早すぎる自叙伝

□早すぎる自叙伝
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98.<ボイストレーニング>

父の紹介でこの頃から始めたボイストレーニング。

電車で待ち合わせの場所までの移動時間は久々にドキドキで何回家に帰ろうかと思ったくらい緊張してた。


「はじめまして!」

会った瞬間、記憶が蘇った。

私よりも数倍ハスキーな声、髪は背中をほとんど隠すくらいに長かった。

「石田です。よろしくお願いします。」

固すぎる私…。

私がまだ小さい頃、私はこの人のステージを家族で見に行った事が鮮明に蘇った。


「じゃーさっそく始めよっか!」

年齢は私の母よりも若いくらい、私の目をじっと見て、

「お父さんには似てないね!」

と、笑ってた。

この人…パパのなんなんだ!?素直な子供の意見だよね。
後々にそのなぞは明かされるが、先生はジャズバーやレストランで歌う仕事もやりつつ、様々な人にレッスンをしている。
父は会社の仲間と先生の歌を聴きに来てくれていたらしい。

「石田さんや仲間はほんとに応援してくれてねぇ。」

「実は…私も父に連れられて、歌っているとこ見に行ったことあるんです。」

「そーなの!?あら…覚えてないなぁ。」

すごくさっぱりした人だ。
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