小説

□都会派のお客さん
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「アリスちゃんは最近どうですか?新しい魔法を開発できたとか、魔理沙さんが最近やけに魔法が上手くなってて不安になったとか、焼いたばっかりのマフィンが数秒目を放したら借りられてたりとかしませんか?」

「二つは質問として正しいけど、最後は刹菜さんがされた事でしょ確実に」

あはは、と笑って受け流しましたがその通りですはい。
あの泥棒さんは私の目の放した隙にあっという間にマフィンを掠め取られました。本人は、借りてくぜ〜、とは言ってましたから、きっちり帳簿に付けておきました。近いうちにバイトがもう一人増えそうですね。最近ツケが貯まってましたし。

「ふふん、ですが霧雨さんに抜かされそうなのは事実だったりしませんか?もしも彼女が捨食の術を使ったりしたら抜かされちゃいますね?」

「さぁ?それは私が考えることじゃないし、本人が使うかどうか分からないから私が話すこともないと思うけど?」

アリスさんはそう言ってクッキーをつまむと、二つに折って片方を口に入れました。
ふむ、たしかにアリスさんが言うことではありませんね。だってそれは本人が決めることで、予想ぐらいしかできないのが現状なんですから。
ま、それでもそういうことを話すのが苦手な人がたまたまアリスさんだったと言うことで、長年過ごしているのに気が使えないとは不覚です。

「ふーむ、確かにそうですね。…じゃあ質問を変えますけど、アリスちゃんは魔理沙さんに魔法使いになって欲しいですか?」

これはアリスさん自身に対する質問です。ですから簡単に受け流すこともできますが、私は返してくれると信じています。
まぁこんな話をしたいとはアリスさんは思っていないと思いますが、そうした本音を話すことができる相手だって居ても悪くはないですよね?
すこし時間をおいて悩んだアリスさんは、一口紅茶を飲んでからこう答えました。

「…私は魔理沙は人間のままで居て欲しいわね」

と、流石にこの答えは意外でした。
友人、そしてその人が魔法使いになって欲しいと思わないとは考えていなくて、私は思わず割ろうとしたクッキーを指で潰してました。


「さて、それはけっこう以外でしたよアリスちゃん。私の予想では肯定にまわるかと思っていたんですけど。なぜです?」

「その理由を貴女が聞くの?」


アリスさんは視線を紅茶に下ろすと、私の質問にそう答えました。

「…すみません。つまらない質問でしたね」

そう、この質問は確かに相手に対して失礼というものです。
誰よりも魔理沙さんの事を分かっている友人です。だからこそ、アリスさんはそう答えるのは当たり前だったかもしれないのに。
…ふぅ、少し疎くなりましたね。反省です。
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