kira事件、特別捜査本部・二千五◯二号室


□「In the ATMOSPHERE」(さる作)
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『・・・分かりました、一緒に行きましょう・・・但し、ライト君が眠っている僅かな時間だけです。有効に使わなければいけませんね・・・方法を選ばなければ・・。』

『方法・・?』

『えぇ、私達にはもう肉体がありません・・貴方が望む様に触れる事は出来ない・・しかし二アが貴方と言う存在を僅かながら感じたなら、何かある筈です。』

確かにそうだ・・触れる事はもう出来ない・・其れは思い知った。思い知っても尚、求める心は既に行き場所は無いと認めたくは無かった。生きていても・・死しても・・もがく事しか出来ない俺は無様だ・・−−。考え込むLが、ふと俺の眼を見詰めた。俺もLの眼を真っ直ぐに見詰め返した。その時間は一瞬の様な感じもした・・永遠の様な感じもした・・・Lは眠るあいつの髪を愛しそうに撫で、そして口を開いた。

『・・上手く伝わるかどうか分かりませんが、やってみましょう。』

不敵に微笑むその顔は、生きていた頃の“L”の物だった。・・・Lが考えたのは二アの意識の中に入り込むと言う物だった。簡単な様で難しいとLは言った。

『ライト君もそうでしたが、ひとつの事に捕らわれてしまうと何も聞こえなくなるらしいんです・・その世界を無理に抉じ開けようとすると、崩れてしまいそうになるんです。ライト君の時は孤独に耐え切れなくなるまで待つしかありませんでしたが、二アは貴方の存在を感じ取れた。心が虚ろな今がチャンスかも知れません・・行きましょう。』

Lはそう言うとオアシスの中に有る華を一輪摘んだ。不思議に思う俺を他所に、Lは華にキスをしてあいつの傍に置いた。より深く安らかな寝息を立てるあいつを優しく見詰め、風の様に囁く。

『・・必ず戻りますから、眠っていて下さいね・・。此れは、お守りです。』

華が揺れ、小さなLが現れた。

『良いですか?貴方は最強の騎士です。私が戻るまでお願いしますよ?』

Lは驚く俺に微笑みかけ、手を取ったかと思うと空高く舞い上がった。混乱気味の俺にLは言った。

『相変わらず頭が硬いようですね?私達に出来ないのは生者との接触です。魂は自由に生きれるんですよ・・・メロ。』

自由に・・?生きる・・?じゃあ、二アは・・?抱き締めたいだけの俺・・生きていた時の様に縛り付ける存在にはなりたくない・・・愛しているから・・・。瞬く間に二アの元に舞い降りると、Lは確認する様に俺に言った。

『良いですか?貴方の願望を全て叶えるのは無理です。本当に願う事を、強く・・強く想いなさい。』

暗い部屋で出口の無い思考に捕らわれている二ア・・俺は暫く其の姿を見詰めていた。痛々しい・・俺の事だけを考える二アを眼に焼き付けておきたかった・・何て残酷で・・何て甘い時間・・・其の時、静かに扉が開いた。入って来たのは、二アと共に捜査を続けて来た捜査官だった。心配そうに・・困った様に二アに近付いて行く。凍り付いた空間に暖かみが宿り始めた・・。

『彼が話し掛けた時がチャンスかも知れません・・良いですか?』

Lの誘いに俺は頷いた。奴が心からの言葉で二アに話し掛ける。

『二ア・・?如何しました・・?気分でも悪いのですか・・?』

次の瞬間、俺達は二アの心の中に入り込んでいた。其処には何も無かった・・・ただ、無数の色が取り留めなく渦を巻いていた。あいつの世界よりも寂しい・・悲しい世界だと思った。

『あそこへ・・!』

Lが指差す先に誰も乗っていないメリーゴーランドが、悲しげな音を立てて存在していた。硝子で出来た儚い・・綺麗な・・・

『此れは、貴方に会いたいと言う二アの純粋な心・・少し私もいるみたいですね・・・此れならきっと届きます。準備は良いですか?』

『良いぜ・・やってくれ。』

俺の声を合図にLが手品の様にポケットから両手に抱え切れない位の華を出し、辺りに振り撒いた。噎せ返る程の香りに包まれて二アが意識を戻し始める。

『今ですよ!?』

俺は有りっ丈の想いを、二アの心の大気に向けて開放した。

『お前は、お前らしく・・好きな様にに生きりゃぁ良いんだよ、バーカ!?』

其の時確かに・・二アが俺に気付き・・・見詰めた。風に華が舞い上がり、気が付くと俺達は二アと二アに寄り添う男を見詰めていた。二人が手を取り灯りの燈った廊下に出るのを見て、俺達はLを待つあいつの世界に戻った。あいつは未だ眠り続けていた。傍に小さなLが座っている。

『ご苦労様です、ただいま戻りました。』

Lの其の言葉で、小さなLは華に戻り風にそよいだ。Lはあいつの横に腰掛けると、俺を見た。

『・・良く出来ましたね・・貴方は立派ですよ。さぁ・・行きなさい・・。』
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