∬`∀<´∬ 紐育 につく 通り 出口以前


□「A HAPPY NEW YEAR!! 《 TF Version 》」(さる作)
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新しい年がきても、アイアンハイドは忙しかった。

年末には双子が新車にトランスフォームする際色を取り合う。
ジャズが新しいシステムを取り入れる際、手が足りないと借り出される。
サイドスワイプやジョルト、ディーノの酒に付き合わされる。
レノックスを家まで送り届けたり・・・etcetc・・・。

果てには新年カウントダウンパーティーで、酔って暴れるバンブルビーを捕まえてラチェットと共に医務室に連れて行くと言う事までこなしていた。

『・・・・・流石に・・・・疲れた。』

地球に来てからこっち戦闘ばかりで大変だったが、平和になったらなったで部下達の世話に明け暮れ大変だ。
オプティマスも同様に・・・・とは言っても地球人相手ではあるが・・・・自分達オートボットの残留手続きに加え、ディセプティコン共の手続きまでこなしていた。
ある意味、オプティマスの作業の方が複雑で面倒だ。なにせ敵だった輩を同じ様に地球に残し、暮らせるようにすると言う何とも矛盾に満ちた事をしているのだから面倒以外言葉が無い。

『全く・・・・仕方が無ぇ奴だよ・・・。まぁ帰る星は荒廃しているし、互いに友好条約を結び再興を試みるならやらなきゃならん事でもあるがな。』

再興には人手が居る。その為のディセプティコンと手を組む。地球との友好条約のついでにディセプティコンとも結ばせる。俺達とは降伏条件として、共に暮らし友好状況を築く。いま考えても何とも突拍子も無くて、不可能な提案だった。
案の定・・・・スタースクリームやバリケード、ボーンクラッシャーは猛反対した。そりゃもう、その場で戦闘が始まるんじゃないかとレノックス達がハラハラしたくらいだったからな。けれどそれを諌めたのはオプティマスではなく、意外な事にメガトロンだったのは長年生きてきた中で一番の驚きだった。

『・・・・・・良かろう。その条件、承服した。』

『マスター!?気でも違えたのですか!!』

驚きそう声を挙げるスタースクリームに、メガトロンはその鋭く赤い目を向け黙れる。

『ほう・・・・貴様・・・ワシの言葉に従えんと言う訳だな・・・・?』

落ち着き払った静かな声ではあったが、その中には威圧感がたっぷりと含まれていた。流石の猛者達もそれに逆らおうとは思わないらしく、自分達の指導者が言うならと表面上は大人しくなった。
まぁ・・・スタースクリームだけは、申し訳ありませんとか言いながらも不満そうにしていたけどな。ま、終わりよければすべてよしってやつだ。これに喜んでたのはオプティマスだけと言っても良かったが、この後の地球側への交渉や説得の熱意にお偉いさん方も折れずにはいられなかったらしい。

『〜〜〜〜〜〜・・・・分かった。我々も承服しよう。但し!・・・・条件がある!?』

『おぉ・・・私に出来る事ならば・・・。』

で・・・・その条件を飲んだ訳だ、オプティマスは・・・・そんな事ならと喜んでと。思い出すだけでも頭が痛くなる条件だがな。
俺がそんな事を考えながら歩いていると、直ぐ近くの格納庫からスタースクリームがヒョッコリと現れ俺を見るなり悪態をついて来た。

『おや・・・・オートボットの武器オタクじゃねえか、こんな所を1人で歩いて何やってんだ?』

露骨に嫌な顔になる俺に、その後も延々と嫌味を含んだ言葉を続けるスタースクリーム・・・・そうオプティマスの飲んだ条件とはこれだ。

『〜〜〜お前さんこそ何やってるんだ?メガトロンとはぐれたのか?』

『な・・・何を言う!?俺様がそんな間抜けな事をすると思っていると思っているのか!!』

どうやら図星だったらしい・・・・その後もまくし立てるスタースクリームを眺めながら俺は思った。どうしてオプティマスはこいつ等と共に暮らす事を承諾したのか・・・・と。

『これは必要な事なのだ・・・どうか協力して欲しい。』

拒否する事を説得するジャズの言葉に、悲しげに懇願するオプティマス・・・。もともとオプティマスに弱いジャズは、それに抵抗し続ける事なんて出来ない。無論ジャズが折れる訳だが、その日の晩に酒に付き合わされた俺は《もしキューブを蘇らせろと言われたらそっちを喜んでやるね。》言う愚痴を延々と聞かされた。

『貴様、人の話を聞いているのか!?』

つい深く考え込んでしまった俺は、スタースクリームのその罵声で我に返った。

『・・・あ?あぁ、すまん。聞いてなかった。と言うか、迷子でなければ良いんだ。基地内からは出るなよ。』

『言われるまでも無いわ!?』

頭から湯気でも出してるんじゃないかと思うくらいに怒るスタースクリームは、そのままズンズンと基地の奥へ歩みを進めて行った。

『・・・・No,2があれじゃディセプティコンも苦労するな・・・・。』

心からそう思う俺の耳に、アーシー達のかしましい声が聞こえてきた。

『司令、待って下さ〜〜いv』

『あたし達の話、聞いて下さいませんか?』

『とっても耳寄りなお話ですのよ。』

・・・・お前等の耳寄りな話は、裏を返せば何か企んでますよっつう意味だろうが。俺が声のする方へと向かい歩いて行くと、2ブロック先の格納庫でアーシーズに囲まれて困っているオプティマスを見つけた。

『司令、少しで良いんですの。』

『そうそう、直ぐにすみますわ。』

『ね?少しだけ歩みをお止めになって?』

全くあいつ等ときたら、何かにつけてオプティマスにちょっかいを掛けやがる・・・。確かに家柄もスタイルも面も頭も申し分ないオプティマスだが、実は恋愛方向にはかなり疎い箱入り息子(?)だから反応が面白くて仕方が無いんだろう。
かと言ってそれを見て見ぬ振りをする訳にはいかないのが俺だ。うちの親父様はオプティマスの親父の部下で、小さい時から色々と面倒を見させられてたからな・・・特に男であれ女であれ悪い虫がつかないようにとも言われてたのだ。
もし万が一の事があれば・・・・・・・考えるに恐ろしい。しかし守り過ぎた結果がいまのオプティマスの魅力を醸し出しているのも事実ではある――――が、親馬鹿に近い言い訳だな。

『ふむ・・・・仕方が無いな・・・・。私はこの後行かねばならぬ所がある故、話は迅速に頼むぞ?』

困り果てた末に、オプティマスは微笑みながらそうアーシー達に告げた。相変わらず甘い奴だと思いながらも、俺はいま暫く様子を見る事にした。アーシー達を説教するにしろ何にしろ、状況証拠と言う物も必要になるだろうからな。後・・・からかわれる事によって、オプティマスも少しは勉強するかもしれん。

『ありがとうございます〜〜。』

『ね、司令?司令は地球でのしきたりとか、マナーとか学びましたか?』

『特にお祝い事についての事ですわよ?』

何とも突拍子の無い話を始めたな。何をやるつもりなんだ??

『ん?ある程度はレノックスやサムから聞いてはいるが・・・・それがどうかしたのか?』

オプティマスの返答に、アーシー達はニヤリと笑う。そして一気にオプティマスに詰め寄った。

『あら、それならば新年の挨拶に何をすればいいのかお聞きになった?』

『そうそう年越しの瞬間の事とか。』

『とっても大切な事ですのよ?』

一気に詰め寄られた事と、質問の意味を考えオプティマスの頭上には?マークが大量に出ているのが目に見えるようだ。
そろそろ助けに行った方が良さそうではある・・・が、もう少し見ていよう。大切な事柄と言うのにも興味があるしな。

『え・・・それは・・・・?』

『キスですわ!』

『新年になったら、親しい人にキスを贈るんですのよ?』

『司令はどなたかと、もう致しました?』

その瞬間の俺の気持ちを誰か察してくれるだろうか・・・・?確かに新年になった瞬間に、キスをしあう事はあるとレノックスから聞いた。事実レノックスは家族としているし、帰還しかけた俺を呼び止め意味を説明した上でドアにキスをくれたが・・・・あいつ等のは何か違う!?

『そ・・・・っ!?それは知らないし、誰ともしていないっ!!』

『『『あら〜〜それなら是非、私達とっ!?』』』

そう言う時には抜群のチームワークを発揮するなぁ・・・・・。顔を真っ赤にして後退するオプティマスは、その直後に壁の様なものにぶつかった。

『・・・こんな所に壁は無い筈・・・。』

そう呟き振り向くオプティマスは、その壁と思ったものがメガトロンである事に気付き驚く。そしてそれ以上にアーシー達が驚き、挨拶もそこそこに一気に走り去って行くのだった。

『きゃっ!』

『メガトロ・・・・・し、司令?』

『私達、これで失礼しますわ!?』

アっと言う間に走り去るアーシー達に、オプティマスと俺は安堵の溜息を漏らす。たまにはメガトロンも役に立つな。

『すまないメガトロン・・・・助かった。』

『余りに遅いので様子を見に来れば・・・・何をあんな雑魚に遅れを取っているのだ。』

『いや・・・まさかあんな事を言ってくるとは思わなくてな・・・。』

情けない所を見られてしまったなと苦笑いを浮かべるオプティマス・・・・話の流れからするに、2人は待ち合わせていたようだ。
そう言えば・・・・午後に細かいルールの打ち合わせをするとか何とか言っていた気がする。

『ふん・・・お前は甘いからな。部下はキチンと躾けておけば、あのように上官をからかったりせん!』

『はは・・・・痛いところをつく。』

『ふん・・・!』

照れた様に頭をかくオプティマスの顔を無言で見詰めるメガトロン・・・何かよからぬ事でも考え付いたのか、赤い目を細くして微笑した。

『オプティマス。』

『うん?』

名前を呼ばれ顔を上げるオプティマスの唇に、メガトロンの唇が重なる。
両者目を開けたままの色気の無いキスだが、オプティマスは思考回路が止まったかの様に反応がない。
しかし少しづつ状況を確認できたのか、じわじわと顔が赤くなってゆくのが遠目でも認識できた。

『〜〜〜〜〜〜・・・・なななななななっ・・・・!?』

『何って・・・新年の挨拶・・・とやらだ。お前、まだ誰ともしとらんのだろう?だからワシがしてやった・・・・友好条約に反するか?』

意地の悪そうな笑みを浮かべ、鼻先を鋭い牙で軽く噛むとメガトロンはそのままオプティマスを引き摺り会議室へと進んで行った。
最早驚きすぎて声も出ないオプティマスは、先に会議室で待っていたラチェットの声もバリケードの罵りも聞こえていないだろう。
その場を動く事も出来ず見守るような形になった俺は、新しい年もある意味厳しい戦いになりそうな予感を感じ頭を抱えるのであった。       《完》

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