小説

□赤白のお客様
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「…見事に真っ黒じゃない、うらやましいわね」

「貴女は見事に真っ赤白ですね。まぁ人の帳簿を勝手に見たりしてはいけませんよ?博麗さん?」

私は彼女から帳簿を返してもらって手元に置くと、再度チェックを始めました。
そんな私を見て彼女はため息をつき、お盆にある自分の顔をモデルにしたお饅頭を躊躇せずに取りました。なんというかさっぱりとしていて思わず笑えてきます。

おっと、お客様の事を言っていませんでした。
彼女は博麗霊夢さん。神社の神主をしている人間です。
博麗の巫女っていう昔ながらの役柄です。ある意味プータローみたいなものなんですけど、たまにこうして定休日に来るんですよ。お菓子を漁りに。
まぁお客さんとして来ることも有りますよ?ほとんど誰かの奢りですし、たまに自分が払うときはツケですから。

「今日は何のご用ですか?博麗さん?」

私はぼんやりと私の作業を見ている霊夢さんに聞いてみた。

「ん〜?人里に来たからついでにお茶を飲みに来たのよ。神社よりも落ち着けるし、飲むぶんにはただだし」

ふぅ、分かっていた事ですけどなかなかショックですよ?私の価値ってお茶とお菓子が有るから成り立つんでしょうか?

「変わりませんねぇ博麗さん。最近神社の様子はどうですか?誰かの手によって木っ端微塵にされたって聞きましたよ?何で博麗さんは木っ端微塵になってないんでしょうか?」

「いや疑問点が明らかにおかしいんだけど。神社が変な天人のせいで壊れたのは本当だけど、きちんと直してもらったわよ。って、木っ端微塵なんて噂誰が広めたのかしら…?」

そういってお饅頭をまたお盆から掴むと、お饅頭を口の中に運んでいます。本当に遠慮を知りません。まぁ余り物ですからケチケチすることは有りませんが。

まぁ居なくなったら話し相手が減るので寂しいですけど、仕方ないってことで済みそうですね、私の場合。

それにしても天人さんですか…。珍しい方が地上に来たんですね。空の上の桃は味が微妙ですけど微妙だからこそ色々使える桃なんですよねぇ…。妖怪用のお菓子に混ぜて調理したかったです。

「天人さんですか…。きっと凄く聰明な方なんでしょうね」

「ないない。有り得ない。聡明だとかそんなカッコイイ言葉は絶対に似合わないわよあれは」

簡単に即答されました。
おかしいですねぇ、私が見たことがある男の天人さんは凄く聰明で威厳もある方でしたけど。
時代が変わったんですね、きっと。見かけに似合わないことをいってしまいますよホントに。

「天人さんって普段何をしているんでしょうか?神社を壊すことが趣味だとか…」

「それ凄いわ。そうなったら私は全霊力を使って全員封印するから。逆に暇すぎるんだって。適度に遊んで桃食べて酒飲んでるだけだから、することがないんだって言ってたわよ」

それは少しおかしいと思いました、と。
何故ならこの世にすることが無い何てことは有り得ないんですから。それでなければ私はこうして甘味処の店主として生きていませんよ。

「しかし桃とお酒ですか…。やっぱり美味しい物を食べ馴れているんでしょうか?それなら確かに飽きてしまうかもしれませんよ」

「そうかもしれないわね。私は基本質素だからこうしてお菓子を食べると美味しいし。まぁ刹菜さんのお菓子ならあいつらも驚くんじゃない?」

なんと言うか、食べれば何でも美味しいと感じてしまう霊夢さんの言葉だと、少し不信感が出てきます。口に出しませんが。

ですけどやっぱり舌が肥えた方…っとそうだ、実際食べてもらえたら嬉しいですよ。

「そうだ博麗さん。今度その天人さんと食べに来てくれませんか?一度私も会ってみたいですし、博麗さんはついでに奢ってもらえば良いですし」

まぁ私にとってお客さんを連れてきてくれるのはありがたいですし、霊夢さんは奢って貰えればラッキーですよ。
そんな魅力的な話だから、おそらく霊夢さんも乗るんじゃないでしょうか?

「…まぁ連れてきても良いけど、あんまりオススメはしないわね。他の人に迷惑がかかると思うし」

「ふふふ、私のお菓子は泣く子も黙らせますよ♪では今度連れてきてくださいね」

霊夢さんは適度に相づちをうつと、最後のお饅頭も口に運びました。ついでにお茶も飲まれて自分でお湯を入れてます。
まぁそれぐらいで怒らないのが私ですから、別に問題はありませんけどね。
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