中に入れて、大きいファッションビルみたいに。
その話をしたらももっちも『良いですわね。冬樹君も喜びますわ。』って言ってくれた。

今はまだ無理だけど・・・何時か本当にどうにも本部を誤魔化せなくなってきたら、軍曹さんに提案してみようと思う。
きっと賛成してくれる・・そう確信しながら、まだ僕を頼ってくれない軍曹さんには内緒にしておこう。
今言って失敗しても困るしね。

内緒だけどビルの名前も決めてるんだ。

『ケロタマビル』

指揮官と発案者の特権って言えば誰も反対できない筈
誰にも内緒の僕の侵略計画、何時か必ず叶いますように!                《完》

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