(´ω`)φ【wammy's invention laboratory】


□「チョコのお味は? 《 TF Version 》」(さる作)
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先ずは一篭受け取ったスタースクリームは、背後から押し寄せる輩に一瞬で押し潰され見えなくなってしまった。辛うじて声だけが周囲に響き渡る位だ。

『うわぁぁぁぁぁぁ・・・・・・き、貴様等落ち着かんかぁぁぁぁぁぁ・・・・・!?』

オプティマスの話を聞き始めた辺りから、皆は一斉にバレンタインの意味を検索し貰えない男の哀愁を知ったのだ。例え友好の意を込めた物だとしても、相手があのオプティマスからの・・・しかも手作りとあっては譲る訳にはいかない。まぁ、実際作ったのはラチェットなのだが・・・・・知らぬが仏である。

『おぉ・・こんなに喜んで貰えるとは・・・・。』

オプティマスは残った篭を抱えながら、嬉しそうにそう呟いた。その背後から騒ぎを聞きつけたメガトロンが現れ、事の惨状を見るなりオプティマスに問い詰めた。

『・・・・・まったく何の騒ぎだ!・・・・オプティマスここで何を・・・・?スタースクリーム・・・・?・・・・・皆はいったい何を奪い合っているのだ!?オプティマスも何を後生大事に抱えている・・・・・どう言う事なのか説明しろ!!』

午後の静かな時間に騒がれたせいで、メガトロンは少々不機嫌になっていた。その様子に今迄大騒ぎだったディセプティコン達も、一気に静まり事の成り行きを見詰めている。

『あ・・・す、すまない。実は地球の慣習で友人や恋人が2月にチョコレートを贈り合うのがあって・・・我々も友好関係にある訳だし・・・その・・・・人間達が贈り合うのを観察していたらとても良い慣習だと思った物でな・・・。』

耳を垂れ心底申し訳なさそうに言うオプティマスに、メガトロンの視線は釘付けになっていた。よくよく見れば随分と可愛らしい篭に、甘く香るエネルゴンチョコを詰め抱え立っているからだ。誰の趣味かは分からんが、良い物を見れたとメガトロンは口の端を上げる。そして項垂れるオプティマスを余所に、すぐさまバレンタインと言う物の意味を検索し始め・・・・納得した。

『・・・・要するに、親睦を兼ねた祝い事をしたかった・・・・と言う事か?』

メガトロンの口調が落ち着きを持った事に気付いたオプティマスは、顔を上げると横目でメガトロンを見詰め小さく頷いた。
普段ならば見せない恥ずかしそうなその様子に、メガトロンは益々嬉しそうに口元を緩める。そしてオプティマスの持っている篭に付いているタグに気付き、そこに目をやると何か悪戯でも考え付いたかの様に赤い目を細めた。

『・・・・で?・・・・この篭はワシの物なのか?』

『え?』

突然の問いに、オプティマスは戸惑った。その様子にメガトロンは、オプティマスの持つ篭を指で突きながらもう1度同じ事を聞き返す。

『だから、これは友人や恋人同士の遣り取りなのだろう?お前は1つ、あやつ等に篭を渡した・・・・友好の印としてな。そしてここにもう1つ篭がある・・・・これはワシを恋人と認めての贈り物なのだろう?』

それを聞いたオプティマスの顔は一気に赤く染まった。そしてその瞬間、何故ラチェットが篭を2つ渡したのかの意味を把握したのだ。公には認められないが、こう言う時には便乗しても良いですよと言う暗黙の了解が含まれていた事もその瞬間に理解した。

『・・・・どうなのだ?』

どこか勝ち誇ったかのようなメガトロンの顔に、オプティマスは何か言い返そうとするが言葉が出てこなかった。メガトロンの顔がとても嬉しそうに見えたからだ・・・・。そして自分もメガトロンの事を思い出した事実がある。違う等と言える訳が無かった。

『〜〜〜〜・・・・お前のだ・・・・・。』

せめてもの抵抗でぶっきら棒に言ってはみたものの、そんなささやかな抵抗などメガトロンには無駄な事だった。オプティマスの答えに満足したのか、メガトロンは受け取るべく手を差し出し・・・・そのままオプティマスごと抱き抱えた。それに驚いたオプティマスは、腕の中でジタバタと暴れる。

『な・・・・・何を・・・・!・・降ろせ!?降ろしてくれ!!』

だがメガトロンはそんな暴れるオプティマスを力強く押さえ込み、軽くキスをする。そのショックで大人しくなったオプティマスに向い、メガトロンは何とも憎たらしい言い方でこう告げた。

『その篭はワシの物だとお前は言ったな?・・・その篭に付いているタグはEat Me"と書いてある・・・その篭を持っているお前はワシの恋人なのだから・・・・意味は分かるだろう?』

その言葉に慌てて篭を確かめるオプティマスは、確かにそのタグが付いている事に気付いた。

『・・・・付いていたろう?・・・では、ワシの部屋へ行こうか・・。さぞかし美味いチョコを味わわせてくれるのだろう?』

『ち・・・違・・・いや、確かに恋人と言うか・・・こんなタグが付いてるなんて知らなかったんだ・・・・!?』

もう溶けるんじゃないかと思う位真っ赤になったオプティマスを抱え、メガトロンは足取り軽く自室へと戻って行く。それを温かく見詰めながら、ディセプティコン達は甘いチョコを頬張っていた―――。



『ラチェット、双子が大事にしてる篭を知らんか?サムが読んでくれた話で不思議の国のアリス"だか言う・・・・。』

アイアンハイドが、未だチョコ作りに専念しているラチェットに聞いている。するとラチェットが少し考えてからこう答えた。

『・・・・あぁ、あの篭ならオプティマスに持たせたが?』

『オプティマスに?何故だ?』

『いや・・・チョコレートを沢山作り過ぎたのでな、ディセプティコン達にバレンタインの贈り物をな。バレンタインとは・・・。』

『恋人同士のイベントだろう?最近は友人同士でもやるようだが・・・・。』

自慢げに語ろうとするラチェットの言葉を遮り、アイアンハイドはあっさりと答えた。

『おや・・・知っていたのか・・・・つまらんな。』

『レノックスに聞いた・・・・って、1人で向こうの居住区に行かせたのか!?』

『おや?いけなかったかね?友好の印だから、大丈夫だと思うが?』

『いけなかったのかって・・・・・・・ちょっと待て、篭をオプティマスに持たせたって言ったよな・・・・・?』

『言ったが?』

ラチェットはアイアンハイドの顔が、蒼褪めて行くのを目撃した。

『あの篭にはEat Me"って書いてあんだぞ!?』

『大丈夫だ、嫌がれば無理に手は出さんよ。』

『やっぱり確信犯かぁぁぁぁぁぁ!?・・うぉぉぉぉぉ、メガトロ―――ンっ!?手ぇ出したら、ぶちのめ―――――すっ!!』

ラチェットが見送る中、あっと言う間に駆けて行くアイアンハイド・・・ラチェットは指に付いたチョコを舐めながら、その姿を笑いながら見送った――。       《完》
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