loud songs

□恋、愛
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恋に落ちる、という言い回しは歴史が浅いものらしい。単に英語の「fall in love」を訳しただけで。


俺がはいどを初めて見たのは、小さなライヴハウスでのステージで。
てつが紹介したい、と言ってきた、自慢のヴォーカリスト。


ステージと客席の高低差もせいだけではなく。
それは確実に、降ってきた。俺の脳天に、ドン、と落ちてきた。


恋、という液体。


それは透き通り、淡い虹色をしていて、浴びていてとても気持ちいいものだった。

それが最近は、汚く染まって、重く、粘る粘液と化してきている。


馬鹿なのか、俺は。自分の気持ちで、自分を苦しめ息が出来なくなっている。重い。


俺は、みんなみんな、はいどと同じがいいな。
その日の食事のメニューも、煙草の本数も、床につく時間も。

この苦しみでさえも。


そう思って、はいどの細く白い首に、両手をかけた。


ほら今、はいどが、恋に落ちる―――


end
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