京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「Long Version - J.I. - 」(さる作)
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『・・・確かに何故君が此処にいて、あの博士に協力をしているのか・・何故こんなにもセキュリティを厳重にしてまで閉じ込めているのか・・非常に興味が有りますな・・。』

魅入ってしまった事を誤魔化す様に一気に話すガルル・・しかし知っている情報を話して欲しい気持ちは本当だった。此の侭甘んじている訳にもいかない・・中に潜伏しているアサシンと連絡を取れれば・・そう思っていた。そんなガルルをスレイヴはじっと見詰めていた。自分は見定められている・・そう感じる様な鋭い視線だった。

『・・・・・・此方に来て。』

ソファーから立ち上がり、窓に近付くスレイヴの後を追い傍に立つ。其れを確認してから心話の様な声で話出した。

《 ガルル中尉・・君の前に来た軍の人はさっき博士が部屋に入って来たと同時に出て行ったよ・・君が感じている通り、此処のセキュリティは尋常じゃない。アサシンですら出れなくなる位にね・・。》

驚きを隠しながら、他愛ない事を口にし注意を反らせようとするガルルに微笑みながら答えるスレイヴ。

『・・・確かに綺麗な庭園ですが・・先程の質問には答えては頂けないと見て宜しいですかな・・?』

《 機転が利くね・・そう・・此処の会話は皆盗聴されてる・・監視カメラもね・・僕がアサシンの術を覚えるのに暫く掛かってしまったから手間取ったけど、嘘の情報を流して君を此処に来させ博士が僕に会わせる隙に脱出・・・内偵結果を本部に報告して指令が出次第博士を確保する手筈なんだ・・・正確に言えば腕が立つなら君じゃなくても良かったって事だよ。》

《 ・・此処に何が有る 》

ガルルの眼が鋭く光る・・監視カメラを見続ける研究員に彼等の遣り取りに気付く者は居なかった。窓辺に佇み庭園を見る二人・・一見、和やかに見える情景に誰も疑念を抱く筈はなかった。不意にスレイヴがある場所を指し示した。

『あそこにはね綺麗な華が咲く温室が有るんだ。』

《 そして其処には、博士の隠し施設が有って違法なクローン開発を進めている・・数日前・・あそこで造られたケロン人の男と女が、闇組織に連れて行かれるのを見た・・。情報によればもう一人・・子供が居る筈なんだ・・あの爺さん少し呆けてるのか、良く独り言を言うんだ・・“あいつ等は失敗作だ・・処分しなければ”ってね・・・。》

『ほう・・其れは是非見てみたいですな・・。』

ガルルは本部の考えが読めた・・自分に知らせない事で余計な警戒心と情報を相手に与えず、万が一に備え中からのバックアップをさせる為に自分は此処に送られたのだと・・。

『其れなら少し歩くかい?今日は未だ外に行っていないから・・・ねぇ!良いだろ?』

スレイヴは振り向き様に観葉植物に向かって声を発した。其の視線の先には小さなカメラが存在していた。相手は暫く無言だったが少しの間を置いて、答えて来た。

『良いだろう・・何時もの様に30分間だぞ。』

『分かってるよ・・早く窓を開けな。』

互いに威嚇し合う様な遣り取りに、スレイヴが今までどんな扱いを受けて来たか推測する事は簡単だった。恐らくは宇宙法すれすれの実験材料として扱われて来たのだろう・・。憎しみが其の銀の眼を染め、身体からは殺気が出る程に感情を昂ぶらせている。ガルル程の軍人が発するならば然程驚く物ではないが、こんなにも華奢な・・民間人が発する殺気とは到底思えなかった・・。その時・・窓の一部のロックが外される音が室内に響いた。スレイヴはガルルに微笑み掛けると窓に手を掛け大きく開いた。

『さ・・行こう、この先だ・・。』

『・・・お供致しましょう。』

二人はゆっくりと歩き出した。その庭園は研究所とは思えない位整えられていて美しかった・・任務中とは思えない程の心地良さに、ガルルの気持ちがホンの少し安らいだ・・スレイヴはそんなガルルを見て本来の・・優しい表情を見せた。先程とは全く違うその表情を見たガルルは、多少戸惑いながらも話し始める。

『・・・何処にある・・?』

『・・・せっかちだね・・まぁ、良いか。この先はカメラしかないし、唇の動きを読まれなければ問題無い・・・此処で止まって・・死角に入れる。』

そう言いながら花壇の傍にあるベンチに腰掛け、眼で辺りを確認する。特に変化が見えられない事を確かめたスレイヴは、隣に座る様に促した。誘われるままに腰掛け、スレイヴの方に向き直るガルルを楽しげに見ながらスレイヴは話を続けた。
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