loud songs
□優越感
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「はいど、今日も綺麗だね」
「がっちゃ〜ん久しぶりっ」
…外人かいな、あいつら。挨拶でハグって。あ、てつの眉間にしわよった笑
俺は隅の方にある椅子にかけ、何の気無しにギターをいじりながら、こちらに射るような視線を向ける恋人に、気付かないフリをした。
「はいどさぁ〜〜〜ん!会いたかったです!!あぁぁ今日もまた一段とキマってますね!」
「おっやすやん、元気やった??」
やかましいなぁあいつ。ほんま好き好きオーラ出し過ぎやっちゅーの。ほ〜らてつが貧乏揺すり始めたで。
…またはいどこっち見てる。ってわかってるけど目は合わせてやらへん。
「はいどくん、おはよう。」
「おはよ、ゆっきぃ」
おっ出た出た、ゆっきぃのハニカミ笑顔。…でもはいどの一撃必殺エンジェルスマイルくらったゆっきぃの方がダメージでかそうやな。ん…てつ震えてへん…?汗
バンッ!
「あ〜もうっ!みんなしてはいどはいどはいどて!!かまいすぎ!!正直俺もかまいたいけど仕事後の癒しとして我慢してんねんで!?」
「だってはいどくんかわいいから。」
おっとゆっきぃ直球やな笑
「はいどもはいどやで!?楽屋にファン入れたらあかんやろ!」
「やって勝手に入ってくんねんもん…」
いや、その前に、ファンっておかしいやろ…
「はいど、世の中には変なやつもいっぱいおんねんから、そんな誰彼かまわず愛想ふりまいたらあかんで〜。俺が守ったるから側におりぃ♪」
「はいどくん、そいつが1番変態だよ信じちゃダメ。」
「Σゆっきぃ!?」
あ〜ぁ、涙目で出てっちゃったよはいど。てつもゆっきぃもコントみたいな会話に夢中になりよって、気付かんのかな…
スタンドにギターを置いて、ゆっきぃの黒い微笑みに引き攣った表情のてつを横目に、俺も楽屋を出た。
廊下を曲がると、見慣れた小さな背中。
「はいどっ」
振り返らないところをみると。
「なに泣いてるん。」
「泣いてへん!けんちゃんなんか知らんっ!」
あ〜ぁ、ほんまかわえ笑
「ヤキモキやかせようとしたんやろ?」
「!?」
目をむいて振り返った泣き顔。俺おかしいんかな…その顔をさせたのが自分だと思うだけで、どす黒く透明な液体が心を満たすよう。歪んだ満足感。
「俺なぁ、はいどがモテるのうれしいんやで。」
「…なんで?」
「だって、自慢やん♪」
例えばはいどに惚れた人間が俺を入れて100人おったとしたら、俺100人中1位やねんで?
そうやろみんな、かわいいやろ?素敵やろ?優しいやろ?そのはいどは俺に惚れてんねんで??
「って優越感に浸れるやん。」
「けんちゃん…俺が自分にベタ惚れって思ってへん?」
「ちゃうの?」
「そういうのが嫌やねん!いっつもいっつも、俺ばっかけんちゃんのこと好きみたいやん!!」
形のよい目をびっしりと縁取る長い睫毛の隙間から、また涙が零れだした。
あほやなぁ…。
「あんなぁ、はいど。俺が、はいどの中で俺が1番って信じとれるんはな?」
常識やモラル、見も知らん遠い国の人々、歴史、宗教、自分の親への感謝や、俺自身の心ですら。
はいどの大切さには敵わへん。
「俺以上にはいどのこと愛してるやつなんかおらへんって自信があるからやで?」
なーんかくっさいこと言うてもうたわぁ〜はいどは真っ赤になってるし。
「さっ、楽屋戻ろ〜。」
もっともっと、その魅力でたくさんの人間を魅了して。そのために、また俺いい曲描くから。
end