京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯一十二


□「Romance-現代騎士物語w-」(さる作)
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照れ隠しに慌てて言い訳する姿が可愛いとクルルが言ってたけど・・本当、可愛いや。待ち切れない様に大きな眼で答えを待つ君に俺はホンの少しの悪戯心を含みながら笑顔で答えた。

『良いよ・・調べてあげる。但し・・・』

『但し?』

訝しげにするギロロに僕は条件を出した。簡単な・・とてもシンプルな事だと・・思っていた。

『理由が知りたいな。クルルに頼めばもっと早いのに、態々俺を選んだ理由・・教えてくれたら調べてあげる。』

『ク、クルルには頼めないんだ!』

真っ赤な・・夕日よりも赤いギロロの顔に・・ちくり・・胸が痛んだ。知られたくないのはクルル・・誰でもない・・仲間達でも無く、夏美ちゃんでも無い・・ギロロの心の中はクルルの事で一杯なのだと悟ってしまった。俺は君に気持ちは伝えてはいない・・誰にも言っていない胸の想いを如何したら良い?そんな事を考えながらも俺は君の事を想い、気遣う。

『誰にも言わないって約束するからさ、教えてよ。ね?』

ギロロの目線に合わせて、出来るだけ優しく諭す様に問う俺は恥ずかしさで動揺している目の前の想い人の姿を眼に焼き付けていた。滅多に会えない寂しさが少しでも癒える様にと願いを込めて真っ直ぐに見つめ続けた。ギロロは其の視線に戸惑っているのか・・其れとも理由を言う事への勇気を探しているのか俺から眼を逸らし、頬を染めたまま俯き考え込んでいた。長い様な、短い様な沈黙の後・・思い切る様にぽつりと話を始めた。

『・・・・其の歌の・・声が・・クルルに・・・・似てるんだ。だから・・・・気味が悪いなら悪いと言ってくれて構わないが、クルルとは今まで通りにしてやってくれ・・・。』

眼を逸らしながら・・・けれどクルルと俺の事には真正面から話す君・・・真剣な本物の想い。

『・・・そんな事言わないし、差別もしないよ?色んな人がいるんだもの、良いんじゃない?其れに俺も自由恋愛主義だし?』

『・・・・有難う・・。』

安心した様な君の蕩ける様な笑顔を守りたい気持ちが強く浮かぶ。

『此方こそ、言い辛かったろ? ご免ね・・ん〜じゃあ、調べ終わったら俺の方から連絡するよ。如何したら良い?』

『調べてくれるのか!?』

『おいおい・・さっきも言っただろ?理由を教えてくれたなら良いよって・・?』

『すまんな、恩にきる・・じゃあ此れを・・』

そう言ってギロロは小さな丸いビー玉の様な物を俺に差し出して来た。俺は其の小さな手からビー玉を受け取る・・微かに触れた指先に心躍る。

『其れはだな、直通伝信機だ。俺を呼び出す時は此れを地面に叩き付ければ良い。そうすれば直ぐに会いに行く・・良いか?』

純粋に・・無垢に残酷な君。でも想いは止まらない、止められない。俺は其れを受け取り、ギロロと別れ今度こそ家路についた。ギロロに触れた事を・・交わした言葉を繰り返し思い出しながら帰る道はもう寂しくは無かった。クルルと出会い友達になり、クルルの仲間を探したのも気紛れに過ぎなかった俺・・・クルルがあんなに必死に探す仲間ってどんなのか興味は有ったが其れだけだった・・・其の筈だった。日向家の地下深く存在した基地に侵入した時に、初めてギロロに出会った。攻撃され睨まれたのに何故か憎めなかった。でも・・・俺が新たな敵と誰もがそう思っている中で、ギロロだけがクルルの名を呼んだ。呆れた様に・・でも待ちわびた様に呼ぶ声に、俺は予め予定していた行動を取った。“誰かが俺様の名前を読んだら俺を呼び出す事”・・・クルルが基地に侵入する前に言ってた言葉・・・其の時になって初めてクルルに一杯食わされたと思った。クルルはギロロとの再会を演出したんだと・・俺は利用されてしまったと分かった時、悔しい反面羨ましいと思ってしまった。そして、俺もそう言う出会いをしたいと・・願った。彼等の事を見ていたくて、何かあれば近くまで行ったりしていた。ギロロは何時も庭先で銃を磨いていた・・時折、訪れるクルルに柔らかい表情を見せるギロロ・・俺はギロロに惹かれている自分に気が付いてしまった。クルルに向けている顔を俺にも見せて欲しいと思った。・・・けれど、君の心はクルルの物・・そしてクルルは俺の友達・・・出会うのが少しだけ遅かった。・・・俺もケロン人であったなら・・そう思ったりもした。けれど、今、この時この星で出会えたからこそ、君に惹かれているのかも知れないなと考える。

『さぁ・・て、帰ったら早速調べますかぁ。あ、其の前にラジオ局に電話して・・・』

一番星が輝く中・・俺は楽しげに、愛しい人を想いながら家へと急いだ。         《完》
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