(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】


□「心の奥底」(さる作)
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『・・・お・・・おい、行こうぜ。』

仲間の1人が一触即発な雰囲気を感じ取り、それを回避する為にそう声を掛けた。男はチッと舌打ちすると、ボーンクラッシャーを睨み付け何も言わずにその場から立ち去って行く。その姿を眺めながら、ボーンクラッシャーはスコルポノックに通信を取った。

《 スコー・・・お前等にちょっかいかけてる奴が、仲間連れで移動している。釘は刺しといたが、何せあのスタースクリームの仲間だからな・・・・姑息な手段を取ってくるかも知れん。なるべく人間とか仲間の多い所に居ろ・・最悪オートボットの居住区近くに居てくれ。部屋へ行くなら鍵を掛けさせろよ? 》

《 あいよ・・・こっちはアタシに任せな。アンタは万が一に備えて、早めに合流しておくれ。ジェットロン相手じゃ、アタシもバリケードもイマイチ分が悪いからね。 》

《 了解 一時通信を切るぞ 》

通信を切り暫し考えを巡らせるボーンクラッシャーは、一応直ぐに連絡が取れるようにブラックアウトにも連絡を入れておく事にした。
いま起きそうな争い事を、纏め役を任されている者に知らせるのは当然だ。万が一の事後の処理の事もあるしな・・・そう考えての事だ。

《 よぉ、兄弟!出掛けて早々だが、ちっと厄介な事が起きそうだぜ? 》

目の前に目的地が見えて来た頃にそう告げられ、少しばかり嫌な表情を浮かべた俺は一瞬無言になった。
だが直ぐに気を取り直し、ボーンクラッシャーに返信する。

《 ・・・・・・・・如何して大人しくできないんだ? 》

《 俺が何かした訳じゃねぇよ!・・・まぁ・・・・いまはだけどな。 》

《 どう言う意味だ・・・・? 》

訝しげに問う俺に、ボーンクラッシャーは軽い口調で答える。

《 ん?何、ちょっと性質の悪い奴に絡まれてるんでな。言い聞かせてはいるが、聞く気が余り無いらしい・・・最悪俺が手を出しちまうかもしれんからな。そん時にゃあ・・・なぁ・・・。 》  

ボーンクラッシャーの言葉に、俺のスパークは大きく跳ね上がった。
そしてあのジェットロンの顔が脳裏に浮かぶ。

《 バリケードか・・・? 》

声を低くして問う俺に気を使ってか、ボーンクラッシャーはやはり軽い口調のまま・・・けれど声は低く答える。

《 俺もスコーもいるから心配しなさんな。お前はお前でしっかり役目を果たして来いよ・・・あぁ万が一の時には駆けつけられる様にな?俺だけじゃ纏まり悪いからよ・・・。 》

《 分かった。 》

通信を終えた自分が険しい顔付きになっているのを理解しながらも、自分が心の奥底で抱えていた不安が的中しつつある事に苛付きを感じた。当然と言えば当然の事なのだろう。
自分達ではなくとも、他の者でも同じ様に抱える不安なのも知っている。恋人同士では当り前の不安と口では言いつつも、その先にある嫉妬や独占欲の比率までも同じとは限らない事も理解している。
自分でも信じられないほどにバリケードに心奪われ、手に入れる前よりも一層欲するようになっている・・・・疎ましく想われないように冷静さを装っていても、いま聞いてしまった言葉だけでこんなにも心乱れる。
バリケードを信じていない訳ではない・・・だがバリケードに触れようとする者全てを排除し、誰も来ない場所にバリケードを閉じ込めておきたいと言う欲望がある事も事実だ。
もしも自分以外の誰かがバリケードに触れたなら、例えメガトロン様に罰せられようと存在していた痕跡すら残さず破壊しつくだろう・・・。
我ながら呆れる感情に、知らず溜息が出てしまう。そんな先程とは違う俺のこの変化に、何故かオプティマスが気付き心配そうに声を掛けてきた。

『 ブラックアウト・・・気分でも悪いのか?』

正直話し掛けられた事よりも、その心底心配そうな眼差しに驚いた。こいつ等の仲間は、何時もこんな風に見詰められているのか?

『 ・・・いや、大丈夫だ。気を使わせたな。』

『 そうなのか?何か心配事ならば言ってくれ。基地にはラチェットやジャズが残っているし、何か手助け出来るかもしれん。』

『 必要なら言う、俺はいまの任務を果たすだけだ。』

恐らくはメガトロン様から俺達の事を少しばかり聞いているのかも知れない・・・そう思った俺はこいつに何かを言う事を止めた。
助けは有り難いが、オートボットに借りを作りたくは無い。
俺はオプティマスにそれだけ言うと、メガトロン様のもとへと向い足を進めて行った。そんな俺達の遣り取りを見ていたスタースクリームが、仲間に追いついた俺に嘲笑を向けているのに気付く。何の遣り取りをしていたかなど知らない筈のスタースクリームのその笑みが、俺には妙に癇に障り治まり掛けていた騒めきが再び首を擡げてきた。

『 ?・・・・ブラックアウトさん、どうかしたんですか?』

俺とスタースクリームの視線の交わし方に、若い奴が不穏な物を感じたのかそんな風に問い掛ける。その問いに俺は小さく首を振り、平静さを装って静かに・・・そして冗談を交えて答えた。

『 ん?いや・・・俺がオートボットと話してたのが羨ましいのか、スタースクリームの奴が睨んできたんでな。可愛そうだから、少しばかり見詰め合ってやったところだ。』

俺の言葉に笑い、安堵の溜息を付く。
その若い奴等に俺は言葉を続けた。

『 オートボットの眼の届く範囲なら自由にして良いそうだ。だがなるべくメガトロン様の周囲にいろ・・・・後の奴等の為にも諍い事を起こすなよ。』

久々の外の空気に気分が良いのか、素直に従う事を告げメガトロン様の近くに行きそれぞれ寛ぎ始める。俺はそれを遠巻きに見詰めながら、いま自分が告げた言葉に願いを込めた。

《 どうかあいつの身に何事も起こらないように 》




ブラックアウトのそんな思いも知らず、残されたディセプティコン達は退屈を持て余していた。が・・・何か揉め事を起こせば、また暫くの間は軟禁状態が続く事を考えればこの退屈さも紛らわせると誰もが思っていた・・・・ごく一部分の者を除いて・・・・・・。

『 もうすぐメガトロン様が帰還される時間だ。皆、出迎える準備をしておけよ。』

居住区を歩き回りながらそう声を掛けるボーンクラッシャーは、出掛けているブラックアウトの変わりに忙しなく動き回っている。
今日1日バリケードの傍に張り付き、周囲に気を配っていたが何事も無く過ごす事ができた。バリケード自体は鬱陶しかっただろうが、文句も言わずに静かにしていてくれた。
後はブラックアウトとバリケードが、対面するまで用心すれば良い事だ・・・・ボーンクラッシャーはそんな事を考えていた。
そんな時、あのジェットロンの仲間の1人に、突然声を掛けられる。

『 よぉ、ボーンクラッシャー。』

『 ・・・・何だ?俺はいま忙しいんだがな。』

口元だけの笑みでそう答え、相手の出方を窺うボーンクラッシャーに思わず息を呑む。

『 あ・・・す、すまん。実はアンタに忠告をしようと思ってな・・・・。』

その言葉を言い終わるか終わらないかのうちに、ボーンクラッシャーはそのジェットロンの顎を鷲掴みし格納庫の隅へと連れて行った。
そこは丁度死角になっている所で、慌しく動き回る仲間からは見えなくなっていた。
連れて来られたジェットロンは、思わず背中に冷水をかけられたような感覚に陥る。いくら自分が戦闘力の高いジェットロンでも、オプティマスと同等の体格を持つボーンクラッシャーとやりあうのは地上ではかなり不利だからだ。
逃げようにも顎を強く掴まれ、声を上げる事すらできない。

『 秘密の話なんだろ?・・・・・さぁ、思う存分話しな・・・・正直にだ。』

顎を強く掴まれているせいで、話そうにも声を発する事もできない男は必死にもがきその事を伝えようとする。その様子を表情も無く見据えながら、ボーンクラッシャーはホンの少し指先に力を加えた。その途端ミシ・・・と嫌な音が微かに鳴る。
その行為に男は怯え、眼を見開き助けを求める・・・ボーンクラッシャーはその瞬間を待っていたのだ。あのジェットロンの仲間ならば、ここで時間を稼ぐように言われ話し掛けて来たと考えて良い。ならば自分はその時間とやらを短縮すれば良いだけの話だ。
こうして本気で恐れさせ、余計な事を考えさせないように・・・余計な事をしないようにしてやれば良い。
長年メガトロンに仕え覚えた事のひとつだった。

『 ・・・・あぁ・・・・悪ぃ、これじゃ話せないよなぁ?』

そう言いながらゆっくりと手を放す。
ようやく解放された口元と顎の痛みに苦しむ男に、ボーンクラッシャーは追い討ちを掛ける。

『 俺は気が短けぇんだ・・・・早く話さねぇと、その痛みすら感じなくなるぞ?』

唸るように低く声を落としそう呟くと、男は手で口を覆いながら待てと言う仕草をしてみせた。そしてたどたどしい口調で必死に言葉を綴り始める。

『 ま・・・待て・・・待ってくれ・・・俺はただ・・・・。』

声が振るえ動揺する姿に、ボーンクラッシャーは心でほくそ笑んだ。

『 ただ・・・・何だ?』

『 た、頼まれただけだ!ここで足止め・・しろって・・・そうしたら良い物が・・見れるって・・・・・。』

本気で怯えている事を確認し、その口調と態度から事実を言っているとボーンクラッシャーは確信した。そして同時に不安と僅かな動揺を感じる。

『 良い物?・・・・何だそりゃあ?』

『 え・・・あ・・あの・・・』

『 はっきり言え!?』

言い淀む男の足首を掴み、思い切り握り絞める。すると男の脚はまるで小枝のように脆く折れ曲がり、あまりの激痛に上がる筈の悲鳴も掠れたものにしかならなかった。

『 ・・・・・もう1度だけ聞くぞ・・・?良い物ってなぁ何だ・・・・?まさかとは思うが、スコーとバリケードの事じゃねぇだろうなぁ・・・・?』

そう言いながら男の折れた脚とは違う、もう一方の脚に手を伸ばす。男の怯えはその瞬間に頂点に達し、与えられる痛みを回避する為に全てを吐露し始める。

『 止めろ!?・・・・頼む、や、めてくれ!?・・アンタの言う通り、スコルポノックとバリケードのあられもない姿を見せてやるって・・・・今頃・・・2人をこの基地の北側に追い詰めてる・・・筈・・・。』

男の言葉にボーンクラッシャーの怒りが爆発する。

『 !?・・・・・そうかよ・・・・・・んじゃあ、手前ぇにもう用はねぇな・・・消えとけ・・・。』

そう告げられ放された足に安堵したのも束の間・・・次の瞬間に男の顔はボーンクラッシャーの拳で醜くひしゃげ、その意識は暗闇の中に堕ちて行った。壊れた人形の様に小刻みに痙攣する男の身体に唾を吐き、急いでその場を後にするボーンクラッシャーはスコーに通信を開始し始める。

《 スコー・・・・スコルポノック!》

始めのうちは雑音が返ってくるだけで、返事は全く聞こえてこなかった。だがボーンクラッシャーが基地の北方向へ移動を始め暫くしてから、急にスコルポノックの声が微かに聞こえ始めて来る。

《 ・・・・・ッシャー・・・・ボ・・ンクラ・・・・聞・・・・て・・・。》

《 スコーか!? いま何処だ!? 》

ノイズまみれの音だったが、確かにスコルポノックの声だ。ボーンクラッシャーの足が早まる。

《 ボーンクラッシャーかい?・・・・アンタこそいま何処にいるのさ!? 》
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