kira事件、特別捜査本部・二千五◯一号室


□「I do what I do」(さる作)
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熱いシャワーを浴び、髪を洗う。外からの汚い物全てを洗い流し、新しい自分になる・・そして生まれたままの姿で鏡の前に立ち、こう呟く。

「・・I do What I do・・」

これで良い・・今から私は獣として獲物を捕らえに行く・・取り合えず差し障りの無い服装で、礼儀に欠かない程度の化粧で良いわね。初対面はお互いの人間性を見る為でもあるのだし、“女”を前面に出す必要性は無いわ。・・どんな相手でも臆すものか・・仕上げの口紅を引き、愛猫に別れを告げ部屋を出る。夜の静間に響く足音が荒振れていた気持ちを少しずつ落ち着かせて行く。私の直ぐ熱くなるこの悪い癖は直さなければ何時か命取りになる・・そんな事を考えていた。暫く歩いて行くと待ち合わせの店に到着した。何の変哲も無い、どちらかと言うと質素なBarに見える店に私は指示通りに入り、マルガリータを注文した。鞄を置きカウンターに腰掛け周りを窺うと、私の他には初老の男性が一人と大柄な男と派手めな女のカップルが大声で笑っているだけだった。・・まさかあのカップルは違うだろう・・そうするとあの老人が?・・取り合えずまだ待ち合わせの時間には早いし、特に危険もなさそうだし落ち着いて待つとしましょう。ふっとため息を付き、グラスに口付ける。冷たい液体と塩の粒が喉に流れ込んでくる。お酒は飲ま無い方だけど此れは中々美味しい飲み物ね・・グラスに付いた口紅のピンクが以外に目立っているのが気になって指で拭った。

「・・今夜はお待ち合わせで?お嬢さん」

カウンター越しに男が語りかける。私は訝しげに男を見つめ、形だけの微笑を作り答えた。

「ええ、今夜は素敵な紳士と待ち合わせなの。そろそろ来る筈だわ。」

男は拭いていたグラスを置き、微笑みながら言う。

「素敵な紳士とは光栄の至りですな。」

驚いている私を尻目に男は続ける

「私は、“L”の代理人で名をワタリと申します。今日は貴女を“L”の元にお連れする様申し付かっておりまして、此処でお待ちしてお待ちしておりました」

男は深々と頭を下げ、カウンターから出て私の横に立ち案内をしようとした。

「待って!・・貴方が“L”の代理人だと言う証拠は?証明出来ないのなら行く訳にはいかないの。」

そう言う私に男はにっこりと微笑み、一枚のカードを差し出した。そのカードには“L”の文字と私のIDナンバー、フルネームが書かれていた。裏を見ると私の顔写真が張られていた。

「この通り前もってお知らせ頂いておりまして・・此れは貴女の上司からの伝言です。」

もう一枚カードを出し、私に確認する様に促す。私は男からカードを受け取り文字に目をやった。

「・・・分かりました。貴方に従えとの命令です。どうぞ私を“L”の元にお連れ下さい。」

私は唇を固く閉じ、睨む様に男の方を見据えた。悔しい・・・“彼に逆らう事は組織に逆らう事と思いたまえ”・・自分が出世すると言う下らない妄想しか抱けない男が何故私の上司なのか・・・!?私のその様子に怒るでもなく、何を言うでもなくそのワタリと言う人は店の裏口の方に向かい始めた。私は、彼の後を無言で付いて行く。ドアの前に来た時、彼は私の方に向き直り静かな声でこう言った。

「・・お若いのに激しい物をお持ちの方ですね。そして大変用心深い・・・貴女の様な人をお待ちしておりました。“L”もお喜びになることでしょう。」

そして彼はドアを開ける・・・目の前には小さめの黒い車が一台止まっていた。私は促されるままに助手席に座る。ワタリが乗り込み、車が動き始めた時後部座席の方で何かが蠢いた。バックミラーで様子を窺うも余りの暗さに確認が出来ない・・ワタリが慌てている様子も無い事から敵では無いだろうとは思うが分からないままと言うのも性に合わない。私は、ワタリの方を見ずに問いかけた。

「・・先刻から後ろでコソコソと隠れているのは何方ですか?」

彼も又こちらを見ずに答える。

「ん?・・あぁ・・失礼致しました。いけませんよ“L”女性を驚かす様な真似をしては・・。」

「・・すみません、脅かすつもりは無かったのですが」

顔は見なかったが、若い男の声だった。正直驚きは隠せなかった・・以前から耳にする“L”と言う人物は年配の男と言う話も在れば若い女と言う者もいる・・正体不明の人物なのだ。しかし其の完璧な推理力や洞察力は並でない事から恐らくはあらゆる事に対して経験豊かな30〜40代の男性で在ろうと推測されていた。今この車を運転しているこのワタリと言う男こそが私達の思う“L”其の者なのに実際はこんな若い幼い声の持ち主等と誰が想像するだろうか。私の困惑振りを感じ取ったのか幼い“L”はこう続けた。
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