京都市左京区吉田新町一の□□□の一の一千◯二十二
□「真夏の夜の夢」(さる作)
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何も気にしていないかの様にそう言うケロロ君は、僕の顔を見ながら微笑んでくれた。優しい其の笑顔に何度僕の暗い気持ちが救われたか、君は気付いているだろうか・・・?
『ドロロ?如何したでありますか?ぼ〜っとして・・考え事ぉ?』
『うん・・僕は幸せ者だなぁと思って・・』
『ケロ?如何したであります、いきなり??』
『だって・・僕・・拙者は隊長殿や皆を裏切り、地球側に寝返った言わば裏切り者・・それなのに隊長殿や皆は今迄と変わらず接して下さる・・・罰も与えられる事も無いのは、隊長殿が本星に報告しておられないからで御座ろう?本来の職務すら果たさず守ってくれる隊長殿に・・・』
其こ迄言った時・・・ケロロ君の指が僕の唇に触れた・・。ホンの少し冷たい指先に言葉は遮られ、僅かな沈黙が2人に訪れる。見詰め合ったまま動かない僕達を、月が優しく包み込んでいた・・・不意に微笑みながらケロロ君が口を開いた。
『・・・そんな事・・・気にしないで良いでありますよ。全くドロロは真面目でありますなぁ・・口調まで“アサシン・ドロロ兵長”に戻ってるであります。ダミダヨ〜我輩と居る時はドロロとして過ごすって約束したデショ―!?』
『あ・・・ごめん・・つい・・・でもね、ケロロ君・・今言った事は僕の本当の気持ちなんだ・・有難う・・ごめんね。』
当てられた指を優しく触れ、真直ぐに見詰める僕をケロロ君は戸惑いの表情を見せる・・・今ならば本当の事を話してくれるだろうか・・?
『ねぇ・・ケロロ君・・定期検診で何か言われたの・・・其れとも侵略を急かされた・・?』
僕は目を逸らさずにケロロ君の答えを待った。ケロロ君は最初に大きく目を見開き・・・そして仕方無さそうに溜息を付くと、淡く微笑みながら僕の膝に其の身を預けた。
『!?・・け、ケロロ君!!』
掴んでいた手を放してしまった僕の膝に頭を乗せ、うつぶせたままの姿勢でケロロ君は言った。其の声は少し震えていた・・――。
『・・本当にドロロは優しいね・・我輩・・ドロロのそう言う所が大好きでありますよ・・・心配かけてゴメン・・大丈夫・・少し嫌な物見せられただけであります・・』
『嫌な物・・?』
僕の問い掛けに、姿勢を仰向けにしながらケロロ君は答えた。
『うん・・我輩の嫌いな・・見たくなかった物見せられて・・・又嫌な実験をしてるんだと思ったらムカついて・・虚しくて・・早くドロロに会って幸せな気持ちになりたくて・・・有難う、ドロロ・・ドロロの気持ち嬉しいであります。』
『ケロロ君・・・』
『ドロロ・・・』
名前を呼ばれて胸が高鳴る・・僕に向かってゆっくりと腕が伸びて来て頬に触れる・・先程より熱い体温に僕の体温が重なる・・―――。
『ドロロ・・・』
ケロロ君の声が僕を支配して・・・
『キス・・しよ・・・』
全てを束縛して・・・
『・・駄目だよ・・逃げないで・・・』
心さえ抗えなくして・・・
『・・・可愛い唇・・・好きだよ・・』
囚われてもなお愛しくて・・・
『ケロロ・・君・・・』
僕の身体を支えながら、ゆっくりとした動きで覆い被さるケロロ君は何度もキスを交わして行く・・。
『ん・・・んぅ・・ま・・待って・・・』
『ん?』
綺麗な目で聞き返されて、僕は何だか気恥ずかしくなってしまった。顔を赤くしながら囁く様にケロロ君に言った・・。
『・・あ・・の、す・・るの?』
『何を・・・?』
意地悪く微笑みながら答えるケロロ君に、困惑している僕は更に変な事を言ってしまう。
『何を・・って、其の・・此処じゃ嫌だよ・・・』
女の子みたいな事を言って恥ずかしがる僕のおでこにキスを落とすと、優しく笑いながらケロロ君はこう続けた。
『大丈夫であります・・・見ているのはお月様だけだから・・・気になるなら噴水以外は皆電気を落とすでありますよ・・だから・・嫌がらないで・・?』
そしてケロロ君は、僕達が横たわるベンチの直ぐ傍に有る植え込みに手を伸ばした。すると照明が全て消え去り・・残ったのは月明りと噴水の音だけだった・・―――。
『ドロロ・・好きであります・・』
月明りを背にそう囁くケロロ君・・・質問をはぐらかされた事も恥ずかしさも何もかも・・・考えられなくなる程の甘いキスに酔い痴れる・・・愛してると言いたいのに、出て来るのは微かな吐息ばかり・・
『・・・ァッ・・んぅ・・・』
『此の身体も心も・・月が描く影さえも・・・ドロロの全ては我輩の物でありますよ・・』
甘美なる酒に酔う様に、身体の芯から燃え上がり息さえも出来なくなる。