早すぎる自叙伝

□早すぎる自叙伝
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みんな無視した。

でも全然気にならなかった。

だって、それくらい星も風も、この流れる時間があまりに綺麗だったから。

私は一人、肝試し組を見ていた。

こっちに向かってくる。

「どうだったのかな?怖かったかな?」

早く聞きたくて待っていた。ビビリなのに気になってしまうのはなぜだろう…。

「…ん???」

何かが違う。何かが違う。目を細めて体を少し乗り出して、よーく見てみた。


…3人。


…でもみんなじゃない。


私の目にだんだんとはっきり映ったのは、ボロボロの服を着た人だった。真ん中には白い白衣姿。



そう。




戦争の映画で見たことのある軍服姿だった。

でも服はビリビリで、片足を引きずっていた。

真ん中の白衣の人は両脇のその二人を抱えるように歩いていた。


こっちに向かってる。


私は声も出せず、体も動けずに目が離せなかった。どんどん近づくその人達を何回も確認した。


夢?嘘でしょ?
目をこすった。
視線をはずしてもう1回見た。

ヘルメットみたいのをかぶっていて、肌まで見える位置に来たのだ。

私はもう耐えれずに、目をつぶって膝を抱えて丸まった。

「あら?」

もうすれ違ったり、ぶつかってもいいのに何も起きない、ゆっくり目を開けてみた。

その瞬間に体が後ろに倒れてしまうくらいの突風が吹いた。強い風だった。

みんなは風は感じたが、兵隊さんは見えなかったらしい。

この話を宿舎のおばちゃんに話した。

おばちゃんの顔が一瞬ひきつったのを私は見逃さなかった。

「ここはね、昔戦争で怪我した人達の病院だったのよ。」

なぜか、納得した私がいた。

でも未だに夢なんじゃないかって、でも見たしって考えてしまうときがある。
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