∬`∀<´∬ 紐育 につく 通り 出口以前
□「◆GOODYx∞◇House of Love」(さる作)
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『・・・メロへの贈り物って何が良いかな?』
台詞だけ聞けば男らしい言葉も、外側から見ればお互いが床に這う様な姿勢でいる何とも間抜けな物だった。しかし、もうそんな事には構っていられない。もう時間が無いのだ!
台詞だけ聞けば何とも男らしいが、外側から見ると物凄く間抜けな格好のままLが答えた。
『はぁ・・・・やはりその質問でしたか・・・。』
そのLの言葉に、何時に無く真剣だったマットの表情が訝しげな物に変わる。
『・・・・はぃ?』
Lは何時もの無表情の様な顔に戻ると、軽く頭を掻きながらマットに答えた。
『いえ・・・ホンの数時間前にメロが訪ねて来てですね、こう言ったんです。“マットが俺に贈り物をしたいが、何が良いと思う?って聞かれても教えないでくれな!”と・・・。』
マットは自分の行動が読まれていた事に衝撃を感じた。
《え・・・?俺って・・・そんなに行動、あからさま??》
恥ずかしいやら居た堪れないやらで、身体中に嫌な汗が流れてくる。
『で、ですね・・・・こうも言ってました。“馬鹿なんだから考えても無駄だろ!何時もみたいに、お前らしいどうしようもない物で俺を呆れさせろ!?”』
・・・・・orz・・・・・・や、まぁ、良いけどね。思わず落ち込むマットの頭を、Lがクシャクシャと笑顔で撫で回した。
『え!?・・・何??』
その行動に驚くマットに、Lは今迄見せた事が無い様な笑顔でこう答えた。
『うん、うん・・・愛されてますねぇ。』
その予測も付かなかった答えに、言葉が出ない。その様子にLが再び髪を撫で回す。
『え・・・ちょっ・・・ちょっとL・・・何・・??』
『要するにですね、メロはこう言いたいんですよ。“マットの考えた物なら、何でも嬉しい。”ってね。』
その言葉に今度は頭が爆発しそうになる。
『え・・・・?』
『メロは天邪鬼ですからねぇ・・・素直に言えないんですよ。だけど私達から聞いた事を参考にされても嬉しくない・・・・毎年マットが頭を悩ませていたのを知っていたんでしょうね。』
『私・・・達・・・?』
顔が徐々に赤くなり始めているのがマット自身感じていた。しかしどうする事も出来ない。
『はい。私とライト君、それに二アですね。一応ワタリとかジェバンニ達にも念を押してあると思いますよ?』
穴があったら入りたいって、きっとこの事だ!・・・・マットは両手で顔を覆いながら床に横たわってしまった。嬉しいのと照れ臭いのと、行動が完璧に読まれていた悔しさと情けなさで顔がトマトの様に赤いに違いないと思った。
『まぁまぁ・・・良いコンビだと思いますよ?さ・・・マットがいま自分に出来る事を、メロに贈ってあげなさい。』
宥める様にLがそう声をかけると、ようやくマットが顔を上げた。泣きそうな情けない顔が薄っすらと赤くなって、成る程メロが苛めたくなるのも分かるなとLは思った。
『・・・俺が・・・出来る事・・・?』
子犬が縋る様な目で見てる・・・Lは口元に笑みが浮かびそうになるのを堪えながら、何時もの表情を保ちつつ答える。
『えぇ・・・背伸びをしないで、自分らしい事・・・・自分だけの考えで・・・ね。』
『俺らしい事・・・・』
『はい。・・・例えばですがマットの一番得意な事は?』
俺の一番得意な事・・・・ゲームとか・・・機械いじり・・・?あと車の運転・・・・・・・・・!?
マットは勢い良く起き上がると、Lの両手をギュッと握り笑顔で言った。
『ありがとう、L!あんた外見はニートだけど、中身はやっぱり“世界のL”だ!?俺、今からメロの所に行って来る!!』
『そ、そうですか・・・それは頑張って下さい・・・。』
マットの勢いに押されたLは、思わずそう答えてしまった。その答えを最後まで聞かずに、マットは立ち上がると一目散にマットの部屋へと走り去っていった。
その背中に小さく手を振りながら見送るLは、小首を傾げ小さく呟いた。
『・・・・・私、何気に酷い事言われた様な気がします・・・。』
何とも複雑そうな表情のLの事など知らず、マットは走って来た勢いのままマットの部屋のドアを開けた。
『メロ―――!』
『ノックしろっつてんだろ!?』
その言葉と同時に、マットは飛んでくる靴の裏側をアップで見た。
『全く落ち着きの無い奴だな。何だ?何か用か?』
飛んで来た厚底ブーツと対面のキスをしたマットは、痛む鼻を擦りながらメロの腕を掴んだ。それに驚きマットの顔を見るメロに、マットは何時もの軽いノリの笑顔を向けるとこう言った。
『明日・・・明日ドライブに行こう!』
『え・・?』
『綺麗な景色見て、美味い物食べて・・・俺達此処に来てだいぶ経つけど、あんまり遊びに行ってなかっただろ?メロの行きたい所、全部巡ろうぜ?』
マットの半ば強引な誘いは、メロを驚かせるには充分だった。僅かに癇に障る言い方も、マットだから許せる・・・答えを待ちながらも、放そうとしない手とマットの笑顔がメロの気持ちを緩ませた。
『・・・・・・・コーヒー付きなんだろうな・・・?』
ようやく貰った答えは素っ気無かったが、マットには充分な答えだった。
『勿論!スタバのモカだろ?』
『おう、俺はアイスしか飲まないからな!』
『分かってるって。』
メロが掴んだ手を握り返し、マットを立ち上がらせた。たったそれだけの事が、マットは嬉しくて堪らなかった。
『・・・・何人の顔を見て、にやけてんだよ・・・?』
メロが口を尖らせてそう言って来る・・・。照れ臭い時のメロの癖だとマットは思った。
『ん?いいや・・・何でもねぇよ。』
『変な奴?』
如何やらただ単に背伸びをしたかっただけの自分が、如何格好つけ様かと右往左往していただけらしい。馬鹿みたいだが、ある意味勉強にもなったなとマットは思った。メロは傍で自分の顔を見ながら笑顔を浮かべるマットが、自分の予測通りに動いたのだと確信しやはり笑顔になった。しかし如何にも分からない事が一つだけあった。
『・・・なぁ、ところでさ、何で明日なんだ?』
メロが上機嫌のマットに、そんな疑問を投げかける。・・・そう、メロが如何しても分からないのはその点だった。するとマットは不思議そうな顔で、メロのその問いかけに答えた。
『? 何言ってんだ?明日はお前の誕生日だろ??』
そんな間抜けな答えに思わず頭の中が真っ白になる。そんな間抜けな答えを言った奴は、まだ満面の笑顔で自分の事を見つめている・・・。メロは痛む頭を押さえながら、静かに話し始めた。
『・・・・マット・・・・お前、ボケたのか?』
『ん?いや?何でだ?』
『そっか・・・・天然か・・・じゃあ、教えてやるな・・・・お前間違ってる。』
メロの言葉を聞いても、マットはまだ理解できない様だ。メロは溜め息を付き、もう一度マットに言った。
『・・・だから、お前日付け間違えてる!』
『え?あれ?』
少し不機嫌そうなメロの言葉に、マットは一瞬思考が止まり・・・・次の瞬間には滝の様な汗と共に理解した。
『あ、あれ?今日、今日何月何日!?あれ?ゴメン!俺、またやっちまったか!?』
余りの慌て振りに、メロは怒る気も失せた。むしろ笑いが込み上げて来る・・・考える事に熱中する余り、時間の経過を忘れてしまう・・・・そんなマットが憎めないからだ。こんなにも情けない顔をしているのに自分の手を放さない、放そうとしないマットはメロに苦笑いを浮かべながら言った。
『・・・しょうがねぇなあ。貸しにしといてやるから、来年はその分奮発してくれよ?』
マットに笑顔が戻る・・・メロにしか見せない柔らかい笑顔だった。それを見たくて我儘を言ったり、拗ねたりしてるなんて口が裂けても言えない・・・何時もだったらこの笑顔で許してやるけど、今日はもう少し意地悪してやろうとメロは思った。
意外に優しいメロの答えに、嬉しさを隠せないマットにメロは意地の悪い笑顔を浮かべながら言った。
『・・・・やっぱ三倍増しでなきゃ許せないな。』
満面の笑顔が一気に慌てふためいた顔になる・・・それが可愛くて仕方がない。思わず顔に出そうになり、それを誤魔化す為にマットの襟首を掴むと軽くキスをした。
『 !? メメメ、メロ?』
『約束な!破ったら絶交するからな?』
『え!えぇ?』
そう言うとメロはマットの緩んだ手を振り払い、不敵に笑うとソファに寝そべり本を読み始めた。それを眺めながら、マットは自分は完全に尻に敷かれているのを感じたのだった――――。
《後日談》
ある朝メロは部屋の中央に置かれた胸像を見て、とてつも無く後悔していた。
その胸像に添えられた手紙を見て、途方に暮れて立ち尽くしている。
《 メロへ マットの件で作った胸像の出来が、思ったより良かったので差し上げます。 ニア 》
『どうすんだよ・・・・これ・・・・』
食べるには大き過ぎる上に、自分にそっくりなチョコレート胸像に困り果てるメロであった―――。 《完》