(*◎_⊃◎)つ【ruvie's contrivance institute】


□「無自覚なブラウンシュガ-」(さる作)
2ページ/2ページ

口を押さえたまま、何やら小刻みに肩を震わせている。
皿を見るとまだ半分も食べていない。
もしかして一口目で、舌を火傷したのかと思い声を掛けてみた。

『・・・ロディマス・・・?』

ウルトラマグナスの声に顔を上げたロディマスは、涙目になりながら何かを訴えている。
しかし声が小さくて、直ぐには聞き取れない。

『・・・・い・・』

『・・? ん? 何だね?』

心配そうに肩に手を添えるウルトラマグナスに、ロディマスはしがみつき何度か軽く叩いた。
何か苦しいのか?と慌てはじめるウルトラマグナスに、ロディマスは何とか届く声でこう訴えた。

『・・・・・・か・・辛い・・・』

辛い・・?辛いって何が・・?
思わぬ答えに?しか浮かばないウルトラマグナスを他所に、ラチェットがキョトンとしながらこう声をかけた。

『何だ、お前さんタバスコ苦手だったのかね?』

豪快にピザを頬張りながらそう言うラチェットの手元にはタバスコがあり、その中身は半分近く無くなっている。
さっき店員が持ってきた時は、開封して間もない様子だったのを思い出しウルトラマグナスは青くなる。

『ロディマスってば、案外子供なんだねーww 僕だって平気なのに。あ、ラチェットもう一枚作ってー!もう少しタバスコ足してね♪』

得意満面にそう言い自分の容器をラチェットに手渡すティルゲイトの言葉に、ロディマスはムッとし頬を赤らめながら反論する。

『こ・・・・・子供扱いすんなよ!思ったより辛かったからビックリしただけで、この程度の辛さなんか平気に決まってんだろ!?』

そして覚悟を決めたかの様な表情を浮かべたかと思うと、残りのピザを思い切り頬張り何度か口を動かし・・・止まった。
既に顔は真っ赤で、涙も浮かんでいる。
鼻息も荒いし自分でもどうにかしたいらしいが、噛めない・飲み込めない状態に陥ってしまっているようだった。
どうにも意地っ張りだなとラチェットとティルゲイトは思いながら、このピンチをどう切り抜けるのか見守る事にした。
そんな時・・・同じ様に見ていたウルトラマグナスが小さく溜め息を付き、ロディマスの顔を覗き込むとそっと囁いた。

『・・・ロディマス、我慢しないで口から出すんだ。ほら・・・皿の上が嫌なら、私の手の上で構わないから。』

そのウルトラマグナスの言葉にロディマスは小さく首を振るが、その目は涙で潤み今にも零れ落ちそうだ。
それが可愛くて思わず頬を緩むが、直ぐに気を引き締め直し何枚か紙ナプキンを差し出しながら再度言う。

『我慢して食べても美味しくないだろう?折角君が連れて来てくれた店なのだから、君にも美味しく食べて欲しいんだ。さぁ・・言う通りにしてくれ・・・。』

宥める様に言われ、やや不満気な表情を浮かべるものの限界だったらしい。
ロディマスは紙ナプキンで口元を隠しながら、ウルトラマグナスの手の上にピザを吐き出した。
それを微笑しながら受け手早く処理をすると、ウルトラマグナスは徐にティルゲイトへと話し掛ける。

『ティルゲイト、すまないが残っていたら一口飲み物を分けてやってくれないか?』

『え? あ、良いよー。』

そう返事をしロディマスにアイスココアを差し出した瞬間、奪い取られズゴッ!ズゴゴゴゴ〜〜〜!?と言う爆音と共に飲み物が消えていくのを目撃する。
その早さに驚くわ、全部飲まれてしまうわ、飲み終わった後の幸せそうな表情に笑いそうになる。
複雑な感情で声が出せないティルゲイトを他所に、ウルトラマグナスは直ぐに新しい飲み物を注文した。

『君・・・すまないが、アイスココアを2つ追加・・・あとピザをもう1枚頼む。』

『はい、かしこまりました。』

そして空いた皿やグラスを下げさせ、気まずそうにしているロディマスの頭を優しく撫でた。

『こう言う時間を過ごす時くらい、もっと気を抜いて構わないんだぞ?』

『別に・・・抜いてない訳じゃねぇよ・・・』

バツが悪そうに唇を尖らせながら、そう答えるロディマスの顔はまだ赤かった。
恥ずかしいのと辛さが混ざってるような感じに見受けられる。
そうした表情を浮かべながら、少し睨むようにラチェットへとロディマスは視線を流した。
その視線にラチェットは軽く手を上げ、謝罪の言葉を口にする。

『ああそうだな、私が悪かった。今度から勝手にタバスコをかけたりしないから、お前さんもそう言う目で見なさんな。』

『・・・絶対だからな。』

何だか子供を苛めたら気持ちだとラチェット思いながら、クスリと笑いデータパッドに視線を落とした。
しかしあのウルトラマグナスが、ああもロディマスに甘いとは思わなかった。
ここが船内ではない事で、ウルトラマグナスの気も緩んでいるせいだろう。
それはティルゲイトも同じで、少し驚いているようにも見える。
だが・・・この後店員が新しい飲み物とピザを運んで来ると、その甘やかしが更にエスカレートするとはラチェットもティルゲイトも想像だにしなかった・・・。

『お待たせ致しました。』

そう言いながらアイスココアを2つ、ピザ1枚をテーブルに置く。
そのうちの1つをティルゲイトに手渡し、うやうやしくピザを切るウルトラマグナスは柔らかい声でロディマスに声をかけた。

『ティルゲイト、ありがとう・・すまなかった。さぁロディマスもこれを飲んで・・ピザも熱いうちに食べると良い。』

『何だよぉ・・ガキ扱いかあ?・・・・まぁ・・・食べるけど・・・。』

未だ辛さの残る唇を尖らせながらそう言うロディマス。
しかしその顔は何処か嬉しそうだった。

『子供じみた真似をしていたのは君だろう?そこが君らしいとは思うがな・・・。』

クスクス笑いながらピザを1枚皿に取り目の前に置いてやると、ロディマスは上目遣いをしながら照れ臭そうに笑う。
そして取り分けられたピザを頬張り、嬉しそうにウルトラマグナスを見詰めた。
そんなロディマスをウルトラマグナスもまた嬉しそうに見詰め、頬に付いたソースを指で拭い舐めとる。

『ん・・・マグナスも食えよ。ほら、ここ具が一杯乗ってるぜ。』

今度はロディマスがピザを1枚手に取り、そのままウルトラマグナスの前に差し出した。
一瞬それに躊躇するウルトラマグナスだったが、ロディマスの嬉しそうな笑みに負けそのまま噛じり付き笑った。
しかしそんな目の前の光景を、砂を吐く勢いで見せられている方は堪ったものではない。
乗組員に話しても、絶対に信じて貰えないだろう。
あの堅物ウルトラマグナスが、信じられないくらい甘い笑顔でロディマスの差し出したピザに噛じりついてついているのだ。
大概の事は受け流せるラチェットでも、この光景は中々の受け入れがたかった。
しかも隣のティルゲイトが、何時もの天然ぷりでニコニコと笑いながらとんでもない事を囁いた堪らない。

『ふふふ・・本当に仲良いんだねぇ。あーあ・・・僕もサイクロナスと来れば良かったなぁー。そしたらアーンとかしてもらえたのになー。』

『・・・・・そうなのか?』

『うん! 僕もサイクロナスにやったげるよ。』

『・・・・・そうか。』

目の前では未だ互いから視線を外さず、汚れた手を拭ったり耳元で囁き笑い合っている。
そこへ告げられたサイクロナスの何とも想像しにくい姿に、ますますラチェットの表情が曇った。
取り敢えず今すぐに、この甘い状況から脱け出したいと願いウルトラマグナスに声を掛ける。

『ウルトラマグナス・・すまないが私は先に船に戻っても良いかね? 』

そのラチェットの声にウルトラマグナスは顔を上げ、ここが2人きりの場所ではなかった事を再認識させた。
当然・・・顔色が一瞬蒼くなり、すぐさま真っ赤へと変化する。

『カルテの整理が終わっていなかったのを思い出してな。じゃ、まぁ、ゆっくりな。夕刻には帰艦してくれ。』

『あ、ぅ・・・ド、ドクター!』

『何だよぉラチェット、ちゃんと終わらせてから来いよなー。 んーでも・・まぁ良いや、土産持ってくから頑張ってな?』

ウルトラマグナスの腕に寄り掛かりながら、ロディマスは屈託ない笑顔を浮かべながらそう言った。
気付いてないのか・・悪びれてない笑顔に、ラチェットは困ったような笑顔を浮かべながらその場を離れて行く。
背後からはロディマスの楽しげな声だけが聞こえてきた。
その声を聞きながら、ラチェットはふと思った。
甘い恋人同士なんてものではないなと。
廻りも巻き込んで焦げ付かせる、とんでもないものだなと―――。
取り敢えず皆には黙っておこうと溜め息を付くも、置いてきたティルゲイトによって帰艦して30分後には2人のラブラブ度が全員に知る事となる。       《完》
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ