loud songs

□ピアス
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「なぁなぁはいど、」

ベットの上、何度も絶頂に追い上げられ、自身もまた数回精を放ったあと。おもむろにけんちゃんが俺を呼んだ。

「ん〜?なん?」

正直、けんちゃんとのセックスは良すぎて、後処理を終えるとすぐ眠ってしまいそうになる。だが、情事後特有のまったりのんびりな空気もまた心地よくて。そういう時けんちゃんはたいてい、おもしろい話を聞かせてくれるんだ。
それに、腕まくらで壊れ物を扱うみたいに、けれど愛情をこめて抱きしめてくれるから、眠気と激しい戦いを繰り広げることになる。もう少し、このままでいたい。

「森と林の違いってわかる〜?」

また唐突な。でもたしかに…

「あ〜…そうやってちゃんと考えたことはなかったなぁ。何が違うん??」

背中を優しく2、3回叩いて、当てたらご褒美♪だって。
でもほんとに、何が違うんかなぁ?『木が1個多い!』とか言うたら鼻で笑われそうやし…。

「え〜…なんやろ…木の密度?」

「あ〜まぁ間違いではない。けどまだ合格点はあげれへんなぁ?」

頭の、ちょうどつむじの真上くらいから、楽しそうな声。

「え〜、じゃぁ逆に、当てたらけんちゃん何くれるん?」

喉元に鼻を擦り付けながら言えば、まるで俺が正解にたどり着くなんでありえない、みたいな調子で、

「なぁぁんでも。はいどが欲しい物なんでも買うたるよ?」

だって。そのセリフ、後悔させてやるで。

いよいよ俺は真剣に考え始めた。
面積の違い…?いや、水源からの距離?木の高さとか?

「あーわからへん!!けんちゃんヒント!」

すると、もともと上がり気味のくちびるの端をさらに引き上げながら言った。

「じゃぁ、『林』のつく言葉ゆうてみ?」

「…雑木林とか?」

「う…そうきたか笑 他は?」

ん?なんで雑木林で詰まるんや?そこにもしかして取っ掛かりが…

雑木林のことで頭がいっぱいになって黙った俺を、けんちゃんは「他に林を使う言葉が思い付かない」と解釈したらしい。

「例えば竹は?なんて言う?」

「ち、竹林やろ?」

「せやせや、それがヒントになってるやんか。」

竹林がヒント…?ただでさえ眠いのに、もうわからへんわぁ。

「答え教えてやぁ。」

「え〜っ、はいど降参??」

うっれしそーに…まぁえぇけど。

「うん。はよ教えて。」

けんちゃんは、まるで母親のような笑みを浮かべた後、得意げにこう言った。

「竹林とか、杉林とか、林って字がつくのって、植物の種類が限定されてるものやん?森、はつけれんやろ?」

おでこを鎖骨に宛てながら、頷く。

「複数の植物の集合が森やんか。単品だと林。ってことは??なんで林になるん??」

そこまで言われて、ようやく合点がいった。

「あぁ…!人の手が入るから?」

「正解♪植えたり、苅ったり、ある程度人が自然に手を加えたものが、林って呼ばれるもんなんよ。」

くだらないかもしれないけど、やっぱりいろんなことを知ってるけんちゃんは、賢い人なんやな。

「へぇ〜なるほどな。…んでなんで急にそんな話始めたん?」

けんちゃんが少しだけ、ゆっくりと息を吸い込んだのが身体でわかった。

「乳首。」

…はい?乳首、だけ言われてもわからへんやんか。

「いや、けんちゃん、乳首が何?」

「…はいどの乳首。輪っかついてるやん。人の手が入ってしもうたなって。別に乳首にピアス開けるくらいは構わへんのやけど…」

すっ、と密着していた身体を離して、けんちゃんが目を合わせてきた。一重の真剣な眼差しに晒される。

「はいどは、はいどの本質は、ずっとそのままでおってな。俺や、俺以外の人間にも影響受けたり、支配されたりせんでや。ありのままのはいどを、俺は愛してるんやから。」

自然に、言葉が滑り落ちる。

「当たり前やん。俺は俺やで。何年、何十年先も。」

そう目を見て言ってやると、けんちゃんの表情が安心したように和らいで、おでこに軽いキスをくれた。また、長い腕に包まれる。



『愛してるよ、けんちゃん。例えどんなに月日が流れたとしても。』


end
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