京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「ZANTEN - 残天 - 」(さる作)
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子供の無邪気さには罪が無い等と良く言いますが、私に言わせればあれ程残酷な事はありません・・・私自身、何度背筋を凍らせたか分かりません。あの日・・・生きとし行ける全ての命を救ったLが、相手に対してした事は今も記憶の中で様々な疑念と共に存在しています。小さな手の中で踊らされる大人達に貴方は裁きの鐘を鳴らし、それを微笑みながらじっと見ていましたね・・・L・・・貴方は覚えていますか?世界を救った日の事を・・・



  残酷な天使のテーゼ



心地良い風が吹く新緑の五月・・・それは一本の電話から始まった。落ち着いた家具が置かれた薄暗い部屋の中、鳴り響く電話にワタリが手を伸ばした。

『はい・・・そうですか・・・暫くお待ち下さい・・・L・・FBIから捜査の依頼です。如何されますか?』

視線を室内に向け、淡々とした声で問い掛ける。其の視線の先には未だ幼さが残る大きな眼の少年が、床に座りパズルを組み立てていた・・。少し癖の有る黒髪と暗褐色の瞳が印象的な子供は、其の問い掛けに余り抑揚の無い声で答えた。

『構いませんよ・・・丁度退屈していた所です。詳細を伺って置いて下さい。』

『宜しいのですか?ロシアの件が未だでは?』

『さっきFAXで指示した通りに動けば、三日以内にカタがつく筈です。資料を送る様に言って下さい。』

『・・・承知しました。』

此処最近、Lの事件解決に掛かる時間が極端に短くなっている・・・“L”と言う存在である以上其れは望ましい事ではある、しかしあの小さな身体にどれだけの負荷がかかっているかを考えると如何ともし難い・・・自分でそう考えはする物の、L自身が次なる犯罪を裁く機会を求めている以上従うしか無い・・ワタリは溜息交じりで電話を続けた。数時間後・・・其の依頼に関しての全ての資料がLの下に集められた。其れを読みながらLは頭を摩り始める・・・其れが合図の様にワタリが柔らかく話し掛ける。

『L・・アフタヌーン・ティを用意致しました。少し休憩を取りましょう。お腹と頭にエネルギーの素をあげませんと、浮かぶ考えも浮かびませんよ?』

Lは不機嫌そうにワタリを見るが、暫く考えた後に椅子に座りティーセットに手を伸ばした。書類片手にではあるが取り敢えずは食事をさせる事は出来た・・普段なら熱中してワタリの声すら届かないLは、食も細く水分すら取らない事もある。常に傍にいて、変化を見ながら絶妙のタイミングでお茶や食事を差し出さねばならないのだ。最初の内は失敗も多かったが、最近ではLの求めている事が分かる様になって来た。しかし・・ワタリが気になったのは、Lが頭を摩り出すタイミングだった。この数日の睡眠時間を考えれば頭痛がしても仕方が無いと思うが、其の回数が増えている事が気掛かりだった。幼いLの小さな脳髄は、其の入れ物に収まり切れなくなる程に其の容積を増やし続けている・・・“前任者”にも注意する様に言われていた事柄だけに心配も尽きない。

『・・・ワタリ・・?お茶のお変わりを下さい。』

ワタリの顔を小首を傾げながら見るLは、カップを指差しながらそう言った。

『・・失礼致しました・・只今お注ぎ致します。』

『ミルクを多めに入れて下さい。』

サンドイッチを頬張りながら次の書類に手を伸ばすLは、眼を通し始めた直後にある部分に釘付けになった。サンドイッチを置き、指に付いた卵を舐め取ると、其の侭指を噛み始めた。ワタリがお茶を注ぎ始めると、Lは指を口元から離し薄笑いを浮かべながら話し掛けた。

『・・・・・ワタリ・・・此れは最高の獲物です。今直ぐに向こうに移動する手筈を整えて下さい。私は必要な情報を集めます。』

驚くワタリをしり目に、椅子から飛び降りるとPCの前に座った侭動かなくなってしまった・・一心不乱にキーボードを叩くL・・・こうなると彼が気が済むまで待たなければならない。ワタリは今回のこの件に関して、其の時間が余り無い事を察知しティーカップを置くと直ぐに部屋を後にした。ドアの閉まる音と共にLの呟きが部屋の中に広がる。

『“悪”は一掃しなければならない・・・例え其れがどんな人間でも・・・・』

楽しげに・・まるでピアノを奏でるかの様に優雅な指がキーボードを叩き続けた。
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