(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「君に何度でも恋する」(さる作)
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灯りが落とされたメディカルルームで、ロディマスはふと目を覚ます。
自室ではなくメディカルルーム……その事がさっきの残酷な宣言が、現実なのだとロディマスに突き付ける。
その事に身を捩り唇を噛めば、何処からかラングの声が響いた。

『気付きましたか、ロディマス……気分は如何です?』

ラングの柔らかな言葉に、ロディマスは苦笑し口を荒くする。

『――最悪だよ――……分かってんだろ?』

意地の悪い言い方だと自分でも分かっている……けれど止める事など出来なかった。

『あいつが……マグナスが皆……皆の事……俺の事忘れちまったんだぜ? 頼んでた何もかも……ここまでの旅であった事全部……。』

―― オレト スゴシタ ジカンモ ――

悔しい……悔しくて悲しい……。
後悔と自責の念で潰されそうだった。
顔を手で覆い、小さな嗚咽を漏らす。
その震える手にラングはそっと触れ、言い聞かせるような口調でゆっくりと話始める。

『……そうですね。それはとても悲しい事です……でもねロディマス。彼は……ウルトラマグナスは、たったひとつだけ覚えていた事があるんですよ? まるで記憶全てと引き替えに、忘れたくない事を守ったんです。そんな頑張り屋のウルトラマグナスは、何を守ったと思いますか?』

『……?』

手を外し、潤んだ瞳でラングを見詰めるロディマス。
そのロディマスに、ラングはニッコリと微笑んだ。

『彼が記憶全てと引き替えに覚えていたのは、貴方への恋心ですよロディマス。』

ラングの言葉に驚くロディマスに、ラングは悪戯っぽく言葉を続けた。

『貴方とウルトラマグナスがお付き合いをしているのは、薄々感じてはいましたがこんなにも深く貴方が想われているのは知りませんでしたよ。微かにでも気持ちが残るのはラチェットが言うには、信じ難い事だそうです。けれどウルトラマグナスの中には、確かに貴方を想いやる気持ちが残っていたんですよ! 』

『嘘…だ。』

絞り出す声に、ラングは優しく手を握る。

『嘘ではありません……。私は精神科医ですよ? どんな些細な心の変化も見逃す筈無いでしょう? 貴方がガラス越しに泣き叫んだ時……ウルトラマグナスは、貴方が心配でならないと言いました。貴方を……守りたいと……素晴らしい事だと思いませんか!?』

『……でもあいつ……俺の事……分からないって……。』

瞳を潤ませ悲しげに言うロディマスに、ラングは小さく頷きこう告げた。
その言葉がロディマスの気持ちを和らげる。

『分からないなら、もう一度恋をしたら良いんです……。直ぐに元通りにはならなくても、残されていた恋心がきっと力を分けてくれます。またドキドキしたり、ワクワクしたり……時には喧嘩したりすれば良いんです。焦らず……ゆっくり育てていきましょう。』

ラングの言葉に、ロディマスは自分の中に光が差した気がした。
余りにも辛くて見えなかったけれど、いま1番不安を感じているのはウルトラマグナスそのものなのだ。
甘えてばかりいた自分が、今度はウルトラマグナスを支えれば良い―――!?

『……ラング……あんた名医だったんだな……。』

ようやく笑みを取り戻したロディマスに、ラングはニッコリと笑いこう返した。

『おや? 知らなかったんですか? ……さあ……ウルトラマグナスが貴方と話したいと言ってました。』

『……ありがとうラング……。』

そしてロディマスはウルトラマグナスの元へと急ぐ。
何を話せば良いのかなんて分からない。
けれど会いたいと願う気持ちがあるなら、自然に言葉は生まれてくる。
ロディマスはウルトラマグナスの眠る、メディカルルーム奧のベッドへと近付いて行った。
意外な事にウルトラマグナスはデータパッドを眺め、何か作業をしている。
記憶を失っても真面目な奴だと思い、記憶が無いからこそ日常とおぼしき事をしているのだと思い直す。
そしてゆっくり近付き、何時ものように笑いながら声を掛けた。

『よぉ…マグナス、相変わらず真面目だな?』

その笑顔にウルトラマグナスも微笑し、持っていたデータパッドを置くとロディマスに手を差し伸べた。

『ロディマス……君と沢山の話がしたい。』

差し出された手に自らの手を重ねる。
安堵感と共に、恋しさが沸き上がる。
ラングの言うとおり……もう一度恋をすれば良い。

『ああ良いぜ……いくらでも話してやるよ。』

僕は君に何度でも恋をする―――。       《完》
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