kira事件、特別捜査本部・二千五◯一号室


□「inner universe」(さる作)
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―私の目の前に転がる初老の男・・・間も無く息絶えるであろうこの男の名を書いたのは私・・―。死神として道から外れ、唯一人の少女を助ける為だけにノートに名を書き、自らも砂と為る運命・・だが、無駄死にはしない。この男と命を懸けた約束がある・・。之であの子は罪に問われず自由に生きて行ける。あの夜神月から守る事さえ出来れば、何の未練も無い・・。私達の読みに間違いが無ければ、あの男は自分の身の安全のために当面手出しをせず生かしておくだろう。ああ・・・、記憶が甦って来る・・祈りさえ忘れた者への哀れみに神々が見せる。真実を・・・そして告げる罪は償われたのだと・・・。私があの子の許を訪れたのはジェラスが砂と化した時の事だ。死神界で唯只管にあの子を見つめ心配していたジェラス・・本来あの子が死ぬ日、彼は私の目の前であの子を助ける為だけに何の契約も関係も持たないジェラスがとっさにした“禁忌”・・私には其れが理解出来なかった・・何故、彼が死ななければ為らなかったのか・・?何故、私を置いて逝ったのか・・今ならば解る・・私は、私達は遥か昔にデスノートを使い、そして、恐ろしさ故に放棄した咎人・・神の意志に、自然の摂理に逆らいその報いとして地に落ちた者。私は、過去の私の家族を破滅に導き、父と母を追い詰めた憎いあの男の名を書き、殺した。本当に憎かった。許せなかった。・・死んだとニュースで聞いた時、思わず大声で笑ってしまった程に・・・いい気味だとも思った。死顔を見て勝利の余韻を味わおうと名を偽り男の葬式に忍び込んだのも軽い気持ちからだった・・・しかし・・そこで見たものは嘆き悲しむ一人の老婦人と其れを懸命に支えようとしている一人の幼子の姿だった・・・。周りの人々が囁く。

「可哀想に・・あの家嫁さんが死んで、息子一人でばーさんとあの子の面倒見ていたんだろう?一人息子に先立たれて、しかも子供もまだ小さいのになぁ」

「裏で悪どい仕事してたけど、家族には優しかったしねぇ・・俺は地獄に行くけどお袋と息子には極楽に行って欲しいから頑張ってんだって・・いつ殺されても仕方ない家業だからって、せめて金だけでも残してやるんだって・・・可哀想に・・」

何故?何故、可哀想なの!?そいつに苦しめられた人々がどんな思いで暮らしているのか解らないくせに!!周りの人々の言葉に戸惑い、苛つく私は、大声でそう喚き散らしたかった。その時、私は男の息子と目が合った。大きな幼い瞳が悲しげに潤み、何か言いたげに私を見つめる。その傍には動かぬ息子の名を呼ぶ老婆が人々に支えられ佇んでいる。解る筈は無い。私が男を殺した事を知っているのは・・・気が付くと私は、その場から逃げ出していた。理不尽だと思った。罪悪感などある筈も無かった。なのに何故、私は走っているの?・・・いいえ、私は怖いのだ。あの子供の目が全てを見透かしてる様で、此方を指差し“お前のせいだ”と叫ばれそうなのが怖いのだ・・。考えもしなかった。男にも家族が居るであろう事を・・・違う、考えたく無かったのだ。考えてしまえば出来なくなるのが解っていたから・・!男さえ消せば私達は幸せになれると、父も母も諍わ無くて済むのだと、自分達の幸せだけを考えていた・・・。其れが当たり前だ、そんなに気に病む事は無いさと死神が言う。お前は良い事をしたのだと・・。そう思いたかった・・でも、あの男が死んでも状況は変わらなかった。ほんの暫くの間は平穏な日々を送っていても結局あの男の代わりが来て又、前と同じ苦しみの日々を送るだけ・・何も変わらなかった。変わったとするならば私自身が悪夢にうなされる日が続いたと言う事だけだった。あの子供の目が、私を攻め続ける。苦しかった。忘れたくて私はノートを手放した。

・・・其れからの日々は、とても楽だった。生活は苦しく、結局家族は離散したが懸命に働き、数年の後に私は真の自由を得た。日の当たるきれいな部屋、優しい友人達に囲まれ幸せだった。風の噂で父は田舎でひっそりと暮らしているらしいと聞き、いつか会いに行けたらと願った。そんな時、私は一人の男性に出会った。優しい物静かな人だった。私達は恋に落ち、彼は二人で父の田舎へ行こうと言ってくれた。時折、妙な不安感に襲われる以外はとても幸せだった。父にも祝福され、私達は結婚した。1年後には妊娠し、待ち望んでいた子供も生まれた。女の子だった。彼も父も大喜びだった。二人で取り合う様に抱き締め愛しんだ。私達は沢山の写真を取り、幸せの痕跡を残そうとした。・・・そうしなければいけない様な気がした。私達は普通の平凡な家族としてずっと幸せに暮らした。それから私達の運命、第2子が生まれた時父が他界した。生まれたばかりの孫の顔を見た次の日に、交通事故にあったのだ。しかし、死に顔は寝むっている様に静かだった。
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