京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「ANGELUS - ァンジェラス - 」(さる作)
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『クルル曹長!・・クルル曹長、しっかりして下さい!?』

『・・・生きてるから・・・耳・・元で、怒鳴りな・・さんな・・・うるせえから・・・・よ。』

意識が飛ぶ寸前に呼び戻され再び痛む身体に戻された俺が眼を開くと、床に横たわり研究員達に介抱されている自分に気付く。自分達が着ていた白衣をハサミで切り、包帯を作っては俺に巻き付けている。如何やら多少出血しているらしく、彼等の手は俺の血で染められていた。

『・・・応急手当です。外傷の方は此れで大丈夫だと思いますが、内蔵の方は分かりません。先程の吐血が蹴られた時の出血なら未だ良いのですが・・・此処は痛みますか?』

ゆっくりと腹に触れられるが、もう・・何処がどう痛むのかすら良く分からなくなっている俺は首を傾げるしか無かった。

『・・・如何しよう・・奴等にクルル曹長を渡したら殺されちゃいますよ!?』

『だからって如何する事も出来ないだろ!?』

『如何にかして逃げ出さないと・・・』

小声で・・しかし必死な感じで話す彼等が、うわ言の様な俺の声に気付き耳を傾け聞き入った。

『・・・立て篭もって・・・彼此10時間・・か、そろ・そ・・ろ“天使”が、舞い降り・・・るぜぇ。クク・・・そん時の奴・・等、の顔が・・見物だ・ぜ。』

其れを聞いた彼等の顔が強張る・・・。

『如何したんでしょうか・・?まさかおかしくなっちゃったとか・・・・!?』

馬鹿言ってんじゃねぇよ・・・分かんねぇのか・・?もう直ぐ俺の“天使”が迎えに来る頃だって言ってんだよ・・・あぁ・・・こいつ等にとっては違う呼び名なんだっけ・・・こそこそと話し続ける研究員達に近付き、銃を突き付ける奴等は俺達に窓辺に行く様命令した。

『さぁて・・・俺達の仲間がもう直ぐ此処に車を廻してくれるからよ・・・あんた達も其れに乗って貰うぜ?良い子にしてれば殺しゃあしねぇよ・・。』

嘘吐きめ・・・だが、今の俺達には何も出来ない・・こっちも待ち合わせ中だしな・・・仕方無しに移動する様に研究員達に目配せする・・彼等が俺を抱き抱える様に立ち上がると、窓の外にデカイ戦艦が現れやがった。

『・・・如何だ?良い車だろ?上にもう一台あるから、流石のケロン軍も迂闊に近寄れねぇ筈だ・・。其の証拠に下の奴等は皆居なくなったしな・・・おい、さっさとデッキを降ろす様に言え。』

俺は奴の言葉を聞いて笑った。廻りの奴等があっけに取られているのを見て、更に笑っちまった。其れがお気に召さなかったのか、指示をしていた奴が俺の顔を銃で殴る。俺は抱えてくれていた研究員達諸共床に転がった。

『貴様・・・何がおかしい!?殺されたいのか・・?』

俺は再び笑い・・1度深く呼吸すると大声で叫んだ。

『・・・伏せろ!?』

其の声に反応し、頭を抱え込む研究員。驚き眼を見開く奴等・・・窓辺に居た奴が振り向き様に狙撃され、床にキスをしたまま動かなくなった。

『!?・・・くそ!!ふざけやがって・・・何処からだ!?』

『分からん!?近くにそんな物ぶっ放してるケロン人なんか居な・・・・・!!』

2人目が両肩を撃ち抜かれ、痛みにもがき苦しむ・・ちったぁ“痛い”っつうのが理解出来たかよ?次々と狙撃される仲間に戦々恐々の3人目が俺に掴み掛かろうとした其の瞬間、後方の窓ガラスが粉雪の様に輝きながら割れた。

『うわぁ!?』

両肩両足を撃ち抜かれ、身動きする事すら出来なくなった奴が必死に後ろを振り返る。其処に居たのはフライング・ユニットを身に着け、優雅に浮遊するガルルだった。

『き、貴様・・・どうやって此処まで・・・!?外には仲間の戦艦が居た筈だ!!』

其の言葉にガルルはゆっくりと降り立ち、銃をしまうと外を指差した。

『・・君の言う戦艦とはあれの事かね・・?』

其の紫暗の指先には煙を吐きながら堕ちて行く戦艦の姿があった。声を震わせながらそいつが言った。

『!!・・・そんな・・・馬鹿な・・・!?ケロン軍は引いた筈だ!?其れにもし居たとしてもあんな簡単に堕ちる船じゃ・・・!!』

身体に付いた埃を払いながら近付いて来るガルルは、そいつの言葉を鼻で笑い飛ばした。

『・・ふん・・そう言う欺瞞がこの失敗を招いたとは思わんのか?あの程度の船なら、軍が動かずとも我々2人で充分対応可能だ・・見るが良い。』

そう言いながらご丁寧に空中にモニターを浮かび上がらせる・・・其処には戦艦の廻りを攻撃しながら飛ぶ“天使”の姿が浮かび上がっていた。

『!?・・あれは・・まさか!!』
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